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花組、水美舞斗、10年目でバウ初主演!「Senhor CRUZEIRO!」開幕
花組の人気男役スター、水美舞斗の初主演によるバウ・ラテングルーヴ「Senhor CRUZEIRO!(セニョール クルゼイロ)-南十字に愛された男-」(稲葉太地作、演出)が10日、宝塚バウホールで開幕した。今回はこの公演の初日の模様をお伝えしよう。
「セニョール-」は、花組きってのダンサーである水美のバウ初主演にふさわしく久々の二部構成によるショー仕立てのステージ。水美を含めて花組選抜メンバー26人の出演で、
一部は、ポルトガル語で南十字星を意味するクルゼイロと言う名を持ち、ダンスと歌をこよなく愛する青年の刹那的な生き様を綴るストーリー仕立てのショー、二部は、南十字星輝く南半球の熱帯夜をテーマにした熱いラテングルーヴ。これが一部、二部とも水美がはつらつとしたステージングで、男役水美の魅力が見事に発揮され、くわえて水美ファンならずとも、こんなショーが見たかったという宝塚ファンの思いがすべてつまったホットなショーで、ファンにとっては水美の初主演に対する感激と、ショー自体の感動が重なって、初日のカーテンコールは満員のファンが一気にスタンディング、歓声と感涙で大変な興奮ぶりとなった。
幕が上がると、舞台中央奥の水美にピンスポットがあたり、振り向きざまに歌いだすというかっこいいオープニング。飛龍つかさ、聖乃あすか、一之瀬航季、翼杏寿も加わって激しいパフォーマンス、これがアーティストグループ「セニョール クルゼイロ」のライブシーンであることがわかり、いきなり客席おりもあって否が応でも盛り上がる。舞台は記者たちやグルーピーたちも加わっての総踊りに展開、客席からは早くも手拍子が巻き起こるなどプロローグから熱気むんむん。ダンスもいつもとは違うなんとも複雑で高度なテクニックで、この振り付けは誰と思わずプログラムを見たらカポエイラで度肝を抜いた森陽子だった。このプロローグから早くも客席はノリノリとなった。
クルゼイロは、ブラジルのグループ「セニョール クルゼイロ」を代表する人気ボーカリストだが、スキャンダルまみれで他のメンバーからは浮いた存在。実は、心臓に爆弾を抱えていた。ライブの途中で倒れたクルゼイロは、グループから去り、一人、ブエノスアイレスへ。限りある命をタンゴダンサーとして過ごすが…。水美が、濃い化粧がことのほかよく似合い、陰のある寡黙でしかし熱い青年をこのうえなくかっこよく演じきった。
飛龍らグループメンバーのほか綺城ひか理が記者グループのリーダーアントニオ役、故郷に残してきた恋人ビアンカに城妃美伶、ブエノスアイレスでタンゴの相手役となるのが舞空瞳、クルゼイロの死神的な存在フロールプレータに白姫あかり、天使的な存在ルアブランカには華雅りりかというところが主要な役どころ。誰がどうというより、とにかく、花組の誰もがそれぞれ生き生きとしていて、水美の初主演を全力でサポートしているという気持ちのいいステージだった。
第二幕はマントを脱ぎ捨て真っ赤なラテンの衣装で登場した水美の華やかなナンバーから早くも客席の興奮は最高潮。もちろん客席おりもあって熱帯夜はのっけから盛り上がる。
綺城、飛龍、聖乃、芹尚英がバケツなどを楽器がわりにもって歌い踊る楽しいナンバーのあと、ここでも森陽子振付の「イエマンジャ」と「オグン」の場面が白眉だった。水美は、イエマンジャとして真っ白なドレス姿で踊った後、後半はオグンとして剣を手にダイナミックなダンスソロから水の精や戦士との群舞に発展、大劇場のショーでも十分通用する見事なナンバーだった。
「ララバイ・オブ・ブロードウェー」をメーンにした洒落たジャズクルゼイロの場面のあと、名曲「いそしぎ」をフィーチャーしたアレーニャの場面は、水美が女役の聖乃とデュエット、綺城がバックで歌うという豪華なナンバーで思わず鳥肌が立つほどのセクシーさ。このトリオのこの場面は、数年後に振り返ると伝説のシーンになるかも。ツボを押さえた場面の連続で、これこそが宝塚のショーの醍醐味だ。
続く「約束の場所」も「マシュケナダ」や「ディサフィナード」などボサノバの名曲をふんだんに織り込んだ軽快でホットな場面、そのままフィナーレに突入していった。
10年目で初のバウ主演となった水美、まさに満を持してのステージで、稲葉氏の抜群のセンスで、ここにきてようやく見事に大輪の花を咲かせた。歌唱にやや押し出しがないのと音程が不安定なのが惜しいが、自信をもって歌い込めば問題はないだろう。とはいえセクシーでシャープなダンスをみているとそんな細かいことは吹き飛んでしまう。
歌と言えば綺城のクリアな口跡は格別で耳に心地よく見事なサポートぶり。クルゼイロメンバーのひとり一之瀬の歌とダンスも注目。聖乃も成長著しく、美形ぶりがこのステージでも際立った。娘役では総合的に城妃のうまさが群を抜き、舞空のダンス力にも感心させられた。歌では舞月なぎさと咲乃深音が一場面をもらう大抜擢、2人がこれによく応えていた。
カーテンコールで水美は「南十字星の高みを目指して千秋楽まで突っ走ります」と挨拶。満員のファンから盛大な拍手を浴びていた。久々の二部構成によるショー形式のバウ公演、演じるほうはこのうえもなく体力を消耗するが、見る側としては最高のプレゼント、怪我に細心の注意をして千秋楽まで頑張ってほしい。公演は21日まで。
◎「エリザベート」特別鑑賞会増席決定のお知らせ
毎日新聞大阪開発主催による9月6日(木)3時の回の宝塚大劇場月組公演「エリザベート」特別鑑賞会「第5回薮下哲司さんと宝塚歌劇を楽しむ」(S席、昼食付=参加費13500円)は、5月7日から受付を開始しましたが、北は北海道、南は熊本のファンの方から申し込みが殺到、好評のため若干枚数の増席が決まりました。引き続き毎日新聞大阪開発☎06(6346)8784(平日10時~18時)で受け付けています。お早目のお申し込みをお待ちしております。