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美弥るりか単独初主演!月城かなと共演による月組公演「瑠璃色の刻(とき)」開幕

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     ©宝塚歌劇団

 

 

美弥るりか単独初主演!月城かなと共演による月組公演「瑠璃色の刻(とき)」開幕

 

月組の人気スター、美弥るりかが、雪組から組替え、月組初登場となった月城かなとを迎えて単独初主演したミュージカル「瑠璃色の刻(とき)」(原田諒作、演出)が29日、大阪・シアタードラマシティで開幕した。今回はこの公演の初日の模様をお伝えしよう。

 

「瑠璃色―」は、18世紀ヨーロッパで、不老不死と言われ、ある時は錬金術師、ある時は予言者や魔術師とも言われ、数々の伝説を残した謎の人物サン・ジェルマン伯爵を題材に、革命前夜のフランスで彼と瓜二つの男がたどる数奇な運命を描いた原田諒氏のオリジナルミュージカル。謎多き人物サン・ジェルマン伯爵を「ベルサイユのばら」や「THE SCARLET PIMPARNEL」「1789」などで宝塚ファンにはおなじみの時代と場所に登場させたのがミソで、ルイ16世やマリー・アントワネットはおろか革命の闘士ロベスピエールまで登場する。ついこのあいだ「スカピン」を見たばかりなので、またまた登場という感じ。ストーリーも「ベルばら外伝」のような内容だが、今まで主役として取り上げられなかった謎の多いサン・ジェルマン伯爵をテーマにしたところがなかなか面白そうで興味をそそられた。

 

「グランドホテル」のオットー・クリンゲライン役で絶好調の美弥の初主演の作品にこの題材を持ってきた原田氏の慧眼はさすが。実際、美弥は、オープニングから妖しく美しく、一体どんな舞台になるのだろうと期待が高まった。しかし、目のつけどころはよかったのだが、時代をフランス革命時にしたことが裏目に出た典型で、ストーリーにデジャブ(既視)感があって新鮮味に欠けたほか、サン・ジェルマン伯爵にそっくりの役者シモンが、伯爵と見間違えられたことからなりすましてしまうという着想それ自体は面白いのだが、ストーリー展開が思いのほか平板で盛り上がりに欠け、せっかくの題材と素材が活かせなかった。よく知られた時代を別の視点から取り上げる面白さはあるが、ルイ16世やアントワネットの将来が見えているだけにストーリーの先がある程度読めることが一番の原因だろう。しかも全体の構成が夢オチであるかのようないいわけがましさも人を食っているようでいただけなかった。

 

と内容的には不満が残ったが、シャンボール城の螺旋階段をイメージした巨大な装置(松井るみ担当)の前、ウェーブがかかったロングヘアに黒ずくめの衣装に、青く光る賢者の石をもって登場したサン・ジェルマン伯爵の美弥は、何とも言えない妖しい美しさ。ヘアスタイルや衣装が格別によく似合った。

 

入団当初から、キラキラ光る大きな瞳と、独特のダンスと芝居のセンスでどんな隅っこにいても際立っていたが、月組に組替えになってから着実に地歩を固め、ようやく主演作に恵まれた。それにしても初主演とは驚きだ。男女両方の役をこなせる強みもあり、最近では「アーサー王伝説」のモーガン役が印象的だったが、今回は、革命前夜のフランスのしがない旅役者が、たまたま忍び込んだ城の一室で、サン・ジェルマン伯爵に見間違えられたことから伯爵になりすまし、不老不死の伝説と共に宮廷で一世を風靡していく波乱万丈の青年の人生を、野心とその裏に秘めた優しさを混在させながら鮮やかに演じ分けた。二幕冒頭のダンスソロも含めて歌、ダンスともに見せ場があり、フィナーレの海乃美月とのデュエットも美弥のダンスを海乃が熱いまなざしで見つめるという振りだった。まさに美弥の魅力全開といったところ。

 

一方、組替え後初出演となった月城は、美弥ふんするシモンの旅役者仲間のジャック。サン・ジェルマン伯爵の従者テオドールとして、何不自由のない身分になるのだが、ある日、宮廷で芝居を披露した旅役者仲間と再会したことから自分の立場に疑問を感じて、革命に身を投じ、シモンと敵対する立場になっていく。美弥とほぼ対等の役どころを、月城が凛々しく堂々と演じ切り、もはや風格すら感じさせた。今後、月組の大きな戦力になっていくことは間違いないだろう。

 

旅役者のマドンナ的な存在で、宮廷でのバレエが王妃マリー・アントワネットに気に入られ宮廷のバレエ団への入団が許されるアデマール役が海乃美月。ヒロインというほどの大きな役ではないがマリー・アントワネットを殺害しようとする場面が印象的。「ベルばら」でいえばロザリーのような位置づけの役どころを、海乃が健気に演じた。

 

娘役では白雪さち花が演じたマリー・アントワネットが最も印象的。ナイフを持ったアデマールと対峙する場面での凛とした態度、さらに処刑前の感動的なソロなど、この作品の主役は誰だと思わせるほどの存在感。歴代のアントワネット役者のなかでも初代の初風諄を思わせる圧倒的な貫録だった。ふと「春の雪」の尼役が絶品だったことを思い出した。

 

革命の闘士ロベスピエールは宇月颯。実力派の男役として早くから注目されてきたが、このところようやく相応の役がつくようになってきて嬉しい限り。このロベスピエールも歯切れのいい演技で舞台を締めた。今回はフィナーレでもダンスリーダーとしてのナンバーがあり、切れのいいダンスで魅了した。

 

ほかにもルイ16世の光月るう、プロヴァンス伯爵の貴澄隼人、ネッケルの輝月ゆうまがきっちりとした仕事をした。シモンやジャックの旅役者仲間フィリッポの夢奈瑠音も若手らしい役どころをさわやかに演じていた。ヴィルヌーブ役の蓮つかさのこれからの活躍にも期待したい。

ドラマシティ公演は7日まで、その後赤坂ACTシアターで13日から。

 

さて、4月26日の毎日文化センター「宝塚歌劇講座」に、「グランドホテル」で退団したばかりの貴千碧さんがゲストで登場。その温かい人柄で誰からも慕われた貴千さんらしく、遠くは栃木県や神奈川県、長野県、福岡県、山口県からの参加者もあるなど大いに盛り上がりました。ダンサーとして活躍した貴千さんは、宝塚愛に満ち、男役が好きだったので、退団後も芸能活動はせず後進の指導に当たっていきたいと熱く語ってくれました。そういわず、またどこかの舞台でぜひ活躍してほしい逸材、今後の活躍を期待したいものです。

 

©宝塚歌劇支局プラス4月30日記 薮下哲司

 

 

 

 

 


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