OSKトップスター、高世麻央、涙のラストデーin大阪
7月で退団するOSK日本歌劇団のトップスター、高世麻央のサヨナラ公演、レビュー「春のおどり」が、5月27日、大阪松竹座で千秋楽を迎えた。今回は高世の本拠地大阪での最後のステージの模様をお伝えしよう。
高世のサヨナラ公演となったレビュー「春のおどり」は第一部が和物の「桜ごよみ夢草紙」(西川箕之助構成、演出、振付)第二部が洋物の「One Step to Tomorrow!」(名倉加代子作、演出、振付)のOSKならではの和洋二部構成のレビュー。
1996年に初舞台、2004年の劇団解散、存続の激動の時代を過ごし、2015年に桜花昇ぼる退団を受けてトップスターに就任、その涼やかな歌声と、ダイナミックなダンス、きりっとした立ち姿はさらに磨きがかかり、本拠地の大阪だけでなく首都圏での人気もうなぎのぼりだった。それだけに退団は惜しまれるが、本人いわく「95周年という節目をまかせていただき、自分なりの手ごたえを感じたことと、来るべき100周年を次代に引き継ぐには、今が一番いいとき」と説明、「大好きなOSKをこれからも見守って行きたい」と話す。
そんな高世のために一部の和ものでは楊貴妃、光源氏など様々な役を演じ分ける七変化を見せ、二部でもオープニングからフィナーレまでほぼでずっぱりで、まさに高世麻央ワンマンショーとでもいうべきレビュー。とはいえ桐生麻耶や楊琳、高世と同時に退団する真麻里都といった主要スターたちの見せ場もたっぷりあってOSKらしいエネルギッシュなレビュー。アスリート並みのハードなステージを一人一人が底抜けに明るい笑顔で歌い踊る姿は感涙ものだ。これぞOSK!
千秋楽のこの日昼夜とも終演後に高世のサヨナラショーがあり、客席はピンクのミニパラソルとペンライトを持ったファンで超満員。本公演終了後、いったん降りた緞帳が再びあがると舞台中央に純白のタキシードを着た高世が登場。まず自身が作詞した「歩き続けて」を熱唱、二曲目も自身の作詞による「Bright Day輝く未来へ」。続いて解散の時の懐かしい曲「Endless Dream」を劇団員全員で歌い継いだ。その間に黒の燕尾服に着替えた高世は真っ赤なバラの花束を抱えて登場。全員に見守られながら「男役に憧れ、OSKの群舞に魅せられて入団、多くのことを学ばせてもらいました。解散の危機の時は、自分の力ではどうすることもできないところで夢をあきらめなければいけないのかと思ったときもありましたが、多くの人のおかげで再び舞台に立たせて頂くことができ、66年ぶりに復活した松竹座の“春のおどり”は今年で15年連続となりました。あきらめなくてよかった。本当に幸せです」とあいさつ。満場から割れんばかりの大きな拍手が沸き起こった。そして最後に「Thanks to all of You~そうさこれからも~」を熱唱、客席の七色のペンライトが揺れ、高世が途中で感極まって思わず涙声になると、客席からは励ましの拍手が起こるなど、感動のフィナーレとなった。歌い終わった高世は「泣くまいと思っていたのですがだめでした」と涙でくしゃくしゃになった表情感謝のあいさつ。サヨナラショーの幕を閉じた。拍手は鳴りやまず、三度目のカーテンコールにアカペラでOSKのテーマソング「桜咲く国」を歌ってようやく大阪でのラストステージの幕を下ろした。幕が下りる寸前、客席から「どうしてそんなにかっこいいの」という声が飛び「みなさんの応援のおかげです」と答えてまたまた大きな拍手に包まれ、最後までさわやかな高世のサヨナラショーだった。
東京は新橋演舞場で「夏のおどり」として7月5日から9日まで上演され、これが高世麻央の最後のステージとなる。
©宝塚歌劇支局プラス5月27日記 薮下哲司記