天城れいん、オーラ漂う余裕の初主演、花組公演「鴛鴦歌合戦」新人公演
花組期待のスター、天城れいん初主演によるオペレッタ・ジャパネスク「鴛鴦歌合戦」
(小柳奈穂子脚本、演出)新人公演(菅谷元担当)が、27日、宝塚大劇場で行われた。全編が軽妙な歌の掛け合いと芝居の間で展開するオペレッタを天城はじめ花組若手メンバーが生き生きと体現、本公演に勝るとも劣らない楽しい舞台を作り上げた。
主人公の貧乏浪人、浅井礼三郎(柚香光)に扮した天城は104期生。本公演では希波らいと(全公演休演)が演じる予定だったおとみ(星空美咲)の丁稚、三吉を演じていてウソのつけない純真な若者をさわやかに好演しているが、新人公演の礼三郎も甘いマスクに着流し姿がよく映え、声もセリフ回しもお手本にした本役の柚香そっくりに仕上げ、立ち位置のセンターがよく似合うスターオーラのようなものを匂い立たせた。前回の「うたかたの恋」新人公演では水美舞斗が演じたルドルフの親友ジャン・サルバドルに起用されており、新人公演主演は想定通りのステップとはいうものの、ここへきて一気にエンジンがかかったようだ。
柚香はじめ本公演メンバーが楽々と歌い演じているので気づきにくいが、実はこの芝居、見ている方が思う以上にかなり難しいものであることが新人公演を見てよく分かる。しかし、その難しさをよくクリアして破綻のない舞台に仕上げた新人公演初担当の管谷氏の演出力と天城はじめ花組新人公演メンバーのまとまりのよさに感服させられた。
その功労者のひとりは相手役のお春(星風まどか)を演じた103期の朝葉ことのだろう。芝居の巧さはバウ公演「絢情」の春琴役や前回の「うたかたの恋」新人公演でのエリザベート役で実証済みだったが、ヒロインとしては地味かなあ思っていたのだが、新人公演初ヒロインとなった今回は、闊達な町娘が体にしみこんでいて、共演の天城との掛け合いの妙も抜群、化粧もずいぶん垢ぬけしていて見違えるようなキュートさ、鮮やかな変身ぶりで最後の新人公演を飾った。実質、舞台を動かす役どころなので彼女の存在が舞台の底上げにも大きく貢献したと言えそうだ。
ほかに骨董集めが趣味の峰沢丹波守(永久輝せあ)の美空真瑠(105期)もコミカルな殿様を芝居心十分に表現、その弟、秀千代(聖乃あすか)の鏡星珠(106期)の笑顔いっぱいの若々しさにも注目した。
一方、和海しょうが演じているお春の父、志村狂斎を演じた海叶(かいと)あさひ(103期)の娘思いの滋味豊かな好々爺ぶりが絶品。その志村を翻弄する道具屋六兵衛(航琉ひびき)の涼葉まれ(103期)も嫌味なく作りこみ、持ち味を生かした好演だった。
娘役では専科の京三紗が演じている丹波守の母、蓮京院の詩季すみれ(103期)が、新人公演とは思えない見事な佇まいで巧演したほか、ヒロイン経験豊富な星空(105期)が丹波守の正室、麗姫(春妃うらら)に扮して物語をしっかりと締めくくり、礼三郎をめぐる二人の娘、おとみ(星空)の愛蘭みこ(104期)の屈託のない明るさ、藤尾(美羽愛)の七彩はづき(107期)のコミカルな思いつめと二人もそれぞれ適役好演だった。美羽(104期)の道具屋の店員、七緒役(朝葉)も彼女ならではの膨らませた演技が面白かった。
藤尾の父で綺城ひか理が演じている遠山満右衛門の夏希真斗(105期)の親ばかぶりも見ていて微笑ましく、丁稚・三吉(天城)役の宇咲瞬(106期)の初々しくフレッシュな感じはまさに新人公演そのものだった。
開幕早々登場する瓦版売りの二人組、遼美来(りょう・みくる=106期)と月翔(つきしょう)きら(106期)の歌とセリフにパワーがあり、出演者が隅々まで生き生きとしていて最後まで気持ちのいい新人公演だった。遼は幻想の平敦盛役(帆純まひろ)でも美形ぶりを発揮していた。
©宝塚歌劇支局プラス7月28日記 薮下哲司