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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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芹香斗亜、スーツアクターに挑戦!アクション・ステージ「MY HERO」大阪公演開幕

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  ©宝塚歌劇団

 

芹香斗亜、スーツアクターに挑戦!アクション・ステージ「MY HERO」大阪公演開幕

 

花組の人気スター、芹香斗亜が主演したアクション・ステージ「MY HERO」(斎藤吉正作、演出)大阪公演がシアター・ドラマシティで開幕した。今回はこの模様をお伝えしよう。

 

子供たちを熱狂させた人気テレビ番組の伝説のスーツアクター「マスクJ」を父に持ち、その父に反抗してトップ俳優にまで上り詰めた青年ノア(芹香)が、スキャンダルで一夜のうちにスターの座から転落、下積みの苦労を知ることによって父親の偉大さに気付いていく…。基本のストーリーは、これからの宝塚を担うとされる期待のスター、芹香にぴったりのさわやか青年の成長物語だ。スーツアクターとしてのアクションシーンもかっこよく決まり、ノアに扮した芹香を中心軸にノアの代役からスターの座にのし上がるテッド役の鳳月杏、若くして事故で亡くなった父親ハル役の綺城ひか理の3人を巧みに配分した脚本も見事だった。せっかくのさわやか感動物語を変身もののスーツアクターの話という事で大枠をアメコミの世界観で形作ったことで全体がやや雑なイメージになり、B級グルメ的な安っぽさが強調されてしまったのが残念だったが、それが面白いという人もいるし人さまざま、役が豊富で老人から子供まで出演者全員がいろんな役で活躍できたのも救いだった。

 

芹香は星組から花組に組替えになって早くも5年。二番手としての経験もしっかりこなし、満を持しての主演作となった。冒頭の記者会見でのモノローグを交えながらの鼻持ちならないスターぶりが、実に感じが出ていた。嫌みなスターを演じているのにかっこいい、まさに本物のスターオーラだった。仕事を干されてからも当初はひねくれていたが、老人ホームでボランティアをしているマイラの一言で、徐々に心を開いていくあたりも納得のいく演技だった。スーツアクターのアクションもマスクをつけているのになかなかかっこよく決まり、危機に瀕したお姉さん(美花梨乃)が「マスクJ」と客席にも呼びかけるようにあおると母親世代の女性たちが童心に返って一斉に「マスクJ」を呼び、芹香が登場してポーズをつけるたびに客席から大きな拍手が起こるのも楽しかった。

 

鳳月はノアのスタントマンだったが、ノアの代わりに主役に抜擢され一躍人気スターになるテリー役、仕事にはハングリーだが大学の医学部で勉強する妹セーラ(茉玲さや那)想いの心優しい青年という設定。芹香と並ぶと身長の差が目立つが、芝居心のある豊かな演技は鳳月ならではで、前半の大きなウェートを占めた。

 

ノアの父親で伝説のスーツアクター、ハルに扮した綺城は、回想にしか登場しないのだが、これがなかなかの儲け役。スーツアクションも実は一番シャープで、クライマックスの手紙の場面でも親子の情愛を巧みに表現、観客の紅涙をしぼった。

 

ヒロインはマイラ役の音くり寿だが、干されたノアがマネージャーに雇う元テニスプレイヤーでグラビアアイドルだったというクロエ役の朝月希和が、これまでのイメージを払しょくする弾んだ女の子を好演。ノー天気でありながら一途なところもあり、何とも魅力的。ノアに扮した芹香とのとぼけたコンビぶりも面白かった。音のマイラ役が、どちらかというと優等生タイプなので、ノアとのハッピーエンドを交代してほしいと思ったぐらいだ。音は、歌はさすがに抜群で、思わず聞き惚れる美声が強みだが、身長が低いのと表情にまだ幼さが残り、大人の役を演じても子供っぽくみえてしまうのがこれからの課題か。

 

ノアを敵視するスマイル役をアメコミ風にオーバーに作りこんだのは天真みちる。いうまでもない宝塚きっての芸達者で、今回も天真らしい存在感をまきちらした。妻役の乙羽映見、ジュニア役の矢吹世奈の迷トリオはこの舞台の大きなアクセントで客席を笑いの渦に巻き込んだ。ただ、スーツアクター時代にノアの父親に主役を奪われたことを根に持つあまり世界征服を企む新興宗教の祖になるという展開はあまりにも荒唐無稽で、主筋が感動的なだけにやや浮いた感じもしないではない。もちろんこれは脚本の問題で出演者のせいではない。

 

スマイルに立ち退きを迫られる老人ホーム「ネバーネバーランド」の職員や住人たちも大きな存在で、院長の華雅りりかを筆頭に冴月瑠奈らの住人たちが老け役で熱演する。それはそれで一人一人が個性たっぷりに演じこんでいて面白かったが、若手ばかりの公演で老人ホームというのはやや酷な設定、ここはカルチャースクールとかパソコン教室とか若手を活かす場所であってもよかったかも。そんななかで回想場面のジェイなどを演じた聖乃あすかの美貌がいろんな役で映えていた。

 

©宝塚歌劇支局プラス4月5日記 薮下哲司

 

 

 

◎…「毎日文化センター(大阪)」では「薮さんの宝塚歌劇講座」(講師・薮下哲司)2017年春季講座(4月~9月)の受講生を募集中です。毎月第4水曜日の午後1時半から3時まで、大阪・西梅田の毎日新聞社3階の文化センターで、宝塚取材歴35年以上の薮下講師による最新の宝塚情報や公演評、時にはOGや演出家をゲストに招いてのトークなど、宝塚ファンなら聞き逃せない楽しい講座です。初回の4月は26日が開講日。7月には宝塚大劇場での観劇会も予定しています。ふるってご参加ください。受講料(6回分18150円)。詳細問い合わせは☎06(6346)8700同センターまで。

 

★4月26日のゲストは元月組、貴千碧さんに決定!

 

4月26日の第一回目の講座に「グランドホテル」で退団したばかりの元月組スター、貴千碧(たかち・あお)さんがゲストで来ていただけることになりました。退団後、初登場の貴千さんに宝塚時代の思い出や退団後のことなどをたっぷり語っていただきます。

この回だけの特別会員(3500円+税)を先着30人のみ募集します。申し込みは☎06(6346)8700までお申し込みください。

 


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