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中国語の「ごらんなさい」でオープニング!花組公演「ベルサイユのばら」開幕

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中国語の「ごらんなさい」でオープニング!花組公演「ベルサイユのばら」開幕

来月8日からの台湾公演に先駆けての花組公演、宝塚グランド・ロマン「ベルサイユのばら」-フェルゼンとアントワネット編―(植田紳爾脚本、演出、谷正純演出)とレヴュー・ロマン「宝塚幻想曲」タカラヅカファンタジア(稲葉太地作、演出)が、10日、梅田芸術劇場メインホールで開幕した。大阪だけの公演とあって東京からも大挙ファンが駆けつけ、初日から満員御礼の大盛況となったこの公演の模様を報告しよう。

「ベルばら」は一昨年から始まった100周年再演シリーズの掉尾を飾る公演。昨年の花組中日劇場バージョンをもとにしているが、一本立ての大作を二本立ての前ものに再構成したことからかなりのダイジェスト版で、ひとつひとつの場面が短く、どんどん話が進んでいく。オープニングカーテンには「凡爾賽…」とタイトルの中国語の電飾が輝き、小公子(飛龍つかさ)らが歌う「ごらんなさい」もなんと中国語!いつもとは一味違う。
カーテンが開くと中央にアントワネット、上手にフェルゼン、下手にオスカルの漫画の絵が現れ、明日海フェルゼンの歌声が聞こえ、漫画の後ろから明日海りお。つづいてオスカルの絵の後ろから柚香光、そしてアントワネットの絵が飛ぶともちろん花乃まりあが登場。仮面舞踏会でのそれぞれの運命的な初対面の様子を再現するという段取り。三人の関係をここで要領よく説明したあと華やかなプロローグが展開、アンドレ役の芹香斗亜がラインアップしたところでいよいよ物語がスタートする。ここまでで約10分。あとの駆け足がわかろうというもの。

ルイ16世(高翔みず希)が「革命」と絶句してオルゴールを落とすカーテン前からフェルゼンとアントワネットの王宮の運河でのラブシーン、そしてメルシー伯爵(汝鳥伶)がフェルゼンに帰国を懇願する場面と、とんとんと進み、歌はどれも一番だけ、気が付いたらフェルゼンは早くもスウェーデンに帰国しているといった具合。まさに「アン・ドウ・トロワ」だ。
その間、オスカルは訪ねてきたベルナール(瀬戸かずや)とロザリー(城妃美伶)にパリの街の惨状を聞き、近衛隊から衛兵隊に転属を決意、一方、アンドレはフェルゼンに帰国前にオスカルに会ってやってくれと頼みながらも、自分はオスカルを慕って歌う場面などが手短に展開する。
帰国したフェルゼンのもとにジェローデル(鳳真由)が現れ、ジェローデルの回想でバスティーユの場面が展開されるのは最近のフェルゼン編と同じ。ここでオスカル、アンドレの見せ場となる。ただ「今宵一夜」の場面がないため観客にはオスカルのアンドレに対する心情が分からず、なんとなく盛り上がらない。メルシー伯爵とフェルゼンの場面をオスカルとフェルゼンの場面に置き換えた方がよかったかも。

あとはチュイルリー宮に幽閉されたアントワネットを救出しようとフェルゼンがフランスに向かい、ラストの牢獄のシーンとなる。公安委員に殴る蹴るの乱暴を働かれたあとの花乃アントワネットのソロが聴かせた。これは中日劇場版で蘭乃はなが初めて歌った曲だ。公安委員に扮した羽立光来の迫力もみものだった。牢獄の場面はじっくりあり、明日海フェルゼンの熱い思いをきっぱりと断る花乃アントワネットの凛とした佇まいが際だった。花乃は、歌はやや安定感に欠けるきらいがあるが、こういう芯のある芝居の表現力はなかなかいい。

明日海フェルゼンは、滑らかな歌唱力を武器に、分別ある青年貴族を終始抑え気味に演じながら、終盤の牢獄での感情の発露にもっていく計算が見事だった。柔和な表情の中のどこにそんなエネルギーがあるのかと思わされる。

柚香のオスカルは、長身でとにかくプロポーションが素晴らしく、ブロンドの巻き毛と真っ赤な軍服がことのほかよく似合った。今回は女性としての見せ場がなく、演技はやや硬かったのが課題。プロローグ以外歌がなかったのにはびっくり。

一方、アンドレの芹香はあまりにも出番がなく、短いソロはあるものの、見せ場はバスティーユの橋の上の場面だけ。あまりにもあっけなく死んでしまうという印象だった。今回は特にオスカルの「アンドレ、見えていないのか。なぜついてきた」の台詞がなく、アンドレの目が見えにくくなっている話がカットされているためだとは思うが、よけい余韻がなかった。とはいえ芹香は黒髪のアンドレがよく似合っていた。

ほかベルナールの瀬戸、ジェロ―デルの鳳、ロザリーの城妃以外では、アランが真輝いずみ、ソフィアが華雅りりかといったところが主要キャスト。汝鳥と美穂圭子が脇で存在感を示していた。

とまあそんな具合で、この公演「ベルばら」入門編というところだ。初演以来、あちこちいじって基本的なストーリーは変わらないものの、見せ方はずいぶん変わった。次回の再演では原点に返って、原作通りアントワネットをヒロインにした初演を中心にオスカル、アンドレもきっちり描いた「ベルばら」昼夜通し上演、6時間ぐらいかかってもいいから完全版を見たいものだ。

「―ファンタジア」は、大劇場バージョンを39人という少人数で再現するという至難の業に挑戦したメンバーに脱帽のショー。ただでさえダンスナンバーが多く、どれも激しいものばかり。明日海を中心によくこれをクリアした。

明日海が花魁姿から一瞬にして男役に早変わりする場面などほぼ大劇場と変わらないが、中盤では芹香、柚香、瀬戸、鳳の4人が台湾の人気アイドルユニット、五月天のヒット曲「OAOA」を、明日海が、同じく台湾のヒット曲で日本では一青窈がカバーしている「望春風」を中国語で歌うという台湾公演ならではの趣向も。

しかし、なんといっても「さくら」を三味線ロックに編曲、男役陣が燕尾服で縦横無尽に激しく踊る群舞シーンから、間髪を入れずに東日本大震災の復興ソング「花が咲く」をバックに明日海と花乃がデュエットダンスへと展開するフィナーレが圧巻だった。全体のテンポもよく、音楽の使い方も新旧とりまぜてセンス抜群、稲葉氏の代表作になると思う。台湾でも圧倒的支持は確実だ。「ベルばら」には注文もあるが、まずは贅沢な二本立てといっておこう。大阪公演は16日まで。

©宝塚歌劇支局プラス7月10日記 薮下哲司



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