年に一度のタカラジェンヌの祭典「タカラヅカスペシャル2017」(石田昌也監修、中村一徳、藤井大介、斎藤吉正構成、演出)が21、22の両日、梅田芸術劇場メインホールで開かれた。今年は「モン・パリ誕生90周年」を記念「ジュテーム・レビュー」のタイトルで、パリやレビューにちなんだ曲で構成した2時間半のスペシャル。今回はこの公演の22日4時の回の模様をお伝えしよう。
2017年の各組の舞台をコラージュした映像が映し出される中、スクリーンが振り落とされるとステージがパッと明るくなり、東京公演中の星組を除く各組トップスターたちが勢ぞろい。「ボンジュール宝塚」大合唱の中、スペシャルなステージが開幕した。「モン・パリ90周年」ということで、今年はパリとフランスにちなんだ曲の大特集。轟悠の「PERFUME DE PARIS」から始まって真風涼帆の「シャンソン・ド・パリ」望海風斗の「パリの太陽」珠城りょうの「メモアール・ド・パリ」明日海りおの「楽しいわがパリ」轟を中心にした極め付け「幸福を売る人」とまさにパリづくし。立て続けにシャンソンでオープニング。最初から客席降りもあって大いに盛り上がった。
轟を中心にトップ4人が残ってのオープニング・トークは真風と望海が覚えたての中国語で台湾と香港の映画館でライブ中継を見ているファンに向けてのご挨拶。4回目とあってふたりともずいぶん流暢。タカラヅカスペシャルもずいぶんグローバルになったものだ。とはいえ轟を中心に周囲が次々と変わっていくタカラヅカスペシャルはこれで何年続いているのだろうか。轟と今のトップたちとはかなりの学年差があるはずなのだが、一緒に並んでいてもそれをあまり感じさせない若々しさは驚異的だ。パリをネタにしたトークでもおおいに盛り上がる。
次いで花、月、雪、宙組のコーナー。花は明日海が「邪馬台国の風」月は珠城が「長崎しぐれ坂」雪は望海が「琥珀色の雨にぬれて」を歌い、各組が今年上演したさまざまな舞台の主題歌で1年を振り返った。宙組の真風はまだトップ披露公演前ということでシャンソンの名曲「愛の讃歌」を披露した。昨年に引き続き今年もパロディーコーナーはなく、歌のみでつづる趣向。組コーナーのあとは専科の華形ひかる、星条海斗、沙央くらまによる「シャンパーニュ」と続き、1幕ラストは、トップコンビが相手を入れ替えてのデュエット。真風と愛希れいかで「ファントム」望海と仙名彩世で「仮面のロマネスク」珠城と真彩希帆で「パリの空よりも高く」明日海と星風まどかで「Adieu Marseilles」という具合。このシャッフルなかなか新鮮だった。最後は「ジュテーム」を4組が歌い踊り、最後は元のさやに納まるという憎い演出。とはいうものの、退団したトップが歌った曲がないばかりか、著作権の関係からか「グランドホテル」など肝心の舞台からの主題歌がなかったりして、一部は全体的にやや単調。
休憩をはさんで第2幕は「レビュー」コーナーから。轟の「夢の花すみれ」から始まって「ブギウギ巴里」瀬戸かずや、鳳月杏らによる「ボン・ビアン・パリ」再び轟の「ビギン・ザ・ビギン」と続いて、轟が歌う「水に流して」をバックに黒燕尾服の男役メンバーの群舞が繰り広げられた。藍エリナ振付のスタイリッシュなダンスが見ものだった。
轟のミニワンマンショーのあとはぐっと若返って2、3番手のコーナー。宝塚のレビュー作家たちの代表的な主題歌を歌い継ぐ趣向で、まずは彩風咲奈の「ラ・ベル・タカラヅカ」から。白井鐡造の遺作レビューを彩風が好唱。鳳月、彩凪翔、愛月ひかるで「タカラジェンヌに栄光あれ」柚香光と美弥るりかによる「パレード・タカラヅカ」瀬戸、月城かなと、桜木みなとの「ハロー・タカラヅカ」そして芹香斗亜、暁千星、朝美絢で「タカラジェンヌに乾杯!」といった具合。最後はトップコンビと専科以外全員が勢ぞろいして「タカラヅカフォーエバー」で締めくくった。
この後のコーナーが今回の目玉。トップスターと客席のファンが、宝塚の名作の一場面のセリフを掛け合いで共演するという企画。この日は「エリザベート」の一場面で望海がトート、客席のファンがエリザベートに扮して、ファンが「どうすればいいの、私、生きていけない」というと望海が「死ねばいい」と答えるもので、かつてのラジオの人気番組「宝塚ファンコンテスト」を客席と舞台で再現したものだ。客席には彩風がレポーターとして待機、ファンと舞台をつないだ。トップ全員が何らかの形で「エリザベート」にかかわっていて、知られざる裏話も飛び出し「エリザベート」がいかに宝塚で大きな演目かが証明された形。このMCコーナーには轟が不在で、4人がのびのびとトークしていたのが印象的。
引き続き各組トップがレビューの主題歌を歌い継ぎ、最後は轟を中心に「モン・パリ」の大合唱、続いて「スミレの花咲く頃」を歌い上げて祭典を締めくくった。今年は過去を振り返るというテーマで、新しい展望はなく、明日海以外は今年入れ替わったばかりの新トップが揃い、退団を発表している大物スターもなく、全体的に非常にリラックスした安定感が満ち溢れた。会場もファン参加のコーナーで一気に盛り上がり、夢の祭典というにふさわしいスペシャルだった。
©宝塚歌劇支局プラス12月22日記 薮下哲司