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愛希れいか、キュートにプレサヨナラ!月組バウ公演「愛聖女(サントダムール)」開幕

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     ©宝塚歌劇団

 

愛希れいか、キュートにプレサヨナラ!月組バウ公演「愛聖女(サントダムール)」開幕

 

11月退団が決まっている月組の娘役トップスター、愛希れいかのサヨナラを前にした主演公演、キューティーステージ「愛聖女(サントダムール)-Sainte d‘Amour-」(斎藤吉正作、演出)が7月1日、宝塚バウホールで開幕した。今回はこの公演の模様をお伝えしよう。

 

人気、実力とも№1。“ちゃぴ”の愛称で多くのファンを持つ愛希の退団前に用意されたバウヒロイン公演は、中世フランスで侵攻するイングランドから母国フランスを守ったジャンヌ・ダルクが21世紀にタイムスリップ、自由な現代を謳歌するというハチャメチャ(新感覚?)なドタバタミュージカル。愛希が扮するのはもちろん現代にタイムスリップしたジャンヌ・ダルクだ。

 

舞台は現代フランスのオルレアン。ご当地の英雄ジャンヌ・ダルクフリークのパメラ(天紫珠李)はオルレアン工科大学の女子大生。大学ではドクター・ジャンヌ(白雪さち花)のもと学生たちとタイムマシンの研究に余念がない。ある日、大きな衝撃と共にドクターが姿を消し、入れ替わりに中世の衣装に身を包んだジャンヌ・ダルク(愛希れいか)が現れる。愛希登場のここまで約10分。舞台中央の巨大なプロジェクターに笑顔の愛希の表情がアップになり、タイトルがインサート、ここからやっと愛希をメーンにしたプロローグとなる。随分人を食った出だしだが、最後までこの調子。

 

現代のヒロイン、パメラに扮する天紫にまずソロがあって、パメラが進行役となってストーリーが展開していく仕掛け。男役から娘役に転向した天紫が芝居で初めての大役に起用され、明るく天然な女の子をはつらつと演じていてインパクト抜群。作品のトーンは白雪ドクターのオーバーアクトに象徴されるように、全体的には漫画チックでドタバタ感満載。太陽爆発(フレア)のたびにタイムスリップがあって中世と現代がつながるのだが、なんだか安易なご都合主義丸出しで後半はストーリーを追うのもだんだんばかばかしくなってくるが、それはそれ、愛希を中心とした月組若手メンバーの一生懸命のハチャメチャな活躍ぶりを見ているだけで楽しめる。

 

何をやらせても愛希がとにかく魅力的で、愛希が舞台にいるだけで幸せな気分に浸れる。こんな欠点のない娘役スターはこれまであまり見たことがない。決してパーフェクトな美人ということはないのだが、その凛とした立ち姿の美しさは並外れていて、動きにエッジがきいていてしかもしなやか。歌唱力も低音から高音までぶれずに安定感があって、芝居はコメディから泣きの芝居までなんでもOKというすばらしさ。今回も現代にタイムスリップしたジャンヌ・ダルクというとんでもない役どころを、愛希ならではのふり幅の大きさで難なく楽しげに演じ切った。月組の若手メンバーに対する気遣いも愛希ならでは。なかでも同じ男役から娘役に転向した下級生、天紫とのコンビがなんとも微笑ましく二人のデュエットに娘役愛が感じられた。

 

愛希の実質相手役といっていい天紫。いきなり台詞やソロがあったりして出だしこそやや緊張気味だったが、男役経験があるだけに押し出しがあって、愛希とは違ったキュートさが魅力的。中盤からは底抜けに明るい天然の女子大生をはつらつと演じた。小顔なのでいろんな男役のタイプにも相性は良さそうで、これからの娘役地図の大きな戦力になりそうだ。

 

男役ではジル・ド・レの紫門ゆりやとファン・ド・ファンの千海華蘭が15世紀メンバー。シドニーの夢奈瑠音とパメラの彼氏でエルヴェの輝生かなでが現代の青年。娘役はドクターの白雪のほかミス・オルレアンコンテストに出場する晴音アキのクララ、結愛(ゆい)かれんのアマンド、その母親のマリーに扮した楓ゆきといったところが役づき。さすがにここでは紫門の男役の見せ方が抜きんでていて、夢奈は陰のある青年を好演、輝生の達者な演技が楽しかった。夢奈、結愛そして楓の母子対面のサイドストーリーは不要だと思ったが、結愛の素敵な歌を聞かせるためだとわかるとそれも許せた。それ以外ではシャルルなど多くの役を演じていた彩音星凪(あやおと・せな)が印象に残った。

 

何も考えずにみられ、理屈抜きで楽しめる公演だったが、退団を前にした娘役トップスターのバウヒロイン公演は元雪組の月影瞳以来のことなので、本音で言うと、もう少しグレードの高い愛希を見たかった。まあしかし、それはサヨナラ公演の「エリザベート」まで待つことにしよう。

 

なお、この公演はバウホールでは初めての千秋楽ライブ中継が行われる。7月7日土曜日14時30分から全国のTOHOシネマズなどで行われ、料金は全席指定で4300円。超チケット難と言われたこの公演を是非観たいというファンには朗報である。詳しくは、下記のホームページで。

 

http://liveviewing.jp/contents/saintedamour/

 

©宝塚歌劇支局プラス7月4日記 薮下哲司

 


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