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北翔海莉 退団前のファンサービス公演「One Voice」開幕
11月20日東京公演千秋楽をもって退団することになった星組トップの北翔海莉を中心としたコンサート、歌声をひとつに…「One Voice」(岡田敬二構成、演出)が3日から宝塚バウホールで開幕した。今回は、東京公演がなく公演回数も多くないことからプラチナ公演となったこの公演の様子をお伝えしよう。
「One Voice」は、歌唱力だけでなくタップや楽器演奏などなんでもござれのエンタテイナー、北翔の魅力のすべてを見てもらおうという趣旨のコンサートではあるのだが、北翔と共に退団する相手役の妃海風はもちろん専科から夏美よう、美城れんが特別出演、さらには礼真琴を筆頭に若手スターも大挙出演、彼らのための場面もしっかりと用意してあって、北翔はそれを見守りながら客席をも巻き込んで楽しいステージを進行していくといった最初から最後まで温かい雰囲気に包まれたコンサート。北翔のワンマンステージを期待すると肩すかしを食うかもしれないが自分を見せながら周囲にも気遣ったいかにも北翔らしいコンサートだった。
宝塚の曲は一切なく第一部はカーペンターズから始まってサイモンとガーファンクルなどの懐かしいポップス、第二部は「美女と野獣」や「サウンド・オブ・ミュージック」などのミュージカルからの曲を中心にした選曲、全体に60年代から90年代までの懐メロ31曲で構成されている。
幕が開くと誰もいない舞台にエレキギターの旋律が流れる。一瞬、観客に時空がタイムスリップしたかのような錯覚を覚えさせたあと舞台中央に赤い燕尾を着た北翔が登場。主題歌「One Voice」を歌い上げると、続いて男役が白燕尾、娘役が白いドレスと白で統一した衣装で全員がラインアップ。古き良き時代を再現するかのような華やかなオープニングに展開していく。
あいさつの後、北翔が残ってカーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」を軽快に歌い始め、コンサートが始まる。続いて妃海がカーペンターつながりで「トップ・オブ・ザ・ワールド」を歌ってつなぐ。一方、礼はサイモンとガーファンクルの「スカボロー・フェア」続いて美稀千種らで「ミセス・ロビンソン」そして北翔が「サウンド・オブ・サイレンス」と映画「卒業」のメドレー。こんな感じで北翔はほかに「ジョニー・ビー・グッド」や「ステインアライブ」サックス演奏で「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」を披露、そしてボサノバの名曲「マシュケナダ」を全員で歌い踊って一幕の幕をとじた。美城のソロや夏美のダンス、礼と妃海の「この胸にときめきを」も印象的。
第二部はブギワンダーランドから華やかに幕開け。夏美のスペシャルパフォーマンスのあとはソウルトレインを思わせる北翔たちのアフロヘアーの場面など80年代ムードが横溢。続いて客席を巻き込んでの振付指導に発展。「肩こりフィーバー」では北翔が、客席に向かって隣同士、肩をもんだり、たたいたりする振りを指導、会場の雰囲気が一気にほぐれた。
場面変わって、北翔と妃海がディズニーの定番「美女と野獣」を披露。続いて「サウンド・オブ・ミュージック」の「もうすぐ17歳」をチロル風の衣装で礼と真彩希帆がデュエットしたのが何ともかわいかった。「アニーよ!銃をとれ」の名ナンバー「エニシング・ユー・キャン・ドゥー」には北翔と妃海が挑戦。息の合ったコンビぶりで笑わせ楽しませた。続いて「オクラホマ!」の大合唱へと展開。盛り上がったところで美城がドレス姿で登場、映画「タイタニック」の主題歌を熱唱。続いて北翔が「幸せを見つけられるように」をしっとりと歌ってコンサートを締めくくった。アンコールはゴスペルナンバー「ジョイフル、ジョイフル」で大いに盛り上がった。カーテンコールはもちろんオールスタンディング、北翔が「みなさん最高!千秋楽までもっと進化するように頑張ります」とあいさつ、タカラジェンヌ北翔の最後のひと時を堪能しようというファンの熱気むんむんのコンサートだった。
©宝塚歌劇支局プラス7月6日 薮下哲司記