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聖乃あすか、天草四郎を熱演!花組「MESSIAH」新人公演

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  花組新人公演プログラムより

 

 

聖乃あすか、天草四郎を熱演!花組「MESSIAH」新人公演

 

「ポーの一族」に続いて新人公演二度目の主演となった花組期待のホープ、聖乃あすかが天草四郎時貞に挑戦したミュージカル「MESSIAH-異聞・天草四郎」(原田諒作、演出)の新人公演(竹田悠一郎担当)が31日、宝塚大劇場で上演された。

 

「MESSIAH」は、江戸時代初期、島原の乱の指導者として多くの伝説を残し、今なお謎多き人物として異彩の魅力を放つ天草四郎時貞を、嵐で天草に漂着した倭寇の頭目・夜叉王丸と設定、無神論者の青年が、隠れキリシタンの生き様を通して、人が生きることの根源的な権利に目覚め、彼らを救うために立ち上がる姿をドラマチックに描いた原田氏のオリジナルミュージカル。本公演は明日海りおが、天草四郎をりりしく演じているが、新人公演はそれを踏襲しながら聖乃あすかが熱演した。巧い下手は別にして、全員が真摯に作品に取り組む姿がストレートに客席に届いたさわやかな新人公演だった。

 

「ポーの一族」以来二度目の主演となった天草四郎役(本役・明日海りお)の聖乃は、男役としてずいぶんとたくましくひとまわり大きく成長した印象。整った目鼻立ちからフェアリー的な雰囲気の優しい男役が似合うと思われ、「ポーの一族」新人公演のエドガーなどはうってつけのキャスティングだった。しかし、今回、後姿のシルエットで銀橋に登場、スポットが当たって振り向きざまにポーズをとったときの瞳のきらめきは美しさの中に威圧感のようなものまであって強烈なインパクト。本公演の徳川家綱の貫録たっぷりの好演とくわえて、これまでの聖乃のイメージからかけはなれた豪快な男役演技に目を見張った。ただ、押し出しはあるものの台詞や歌は、感情が高ぶると不安定になったり、語尾が流れたり、聞き取りにくいところがあり、これはこれからの課題だろう。いずれにしてもその体当たり感にはすこぶる好感が持てた。これからの活躍がおおいに期待できそうだ。

 

相手役の流雨役(仙名彩世)の舞空瞳。「ハンナのお花屋さん」での大抜擢で印象深いが、新人公演ヒロインは初めてのこの人が今回の最高の収穫だった。本公演でも芝居、ショーでひときわ輝いているが、新人公演でも、冒頭、浜辺の復活祭の祈りの場面、白いヴェールを被って祈りを捧げる流雨は、まだヒロインであるとも何の説明もない場面だが、誰が見てもそこにドラマのヒロインがいるという圧倒的な輝きがあり、これこそが宝塚のヒロインと言っても過言ではない存在感があった。歌、ダンスそして芝居もなんら遜色がないのが強み。実際は背が高いのに、小顔で小さく見えるのも娘役としては理想的だ。流雨は、天草四郎とひかれあうヒロインではあるものの、あまり掘り下げて書かれておらず、演じるにあたってはかなり難しい役だと思うのだが、舞空が演じると妙に納得させられた。

 

一揆のただ一人の生き残りである南蛮絵師、リノ(柚香光)に扮したのは一之瀬航季。先だってのバウ公演での活躍で一躍注目したが、新人公演では今回初めての大役への挑戦。リノは、幕府側でも農民側でもない微妙な立場で、流雨をめぐって四郎とも対峙する難役。一之瀬は、すっきりした佇まいとさわやかな演技で柚香とはまた違った存在感があった。本公演でも休演中の亜蓮冬馬の代役を演じており、このチャンスをぜひ自分のものにしてほしい逸材だ。

 

主要3人以外では、松倉勝家(鳳月杏)の帆純まひろ、松平信綱(水美舞斗)の飛龍つかさの二人に注目したい。帆純は、ナイーブな個性が魅力で、新人公演では柚香光の役を演じることが多く、「新源氏物語」新人公演の六条御息所と柏木などが印象的だった。しかし今回は、非情な藩主役、これまでとは全く違ったキャラクターに、体当たりで取り組み、その憎々しげな感じはなかなかだった。一方、信綱を演じた飛龍は、「邪馬台国の嵐」で新人公演主演経験があり、経験に裏打ちされた余裕の演技には安定感があった。幕府側の一番の要の役を好演した。将軍・家綱(聖乃)を演じた希波らいとも若々しく風格のある演技で見せた。幕府側の良心ともいうべき鈴木(綺城ひか理)は、涼葉まれが演じたが、儲け役を凛々しく演じて印象的だった。

 

 

娘役では、子左衛門(瀬戸かずや)を演じた泉まいらの妻・福(桜咲彩花)の華優希。その妹・咲(城妃美伶)の音くり寿の二人に注目。二人とも農民の娘という事で衣装が地味なのが残念だったが、華、音とも落ち着いた役が似合うようになったのが頼もしかった。

 

本公演初見はスターのバランスなどに気を取られて、細部までなかなかしっかり見られなかったが、新人公演はその点、しっかり内容を吟味しながら見ることができ、この作品が、ストーリー展開がやや強引ではあるものの、内容的には自由をテーマに芯が通っていることが浮き彫りになった。ただし、天草四郎を20歳前後に設定をあげたのは功罪相半ば。一揆を立ち上げた理由はうまく伝わったが、半面、そのためのほころびが随所に見えた。せっかく崇高なテーマを提示しているのにずいぶん損をしている印象がぬぐえなかった。新人公演からさまざまなことが見えてくるのが面白いところだ。

 

©宝塚歌劇支局プラス8月1日記 薮下哲司

 

元専科・星条海斗さんが8月の毎日文化センターに登場!

 

◎…8月の大阪・毎日文化センター「薮さんの宝塚歌劇講座」に、宙組公演「天(そら)は赤い河のほとり」東京公演千秋楽(6月17日)で宝塚を退団したばかりの元専科・星条海斗さんがゲストとして参加してくださることになりました。星条さんは在団中にもこの講座に参加してくださったことがあり二度目の登場となりますが、退団を決意した経緯や宝塚への思い、さらには9月のコンサート出演など今後の活動についてなど近況が聞ける貴重な機会になりそうです。講座は会員制ですが、この回だけの特別会員(3500円+税)を若干名募集します。受講ご希望の方は毎日文化センター☎06(6346)8700までお申し込みください。

 


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