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望海風斗、土方歳三に挑戦、雪組全国ツアー公演「誠の群像」開幕

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望海風斗、土方歳三に挑戦、雪組全国ツアー公演「誠の群像」開幕

 

望海風斗を中心とした雪組全国ツアー公演、幕末ロマン「誠の群像」―新選組流亡記―(石田昌也脚本、演出)とレヴュー・スぺクタキュラー「SUPER VOYAGER!」~希望の海へ~(野口幸作作、演出)が、23日、大阪・梅田芸術劇場メインホールから開幕した。今回はこの公演の初日の模様をお伝えしよう。

 

「誠―」は、司馬遼太郎原作でテレビシリーズ化もされた人気小説「燃えよ剣」「新選組血風録」をもとに幕末の京都を舞台に新選組の副長、土方歳三の激しい生き様を描いた時代劇ミュージカル。1997年、麻路さきを中心とした星組で初演され、以来21年ぶりの再演となった。

 

規律を守れない者は容赦なく切腹、粛清という土方の新選組副長としてのハードな言動とは裏腹に、花や俳句を好み、武家娘お小夜への切ない思いといった、人間土方の優しい一面も巧みに描き出し、宝塚的な男のロマンとして非常によくできた作品だ。新選組のために鬼となって生きる土方を表現したダイナミックな名場面“鬼”のダンス(藍エリナ振付)の迫力も健在だった。今でこそ日本物にもダンスシーンはちょくちょくあるが、それまでは日本物にこのような激しいダンスはなく、これが先駆的なもの、今見ても新鮮だった。一方、初演にあった彩輝直が演じた美貌の新選組隊士、加納惣三郎と夏美ようが扮した田代彪蔵のラブシーンがカットされたが、これはもともとなくてもいいシーンだったので、かえってすっきりした。明治維新150年を記念しての再演というが、望海のよく通る歌声とともに初演に優るとも劣らない充実した再演になったと言っていいだろう。

 

望海は、近藤勇の右腕として数々の事件で勇名をはせ、新選組内では規律に背いたものには切腹を命令、剣豪ぞろいの隊士たちから鬼の副長と恐れられた土方を、端正ななかにも鋭い眼光で演じ抜き、幕末に生きた最後の侍の心意気を巧みに表現。それはラストシーンで壮絶な滅びの美学にまで到達。それだけに、武家娘、お小夜に対する不器用な愛の表現が際立って、何に対しても真剣で不器用で妥協が出来ない男の真っ直ぐな純情が浮かび上がった。ファン時代にこの作品を観劇して以来ずっと思い入れがあったという望海の思いが一つの結晶になった感じだ。

 

相手役のお小夜に扮した真彩希帆は、武家娘の控えめな品格をうまく表現、持ち前の歌唱力は健在で、薄幸のヒロインを好演。久々の再会で、土方への恋心を吐露する場面が見せ場だが、その切ない雰囲気が際立った。

新選組総長、山南敬助と幕府海軍総裁、榎本武揚の二役を演じたのは彩風咲奈。初演でも稔幸が二役で演じたが、土方らのやり方に疑問を持ち新選組を去り、結局は切腹して果てる山南があまりに印象的でいい役であるがゆえ、死んだあとすぐに榎本役で再登場するのはやや疑問が残ったが、彩風的にはどちらの役も堂々たる貫録。男役としての魅力の増し、すっかり二番手という立場が似合ってきたようだ。

 

新選組とは敵対する立場の勝海舟役は彩凪翔。彩凪と真彩が回想する形でこの物語が進行する形をとっており、作品の立ち位置を明確にする役でもあり、この舞台のキーパーソンだが、彩凪がそのあたりをしっかりと腰を据えてぶれずに演じて、作品の柱を支えた。

 

病弱ながら新選組の天才剣士、沖田総司には綾凰華。普段は人も殺さぬ心優しい青年だがひとたび剣を取ると一瞬にして殺人者の目に変わる、そんな沖田の二面性を綾が的確に演じた。その変わり目が激しい分、心優しい青年の部分が愛おしい。

 

主要4人の配役がうまくはまって、35人という少ない人数ながら充実した内容の公演となった。近藤勇役の奏乃はるとのおおらかさ、芹沢鴨(高松凌雲と二役)を演じた夏美の手練れの芝居と脇も適材適所。京の舞妓や大原女の華やかな群舞といった従来の日本物らしい場面とともに「鬼」の激しいダンスが強烈なアクセントになって最期まで目が離せなった。思想的な立場には関係なく幕末に生きた一人の男の激しい生き様を描き、改めて再演に値する佳作だった。

 

「SUPER―」は、昨年末から2月初めまで宝塚、東京で上演された望海風斗のトップお披露目のためのレビューの全国ツアバージョン。いきなり客席降りがあるなど、全国ツアーを意識した演出。ラインダンスのセンターが綾から潤花に変わったり、退団した沙央くらまはじめ朝美絢や永久輝せあが欠けているので、そこに煌羽レオ、綾凰華が入るなどかなりの場面で役替わりがあった。沙央が歌い、朝美が女役で踊った「風のささやき~愛の幕切れ」の場面は千風カレンが歌い、眞ノ宮るいが踊ったのが大きな変更点。大劇場では大階段に純白の紳士と淑女が勢ぞろいした「DIAMOND SHOW TIME」は、5段の階段と少人数では気勢が上がらず、全体にこぢんまりしたショーにまとまった。とはいえ望海、真彩の歌とダンスの実力は存分に堪能できるレビューで、充実した二本立てだった。

 

望海は初日終了後に「宝塚を初めて見たのが“誠の群像”で、“誠”に生きる舞台上の人物に感動、私自身に大きな影響を与えてくださった作品。そんな作品に再び出会えた幸せをかみしめて北海道の千秋楽まで精進したい」とあいさつ、大きな拍手をあびていた。

 

©宝塚歌劇支局プラス3月24日記 薮下哲司


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