©宝塚歌劇団
宙組の若手人気実力派スター、和希そらを中心にしたバウ・Song&DanceEntertainment「ハッスルメイツ!」(石田昌也作、演出)が2日、宝塚バウホールで開幕した。
タイトルやチラシの雰囲気から学園物ものミュージカルとばかり早とちりしていたら、これがなんと宙組20周年のトリビュートショー。和希ら16人が宙組の20年の軌跡を振り返りながら、宙組の未来に繋いでいこうというライブパフォーマンスで、歌、ダンス、演技と三拍子そろった和希の“そら”と“宙”をかけるなど、将来の和希への期待も込めての遊び心満載の楽しいステージだった。
「ハッスル!ハッスル!」と連呼する元気はつらつのプロローグ、センターで切れのいい動きで歌い踊る和希の明るい笑顔がなんとも爽やかだ。相手役の天彩峰里の愛らしさもショーのヒロインとしてはうってつけ。1998年3月、宙組の第一回作品「エクスカリバー」の主題歌「未来へ」を全員で歌ったところで和希があいさつ。このショーが宙組の20周年を祝うもので、宙組の歴史を名場面でつづっていくことを説明するのだが、「宙組は20年ですが、私はそのころは知りません」など、このあいさつが肩の力の抜けた素敵なトークで、見ている側もおもわずほっこり。「宝塚ファミリーランドがなくなって15年、ここにいる人は知っている人ばかりだと思いますが(笑)知らない人いますか?」との客席への問いに「はい!」と手を挙げたのが、観劇していた現宙組トップの真風涼帆。これには満員の場内も大爆笑。「宙組の歴史を知っている人も知らない人も楽しんでください」とフォローした和希が「ハッスルメイツ」のもうひとつの主題歌「君のSORA」を歌ってショーがスタートした。ここで「そら」と「宙」がかかっていることが分かる仕掛けで、これはなかなか憎いアイデアだった。
続いて瑠風輝と娘役陣で「コパカバーナ」。鷹翔千空、なつ颯都、亜音有里の3人による「ファントム」。松風輝、美風舞良で「TOPHAT」と宙組の名場面を再現。「ファントム」を3人で再現したように主題歌を数人で分けて歌うのがこのショーの特色で、これがなかなか粋な計らいだった。「エリザベート」も「最後のダンス」を松風ら男役出演者全員が歌い継いだ後に和希が登場して最後を決め、「私だけに」も美風以下娘役のメンバー全員がワンフレーズずつ歌い継いだ。そして新人公演でルキーニを演じた和希が「キッチュ」をノリノリで歌い、客席おりもあっておおいに盛り上がる。
ルキーニが監獄で申し開きをするという「エリザベート」の設定を借りて、ここからは歴代宙組作品の主人公たちが監獄で申し開きをするという爆笑コント。アントワネット(美風)やレット・バトラー(穂稀せり)カルメン(天彩)ラダメス(鷹翔)らが次々登場して女看守(瀬戸花まり)の前で人生を懺悔、看守たちがハリセンするという「タカスぺ風」お笑いの一幕。
これがホセ(瑠風)カルメン(天彩)による情熱的なスパニッシュダンス「テンプテーション」へと発展、「シトラスの風」に使われた名曲「アマポーラ」を穂稀、澄風なぎ、鷹翔、なつ、華妃まいあ、湖々さくらの6人がアカペラコーラスで披露と、ただ再現するだけでなく、こんないろんな工夫が面白い。
ここからはファン投票上位のメドレーで「ミレニアムチャレンジャー」や「ファンキーサンシャイン」「ホットアイズ」といったショーの主題歌が続き、一部の最後は宙組のテーマソングとなった「明日へのエナジー」。和希を中心にメンバー全員が客席におりて熱唱、会場全体で盛り上がった。
2部は、和希が着流しで登場、宙組の日本物メドレーから。プロローグはもちろん「宙組大漁ソーラン」。大劇場の壮大なスケールから比べるとかなりこぢんまりとしたソーランだが全員の熱気で一気に盛り上がり「維新回天・竜馬伝!」などのメドレーにつないだ。続く雨のコーナーの和希と天彩のほのぼのとしたプチ芝居のあとは大作「NEVER SAY GOODBYE」の大合唱から和希のダンスソロへ。そして新たな挑戦として全員が英語の歌に挑戦した「ボヘミアン・ラプソディー」へ戦場の悲劇を歌ったシリアスな場面から和希が名曲「愛」を熱唱、男役メンバーとともに燕尾服のダンスで再生、一転、明るく軽快なフィナーレに突入した。
歌にダンスにプチ芝居そして進行役のナレーションと緩急自在にこのショーを仕切った和希の余裕たっぷりのステージングがなんともさわやか。歴代宙組のトップスターたちが演じたり歌ったりしてきたナンバーを和希がいとも軽々と歌い踊る姿に、宙組の明るい未来をみたようだった。「ベルサイユのばら」新人公演のオスカル、「エリザベート」新人公演のルキーニ、そして今年正月の「WEST SIDE STORY」のアニータ。そのどの役にも染まることのできるマルチプレイヤー・和希が本領発揮したショーだった。
私が見た回は真風はじめ寿つかさ組長ら「WEST SIDE STORY」組が総見、客席はおおいに沸いていた。公演は13日まで。
©宝塚歌劇支局プラス8月4日記 薮下哲司記