パンフレットより ©宝塚歌劇団
花組ホープ、飛龍つかさ、堂々の初主演、古代ロマン「邪馬台国の風」新人公演
花組の男役ホープ、飛龍つかさが初主演した古代ロマン「邪馬台国の風」(中村暁作、演出)新人公演(樫畑亜依子担当)が、20日、宝塚大劇場で行われた。今回はこの模様をお伝えしよう。
1800年前、邪馬台国を中心にした倭国連合と狗奴(クナ)国が覇権を争っていた古代日本を舞台に、邪馬台国の兵士タケヒコと女王ヒミコの報われない悲恋を描いた中村氏のオリジナルミュージカル。本公演初日の舞台は、ストーリーの骨格はしっかりしているのだが、芝居のなんともいえない空洞感が目立ち、まるで舞台稽古を見せられているような未熟さに、おもわず目を覆いたくなったが、その後、場面構成などを細かく修正、台詞もかなり手を加え、全体的にかなりタイトに締まった感じに出来上がってきているようだ。新人公演は、基本的に本公演通りに舞台を再現するのがセオリーなので、今回もそれをきちんと踏襲しているのであれば、本公演がかなり改変されていることがよく分かった。ただ、よくなったのはいいが、初日前後に観劇した観客には不親切きわまりないことで、これは今後の喫緊の課題にしてほしい。
今回、タケヒコ役(本役・明日海りお)で初主演となった飛龍つかさは、前回の「金色の砂漠」新人公演で、鳳月杏が演じたジャハンダール王をスケール感豊かに演じて、その力量が評価された逸材。今回は、堂々の主演に起用された。甘く華やかな雰囲気に加え、長身による男役としての精悍さを兼ね備えた大きな存在感が舞台映えするほか、肝心の歌、ダンス、芝居も三拍子そろっており「飛龍」という名前に負けない上り調子の勢いが身体全体から立ちのぼった。タケヒコが、巫女だったマナに一目ぼれし、その後、女王ヒミコがマナであることを知り、アケヒの手引きで逢引きするくだりにも説得力があり、物語全体の芯をきっちり貫くことができたのはなかなかのお手柄だった。今後の活躍がおおいに楽しみだ。
相手役のマナ(仙名彩世)は、華優希が抜擢された。本公演ではタケヒコの少年時代を演じている期待の娘役だ。名前の通り、宝塚の娘役にふさわしい華やかな容姿は、何人かいる巫女のなかに並んでもすぐに分かるほど。飛龍同様、今回が新人公演初ヒロインだが、そうとは思えない舞台度胸で、女王ヒミコになってからの立ち居振る舞いなど見事なヒロインぶりだった。飛龍とのコンビネーションも絵になっていた。
タケヒコと対立する狗奴国のクコチヒコ(芹香斗亜)には、聖乃あすかが起用された。美形男役として早くから注目を集める存在で、新人公演でも徐々に大役が回ってくるようになり、今回はおいしい2番手役がめぐってきた。黒い装束にバンダナ姿という濃い役にもかかわらず、その美貌が映えてかっこいいことこのうえない。ただ、飛龍と並ぶと背が低く見えるので、台詞をもう少し工夫して力強さを出せば、さらに大きく見せることができると思う。ラストの飛龍との立ち回りはなかなか迫力があった。
タケヒコの仲間たちはアシラ(鳳月)が亜蓮冬馬、フルドリ(柚香光)が帆純まひろ、ツブラメ(水美舞斗)が紅羽真希、ユズリハ(優波慧)の一之瀬航希といったところが主な配役。4人とも期待株だが、どの役も大した役ではなく、力を持て余し気味。ラストの戦闘シーンが唯一見せ場だが、仲間的には娘役のイサカ(城妃美伶)の舞空瞳が一番のもうけ役だった。舞空はやや小柄だが戦闘服を着ていてもチャーミングで、これからの花組娘役地図を大きな塗り変えそうな予感がした。
あと印象に残ったのは奴王ヨリヒク(瀬戸かずや)に扮した綺城ひか理、タケヒコを慕う村の娘フルヒ(桜咲彩花)に扮した城妃。二人ともすでに新人公演主演経験があるうえ、本公演でも大役を経験しているので、大舞台で自分を見せるすべを知っていて、綺城の王としての凛とした存在感、城妃の滲み出るフルヒの切ない思い、いずれも好演だった。大巫女(美穂圭子)の音くり寿、ヒミクコ(星条海斗)の矢吹世奈、そしてアケヒ(花野じゅりあ)の春妃うららは実力相応の役どころを手堅くまとめたといった感じ。
96期生が新人公演を卒業、97期以下で演じた最初の新人公演となり、しかも97期生が脇に回ったことから、全体的にかなり若返った感のする公演となったが、飛龍、華、聖乃ら中心メンバーが大健闘して、作品の良し悪しは別として、質の高い公演となったのは、なによりだった。
©宝塚歌劇支局プラス6月21日記 薮下哲司
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朝夏まなとサヨナラ公演、宙組公演「神々の土地」「クラシカル ビジュー」特別鑑賞会のお知らせ
○…宝塚のマエストロ、薮下哲司さんと宝塚歌劇を楽しむ「宙組トップスター、朝夏まなとサヨナラ公演特別鑑賞会」(毎日新聞大阪開発主催)が、8月29日(火)宝塚大劇場で開催されます。「桜華に舞え」「幕末太陽伝」に続く第3回となる今回は、午後1時半からエスプリホールでの昼食会(松花堂弁当)のあと薮下さんが観劇のツボを伝授、3時の回の宙組公演「神々の土地~ロマノフたちの黄昏~」(上田久美子作、演出)「クラシカル ビジュー」(稲葉太地作、演出)をS席(一階中部センター)で観劇します。参加費は13500円(消費税込み)。先着40名様限定(定員になり次第締め切ります。お早めにお申し込みください。)問い合わせは毎日大阪開発☎06(6346)8784まで。