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永久輝せあ、早くもスターオーラ満点!雪組公演「私立探偵ケイレブ・ハント」新人公演
雪組公演、ミュージカルプレイ「私立探偵ケイレブ・ハント」(正塚晴彦作、演出)新人公演(樫畑亜依子担当)が25日、宝塚大劇場で行われた。今回はこの模様をお伝えしよう。
早霧せいな、咲妃みゆの息の合った好演と望海風斗はじめ雪組メンバーの見事なアンサンブルで、大劇場につめかけた満員のファンを魅了している正塚氏久々のヒット作「私立探偵―」の新人公演は、研6のホープ、永久輝せあと研5の星南のぞみが中心。永久輝の清新で的確な演技で、早霧とはまたちがった魅力的なケイレブ像が浮かび上がったが、雪組新人公演メンバーが小さい役まで全員が生き生きとしていて、勢いのある組のパワーをまざまざとみせつけた。
「ケイレブ―」は1950年代中盤のロサンゼルスを舞台にした私立探偵もの。レイモンド・チャンドラーやロス・マクドナルドといった当時流行のハードボイルド小説の雰囲気をたたえながら巧みに宝塚風にアレンジしたラブサスペンスだ。主人公ケイレブがたまたま女優の殺人現場に居合わせたことから、事件にかかわることになるが、基本はケイレブと長年交際している恋人イヴォンヌとの恋の行方。その辺のバランスがうまくて、新人公演は、人をみなければいけないのだが、永久輝の好演もあってついつい話の面白さに没入してしまったほど。まさしく正塚氏の手練れの技か。
正塚氏ならではの自然体の台詞が全体に横溢していて、演技者の資質を問うにも格好の舞台。「ルパン三世」「るろうに剣心」以来3度目の主演となった永久輝は終演後の会見では「やり残したことがいっぱいあって」と本人評価は「60点」と辛口だったが、オープニングのダンスからかっこいいことこの上なく、自然体の台詞を、きちんと自分のものとして咀嚼して演じていて感心させられた。なにより、整った容姿と立ち姿のすっきり感は際立っており、センターがこれほど似合うスターも珍しい。歌や台詞の口跡がはっきりしているのも心地よい。本役の早霧の絶妙の軽さと独特の都会的センスにはまだまだ及ばないが、未熟ながらも今できる最大限の力は十分出し切っていた。まだまだ可能性を秘めており、今後楽しみな逸材だ。
一方、相手役イヴォンヌ(本役・咲妃)の星南のぞみは、新人公演ヒロインは「ルパン三世」のマリー・アントワネット以来2度目。可愛さは抜群で、現代的な洗練された感覚も滲み出て、雰囲気作りはよかったが、演技をやや取り違えているふしがあって、みていて少々じれったかった。永久輝との息がうまく合ってないところがあり、歌も不安定ではらはらさせられた。自然体の台詞は、普通に演じればいいというのではなく、芝居として作りこんだうえで、自然体に見せなければ舞台では通用しない。このあたりの作り込みがまだ浅い。後半、アパートの部屋で、ケイレブにパーティーの招待状を渡すくだりは、芝居がかった場面なので、感情がこもって非常によかったので、前半の自然体の演技をさらに磨いてほしい。
探偵事務所仲間のジム・クリード(望海)は、研7の実力派、真地佑果、カズノ(彩風咲奈)には研2の縣千が抜擢された。真地は、最近では「ルパン三世」新人公演の次元(本役・彩風)が印象的だったが、個性的な役で光る逸材。今回はそんな蓄積を一気に花開かせたかのように生き生きとジムを演じ、後半のソロなど本役の望海が、そこにいるような錯覚に陥るほどうまかった。縣は、物おじしない自由奔放な物腰とはっきりした台詞で研2とは思えない大物ぶり、すっきりした立ち姿も好印象で、これからの活躍が大いに期待できそうだ。
警察グループのホレイショー(彩凪翔)は諏訪さき(研4)。ライアン(永久輝)は星加梨杏(研3)。いずれも期待の若手が起用され、いずれも役の雰囲気をよくつかんで好演。いずれも芝居心があり、かけあいの妙もうまくはまった。
ヒール役のマクシミリアン(月城かなと)は橘幸(研7)。今回の新人公演の長で、納得の起用、物語のもう一方の要でもある大役を堂々と演じ切った。東京公演では延長線上でさらにスケールの大きな悪を見せてほしい。ケイレブの戦友ナイジェル(香綾しずる)は叶ゆうり。本役の香稜にならって、不敵な存在感をうまく出していた。
探偵事務所メンバーもチームワーク抜群だったが、トレバー(縣)の彩海せら(研1)のぶっ飛び感に注目。
娘役ではジムの恋人レイラ(星南)に彩みちる(研4)。殺される女優アデル(沙月愛奈)が、星組への組替えが発表されたばかりの有沙瞳(研5)。その親友ハリエット(星乃あんり)に妃華ゆきの(研7)歌手のポーリーン(有沙)が羽織夕夏(研3)といった配役。
どの役も出番は似たようなものだが、役としては回想シーンがあるアデルがしどころのある面白い役。有沙がクセのある女優役を印象的に演じてポイントをあげた。羽織は「紳士は金髪がお好き」など2曲を歌うが、演出だろうが歌がべたついていまいち印象はよくなかった。
とはいえ全体的にはセンターの永久輝の輝くスターオーラですべてはうまくまとまった感のある新人公演。アパートの管理人(沙羅アンナ)や空港職員(蒼井美樹)など脇に至るまで生き生きとした感じが好ましかった。
©宝塚歌劇支局プラス10月26日記 薮下哲司
○…星組公演「桜華に舞え」「ロマンス」のご好評に応え、宝塚のマエストロ、薮下哲司と宝塚歌劇を楽しむ観劇会の第2弾「宝塚歌劇雪組公演イン中日劇場特別鑑賞バスツアー」(毎日新聞大阪開発主催)を、来年2月8日(水)に実施します。
今回は午前8時、西梅田から観光バスで出発、早霧せいな、咲妃みゆ、望海風斗主演の雪組公演「星逢一夜」「Greatest HITS‼」12時の回を名古屋・中日劇場のA席で観劇、幕間に昼食(弁当)をとり、終演後にはノリタケの森のレストランでアフタヌーンティー(軽食付き)を飲みながら薮下哲司が公演を解説、午後7時半ごろに大阪に帰着という日帰りツアーです。
参加費は22500円(消費税込み)。先着40名様限定(定員になり次第締め切ります)チケット難が予想される公演です。早めのご予約をおすすめします。
詳細・問い合わせは毎日新聞旅行☎06(6346)8800まで。