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最優秀作品賞は「幕末太陽伝」2017宝塚グランプリ決定

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 ©宝塚歌劇団 幕末太陽傳PR写真より

 

 

最優秀作品賞は「幕末太陽伝」2017宝塚グランプリ決定

 

毎日文化センター(大阪)の「宝塚歌劇講座」受講者のみなさんの投票で2017年の宝塚歌劇のベストワンを選定する恒例の「宝塚グランプリ」が、27日決まった。最優秀作品賞は雪組公演「幕末太陽伝」。主演男役、娘役賞はこの公演で退団した早霧せいな、咲妃みゆが昨年に引き続いて連続受賞した。今回はその結果の詳細をお伝えしよう。

 

2017宝塚グランプリ受賞作および受賞者

 

最優秀作品賞

ミュージカル 雪組公演 ミュージカル・コメディ「幕末太陽伝」(小柳奈穂子脚本、演出)

レビュー   宙組公演 スーパー・レビュー「VIVA!FESTA!」(中村暁作、演出)

 

最優秀主演男役賞 早霧 せいな(「幕末太陽伝」「星逢一夜」の演技に対して)

最優秀主演娘役賞 咲妃 みゆ(「幕末太陽伝」「星逢一夜」の演技に対して)

最優秀助演男役賞 美弥 るりか(「グランドホテル」の演技に対して)

最優秀助演娘役賞 白雪 さち花(「瑠璃色の刻」の演技に対して)

最優秀歌唱賞   望海 風斗(「ひかりふる路」の歌唱に対して)

最優秀ダンス賞  愛希 れいか(「グランドホテル」「AllforOne」ほかのダンスに対して)

最優秀新人賞   風間 柚乃(「グランドホテル」新人公演、「AllforOne」の演技に対して)

最優秀再演賞   月組公演「グランドホテル」(岡田敬二、生田大和演出)

最優秀演出賞   生田大和(「グランドホテル」「ひかりふる路」の演出に対して)

最優秀主題歌賞 「ひかりふる路」(雪組公演「ひかりふる路」から)

            生田大和作詞、フランク・ワイルドホーン作曲

最優秀振付賞   御織 ゆみ乃(「VIVA!FESTA!」第5章「YOSAKOIソーラン」の振付に対して)

最優秀衣装デザイン賞 有村 淳(月組公演「AllforOne」の衣装に対して)

最優秀美術賞   大橋泰弘(「グランドホテル」の装置に対して)

特別賞      鳳翔 大(「幕末太陽伝」の貸本屋金造役の演技に対して)

           伶美 うらら(「神々の土地」のイリナ役の演技に対して)

           沙央 くらま(「AllforOne」「ひかりふる路」の演技、長年の宝塚愛に対して)

 

「宝塚グランプリ」 2017年は以上のような結果になった。

 

作品賞ミュージカル部門は、幕末の品川宿を舞台に江戸落語の世界を描いた「幕末太陽伝」

がぶっちぎりのトップ。もとになった川島雄三監督の同名映画の世界観はそのまま、小柳

奈穂子氏が、ほどよくアクを除いて品よく舞台化、宝塚に新たなジャンルを切り開いた画

期的な作品だが、主人公は居残り佐平次というこれまでの宝塚には考えられなかった役

どころ。宝塚の舞台とは相反した世界観を描いていただけに、ここまで受け入れらるとは

実際のところ予想外だった。当初は、三銃士を宝塚らしいユニークな視点で描いた

「All for One」やロマノフ王朝の終末期をスケール感豊かに描いた「神々の土地」の一騎

打ちではないかと予想していたのだが、受講生のみなさんの眼力はさすがだった。ちなみ

に次点は「神々の土地」だった。

 

