公演ポスターより
朝夏まなと、プレサヨナラコンサート「A Motion」開幕
今年末の退団を発表した宙組のトップスター、朝夏まなとのプレサヨナラ公演となった朝夏まなとアメイジングステージ「A Motion(エースモーション)」(斎藤吉正作、演出)が、6日、大阪・梅田芸術劇場メインホールから開幕した。今回はこの模様をお伝えしよう。
「A Motion」は、退団を前にした朝夏のショースターとしての魅力を前面に押し出そうという狙いのライブショー。宙組選抜のアサカボーイズ17人、アサカガールズ12人計29人を従えてのワンマンコンサートだ。花組時代から長い手足を駆使した切れのあるダンスで定評があったが、宙組に組替えになって最初の公演「Amour de 99」で、かつて大浦みずきが踊ったフレッド・アステアのナンバーに起用され、立派にこなしてダンサーとしての評価を固め、プレトップ公演「TOP HAT」での軽やかなタップダンスも記憶に新しい。そんな朝夏に存分に歌って踊ってもらおうというコンサートだが、単にナンバーを見せるだけでなく、映像を駆使して全体が遊び心をまじえたバラエティー仕立てになっていて、宙組メンバーの見せ場もたっぷり。二幕ではトークやTシャツのプレゼントコーナーなどもあってディナーショーの拡大版のような趣。終始、朝夏ファン向けのプレサヨナラショーといった感じだった。
プロローグは舞台中央のスクリーンに警官に追われるライダーのアニメが流れ、セリから朝夏が登場、4人の警官とバトルを繰り広げるところから始まる。朝夏はブロンドのメッシュが入ったカツラがなんともかっこいい。ガールズが白、ボーイズが朝夏と同じ全員が黒とシルバーのライダースタイルで勢ぞろい、激しいロックテイストのダンスでオープニング。いきなり客席降りもあって、のっけから客席は興奮状態だ。
メンバー紹介とMCのあとは、宝塚のA(エース)である朝夏の魅力をさまざまな角度から見てもらおうという趣向。
一幕では、朝夏が初舞台を踏んだ2002年のヒットナンバーを全員でメドレー形式で歌い継ぐという趣向が楽しかった。瀬戸花まりと華雪りらが歌う「ボヤージュ」からスタート、伶美うららが「恋のハッピーデイ」愛月ひかるが「フィールファイン」といった具合。朝夏も「恋のマイレージ」や「きよしのズンドコ節」「ムゲン」などで盛り上げた。曲目と歌うメンバーの名前をきっちりスクリーンで紹介してくれるのも親切だった。一幕ラストはケント・モリ振付のアンドロイドのダンスのようなユニークな群舞で締めくくった。
二幕はチョコレート色のスーツを着た愛月を中心としたスタイリッシュなダンスナンバーでオープニング、朝夏がかっこよく締めるかと思うとメガネ姿で登場して全員ずっこけるというお笑いシーンから始まって、ミュージカルメドレーへ。「ロミオとジュリエット」から「世界の王」を和希そら。「僕は怖い」をロミオの扮装で朝夏が。「ME AND MY GIRL」からは澄輝さやとが「ランべス・ウォーク」で盛り上げた後。朝夏がビルになり切ったコート姿で「街角によりかかって」を。次いで「ファントム」から「パリのメロディー」を花宮沙羅が、そしてファントム朝夏とキャリエール愛月で「お前は私のもの」を感動的に歌い上げ、引き続き朝夏が一瞬でパーシーに早替わりして「THE SCARLET PIMPARNEL」から「ひとかけらの勇気」を熱唱してしめくくった。
4チームが日替わりで登場する2幕19場は、初日は澄輝さやとを中心としたAチームだったが、朝夏の初舞台だった星組公演「ラッキースター」を皮切りに「エンター・ザ・レビュー」などこれまでに朝夏が出演したショーの主題歌を7人がメドレーで歌い継ぎ、最後に朝夏を呼んで思い出を聞くというスタイル。純矢ちとせとは音楽学校時代の思い出話なども飛び出した。ラスト近くには女神に扮した純矢が朝夏のこれまでの足跡を映像で紹介しながら、出演作すべてのタイトルをつないで朝夏讃歌を読み上げるなど、朝夏の宝塚生活総決算というにふさわしいコンサートだった。
朝夏は、歌、ダンスに大車輪の活躍だったが、一幕は「きよしのズンドコ節」以外にこれといった目に焼き付くような場面がなく、二幕のミュージカルメドレーあたりからやっとエンジンがかかった感じ。ボーイズメンバーではダンスで蒼羽りく、歌で星吹彩翔が際だち、ガールズでは伶美がデュエットダンスなどここという場面で美貌が映えた。
©宝塚歌劇支局プラス6月6日記 薮下哲司