望海風斗×真風涼帆 相次いでコンサート開催
雪組のトップスター、望海風斗と元宙組のトップスター、真風涼帆が、相次いでコンサートを開いた。望海は退団後4年、すでに様々な舞台で主演を演じており、いまや日本を代表するミュージカルスター、一方、真風は昨年退団したばかり、退団後初のコンサートとなった。
望海のコンサートはDramatic Concert 「Hello、FUTO NOZOMI」のタイトルで演出、振付は宝塚のショーや芝居を数多く手がけているダンサーの桜木涼介。3月20日の日本青年館を皮切りに4月28日の大阪・SkyシアターMBSまで全国4都市を回った。大阪公演の初日を観劇した。
一方、真風の退団後初コンサートは「UNKNOWN」のタイトルで構成、演出、振付はこちらも宝塚のショー場面を数多く担当しているKAORIalive。4月5日から東京国際フォーラム、同19日から22日まで梅田芸術劇場メインホールで開催、こちらも大阪公演初日を観劇した。
どちらも基本的に本人ひとりがメインでアンサンブルメンバーが出演するコンサートだが、日によってゲストが入り、望海の場合は東京で上原理生、大阪では花組時代に仲間だった朝夏まなと。真風も東京公演千秋楽に宙組時代の先輩、朝夏、大阪公演千秋楽には星組三兄弟、柚希礼音と紅ゆずるが特別出演、真風千秋楽はライブ配信もされた。
望海のコンサートは、退団後二度目ということもあるが、平井堅の「Pop Star」から始まって、カーペンターズの「Top Of the World」などのJポップや洋楽メドレーなど幅広い選曲、沢田研二の「勝手にしやがれ」から男役にスイッチして宝塚時代の代表作の一つ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」一幕終わりの「愛に枯れない」とつづけるあたりはなかなかの構成。「ワンス」からは桜木振付のスタイリッシュなダンスシーン「摩天楼のジャングル」の男性ダンサーをバックにして再現、これは見ごたえ抜群だった。
後半は先ごろ主演したオリジナルミュージカル「イザボー」から「Queen of the Beast」を熱唱。「DREAMGIRL」「ムーランルージュ」と退団後に出演した大作ミュージカルでつないだ。「ワンス」はコロナ禍で大部分の公演が中止になったこともあっての再現だったが、昨年秋に雪組100年イベントに出演、一瞬で男役にスイッチできる自分を発見出来たことからの挑戦だったという。いずれにしても退団後も女優として第一線の活躍を続ける望海らしく歌にダンスに充実したコンサートだった。
アンコールの一曲目に選んだ新曲「breath」(アンジェラ・アキ作詞、作曲)は「昨秋の衝撃的な出来事で胸を痛めていた時、何も言えない悩みを聞いてくださったアンジェラさんが作ってくださった」そうで望海の現在の心象風景を表現、聴くものの心を揺さぶった。
一方、退団後初コンサートとなった真風は、未知の世界への第一歩という意味合いもこめてのタイトル通り、全体を4つのコーナーに分けて、未来へはばたく真風をみてもらおうという構成。
「Gradiation(グラディエーション)」と位置付けたオープニングは「NEVER SAY GOODBYE」から「One Heart」から。「オーシャンズ11」の「フェイトシティ」そして「カプリチョーザ」などの宝塚メドレーで盛り上がった。
MCのあとは「New World」のコーナー。ここではKポップのBTS のナンバー「Permission to Dance」を客席のファンを巻き込んで展開。
三番目は「Galaxy」。宝塚時代のコンサート曲「Fly with Me」からはじまってミュージカル「NINE」のポップなナンバー「シネマイタリアーノ」そして「ガイズ&ドールズ」から「ラックビーアレディ」でスタイリッシュに決める。
最後のコーナーは「Alive」。シシャモのヒット曲「明日も」からこのコンサートのための新曲「UNKNOWN」そしてラストソングは「ケセラセラ」で締めくくった。
各コーナーの合間にメンバーとのトークがあって真風とメンバーの和やかな時間が繰り広げられたが、全体としてはまだまだ宝塚のトップ時代を引きずっていて男役から女優への通過点という印象。退団後のトップスター誰もが通る道ではあるが、客席は宝塚からのファンで占められ、男役真風の残り香を見たいファンばかり。そんなファンが納得する女優真風を今後いかに見せられるかこれからの課題だろう。
望海×真風、好対照のOGコンサートだった。
©宝塚歌劇支局プラス4月26日記 薮下哲司