一方、作品賞レビュー部門は、宙組公演「VIVA!FESTA!」が雪組公演「SUPER

 VOYAGER」を2票差で押さえてトップに。「VIVA!―」は、中村暁氏による世界の祭

りをテーマにした賑やかなレビュー。朝夏まなとがダンサーとして本領を発揮したレビ

ューで、振付賞に輝いた宙組生全員による「YOSAKOIソーラン」の圧倒的な迫力が忘れ

難く、点数を稼いだようだ。

 

 主演男役賞、娘役賞は「幕末太陽伝」で退団した雪組のトップコンビ、早霧せいなと咲

妃みゆの二人が2年連続栄冠に輝いた。二人は居残り佐平次と女郎おそめの演技が高く

評価された結果だが、2月中日劇場での「星逢一夜」の高いレベルの再演も評価の対象に

なった。次点は男役が2票差で朝夏まなと、娘役は「AllforOne」などの愛希れいかとデ

ッドヒートの末、わずか1票差で咲妃に決まった。

 

助演男役賞は、「グランドホテル」のオットー・クリンゲライン役を入魂の演技で魅了し

た美弥るりかが断トツ。次点は「神々の土地」で二枚目をかなぐりすてて怪僧ラスプーチ

ンを演じた愛月ひかるが続いた。同娘役は「瑠璃色の刻」でマリー・アントワネットを圧

倒的な迫力で演じた実力派の白雪さち花に輝いた。「幕末太陽伝」で相模屋のやり手おく

まを達者な演技で見せた舞咲りんが一票差で続いた。

 

歌唱賞とダンス賞は昨年に引き続き、望海風斗と愛希れいかが受賞。なかでも望海の歌唱

賞は「宝塚グランプリ」の初回から4年連続。誰をもよせつけない強みを発揮している。

 

新人賞は「グランドホテル」新人公演でオットー役を好演、「AllforOne」本公演で愛希れ

いか扮するルイ14世の双子の弟役を演じ鮮烈なデビューを飾った風間柚乃が断トツでト

ップ。続いて「ベルリン、わが愛」新人公演が印象的だった極美慎。蓮つかさ、飛龍つかさにも票が入った。

演出賞は「グランドホテル」と「ひかりふる路」の2作で、期待のホープ、生田大和氏が

昨年に続いての受賞。昨年は小池修一郎氏とのダブル受賞だったが、今年は初の単独受

賞。次点は2票差で「神々の土地」の上田久美子氏だった。上田氏は「宇月颯ディナーシ

ョー」の演出も評価が高かった。再演賞は「グランドホテル」「星逢一夜」「スカーレット

・ピンパーネル」と3作品で票が割れたが、最終的に「グランドホテル」が、伯爵を中心

にしたい生田氏のスタイリッシュな演出で受賞が決まった。主題歌賞も生田氏とフラン

ク・ワイルドホーン氏のコンビによる「ひかりふる路」が強さを発揮した。

 

衣装はデニム地の衣装が新鮮だった「All for One」の有村淳氏、美術はロシアの雪原を大

劇場に見事に再現した「神々の土地」の大橋泰弘氏が選ばれた。

 

最後に特別賞は「幕末太陽伝」の貸本屋金造役で、二枚目を棄ててコメディー演技に徹し

有終の美を飾った鳳翔大がぶっちぎりの1位だったが、「神々の土地」のイリナ役で退団

した伶美うらら、「ひかりふる路」を最後に退団する沙央くらまの二人もぜひとの声が多

く3人が選ばれた。

 

2017年の宝塚歌劇は、103年を迎え、新たな取り組みに果敢に挑戦、さらなる成長をと

げた1年だった。作家もベテランと若手がうまくかみあって、バラエティーに富んだ充

実した作品群で楽しませてくれた。一方、トップスターの世代交代もスムースに進み、暮

れのタカラヅカスペシャルはフレッシュでいながら安定感があった。2018年は宝塚にと

ってどんな年になるか、変わらず見守っていきたい。

 

 

©宝塚歌劇支局プラス12月28日記 薮下哲司

 


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