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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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井上芳雄×夢咲ねね初共演、ミュージカル「グレート・ギャツビー」大阪公演開幕

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井上芳雄×夢咲ねね初共演、ミュージカル「グレート・ギャツビー」大阪公演開幕

 

杜けあきで初演、再演で瀬奈じゅんが演じたギャツビーに井上芳雄が挑戦したミュージカル「グレート・ギャツビー」(小池修一郎脚色、演出)大阪公演が4日、梅田芸術劇場メインホールで始まった。今回はこの模様をお伝えしよう。

 

「グレート・ギャツビー」は、1920年代のアメリカ。ニューヨーク郊外ロングアイランドの河畔の豪邸で夜ごと豪華絢爛たるパーティーを開く若き富豪ジェイ・ギャツビーの謎めいた半生を描いたスコット・F・フィッツジェラルドの代表作の舞台化。宝塚版と同じ小池氏の脚本、演出だが、宝塚版とは構成、音楽ともに大幅に異なり、新たにリメイクしたバージョンとなっている。

 

舞台中央に巨大な円形の穴があり、波打つ水面を真上からみた映像が流れている。そこへガウン姿の井上ギャツビーが登場、ガウンを脱いで水着姿になったとたんに銃声が轟き、そのままプールに転落。プールが真っ赤に染まっていく。宝塚でもすっかりおなじみとなった松井るみの装置はミュージカル「サンセット大通り」そっくり。小池演出は最初にギャツビーの死を見せておいて、そこから回想に入るという展開だ。

 

フィッツジェラルドの原作は、階級の差で実らなかったデイジーとの恋を成功することによってつかみ取ろうとした男の悲劇を通して1920年代というアメリカ資本主義の狂乱の時代を浮き彫りにしているが、小池氏の舞台版は、一人の女性を愛した男のロマンとして描くことが優先されており、時代はファッションにしかすぎない。男役の美学が一番の宝塚版ではそれがうまくはまったが、男女版のミュージカルとして見るとなんとなく上滑りしていて物足りなく甘い感じがした。ギャツビーを取り巻く人物像のなかでトムとデイジー夫妻と自動車修理工のジョージとマートル夫妻の対比がこの作品の肝だと思うのだが、そのすれちがいのポイントの描写がやや弱く、ジョージがギャツビーを撃ち殺すラストの理不尽さが盛り上がらなかった原因のように見えた。昨年上演された松竹版の「グレート・ギャツビー」はそのあたりがうまかった。

 

井上芳雄のギャツビーはプロローグは別として、パーティーで階段の上からさっそうと登場するところはさすがに決まっていて、いまこの役をここまで演じられるのはこの人しかいないだろうと思わせるほど。リチャード・オべラッカー作曲の主題歌「夜明けの約束」は宝塚版の「朝日が昇る前に」とは違った雄大なスケールの大曲だが、見事に歌いこなした。

 

デイジー役は元星組娘役トップの夢咲ねね。ギャツビーが思いを寄せるにふさわしい可愛さと美しさを兼ね備えた理想的なヒロイン。歌唱がやや弱いのが難だが、それを補ってあまりある美貌だった。

 

この舞台は、元宝塚の娘役トップが3人出演するなど宝塚勢が多く出演しているのが特徴。自動車修理工ジョージ(畠中洋)の妻でトムの愛人マートルには元月組娘役トップの蒼乃夕妃が起用された。ロバート・レッドフォード主演の映画版ではカレン・ブラックが演じて強烈な印象を残した役で、宝塚時代から男前な娘役として定評のあった蒼乃だけに、この配役はなかなかヒットだと思ったのだが、衣装のせいもあるが、思いのほか品のいい可愛い女性として描かれ、これはやや予想外だった。

 

もう一人の娘役トップは、元星組の渚あき。デイジーの母親エリザベス役で久々に大舞台に登場、年齢を重ね思わず見違えたが、宝塚時代とは打って変わった品のいい落ち着いた演技で舞台を締めた。

 

また、デイジーの親友でニックと大人の関係になるゴルファー、ジョーダンに扮したAKANEliveも元宝塚の男役。さっぱりした性格の女性をその居住まいだけで表現、なかなか見事だった。マートルの妹キャサリンも元星組の音花ゆり。弾んだ演技でひときわ目を引いた。

 

男優陣では、デイジーの従兄弟で、この物語の語り手でもあるニックを演じた田代万里生が素晴らしかった。「エリザベート」のフランツを経て、役者としてもずいぶん存在感を増してきたが、ニックはこれまでの彼の多くの役柄の中でもぴったりの役どころ。ニックの目線から見たギャツビーを観客に提示しながら、ニックという人物像もしっかりと浮かび上がらせた。デイジーの夫トム役は広瀬友祐。野性的で豪快な作りが役に似合っていた。

 

せっかく貴重なクラシックカーを2台も登場させながら肝心の事故の場面がないという?はあったものの小池氏の演出は、随所にダンスナンバーを挿入、ミュージカル的処理のうまさはさすがで、最後まで飽かせることはなかった。公演は16日まで。20日から25日まで博多座でも上演される。

 

©宝塚歌劇支局プラス7月8日記 薮下哲司

 

 

   ©宝塚歌劇団

 

朝夏まなとサヨナラ公演、宙組公演「神々の土地」「クラシカル ビジュー」特別鑑賞会のお知らせ

 

○…宝塚のマエストロ、薮下哲司さんと宝塚歌劇を楽しむ「宙組トップスター、朝夏まなとサヨナラ公演特別鑑賞会」(毎日新聞大阪開発主催)が、8月29日(火)宝塚大劇場で開催されます。「桜華に舞え」「幕末太陽伝」に続く第3回となる今回は、午後1時半からエスプリホールでの昼食会(松花堂弁当)のあと薮下さんが観劇のツボを伝授、3時の回の宙組公演「神々の土地~ロマノフたちの黄昏~」(上田久美子作、演出)「クラシカル ビジュー」(稲葉太地作、演出)をS席(一階中部センター)で観劇します。参加費は13500円(消費税込み)。先着40名様限定(定員になり次第締め切ります。お早めにお申し込みください。)問い合わせは毎日大阪開発☎06(6346)8784まで

 


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