Quantcast
Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
Viewing all articles
Browse latest Browse all 575

礼真琴、2022年有終の美、星組公演「ディミトリ」千秋楽

$
0
0

©️宝塚歌劇団

 

礼真琴、2022年有終の美、星組公演「ディミトリ」千秋楽

 

 礼真琴を中心とする星組よる浪漫楽劇「ディミトリ~曙光に散る、紫の花」(生田大和脚本、演出)メガファンタジー「JAGUAR BEAT―ジャガービート」(斎藤吉正作、演出)が13日宝塚大劇場で千秋楽を迎えた。長い入院生活で初日を観劇できず、新人公演から観劇するという逆パターンになってしまったが先日、本公演を無事観劇、千秋楽も観劇することができた。

 

 「ディミトリ」は、13世紀前半東ヨーロッパの小国ジョージアを舞台にした物語扮するディミトリは、隣国ルームセルジュークの4王子。友好の証しとして人質としてジョージアの王宮で育ちジョージア国王ギオルギ(ひか理)の妹、ルスダン(舞空瞳)とは幼いころから心を寄せあっていたしかし、平和な日々は突如来襲したモンゴルのチンギス咲玲央軍勢によって破られる。国王ギオルギが瀕死の重傷を負い、ルスダンを女王、その王配にディミトリをという遺言を残して世を去る。二人にとっては思いがけない幸せだったが、そのことが国の実権を握る副宰相アヴァク(暁千)らの反発を招きさらにはジョージアと同じくモンゴルに侵略され国土を失った亡国ホラムズの帝王ジャラルッディーン(瀬央ゆりあの侵攻も相まって、二人の前途思いがけない人生が待ち構えていた。

 

 並木原作の「斜陽の国のルスダン」をもとに生田氏が脚本化、次々と目まぐるしく展開するストーリーを物乞い(美千種進行役にわかりやすく説明、最後まで目の離せないドラマチックな舞台に仕上げている。「今夜、ロマンス劇場で」から始まった2022の大劇場新作群の中でも「蒼穹の昴」に並ぶ出来栄えといっていい。

 

 本来ならハッピーエンドになる二人が、戦争によって引き裂かれ流転の人生に流されていくという展開がまさに今日的で、しかも舞台がジョージアという場所であることも含めて、2022最後を締めくくるにふさわしい作品だった

 

 内容もさることながら宝塚歌劇としての見せ場も心得たもので、まず生田氏が魅せられたというジョージアダンス戦闘場面効果的に使ったほか、礼舞空トップコンビはじめ瀬央とこの公演から星組大劇場公演に参加した暁のバランス、そしてこの公演が星組最後となる綺城白人奴隷イル役の極美慎の起用法などまことに的を得ていてそれぞれの個性が生かされているのが見ていて気持ちがよかった。

 

ディミトリに扮したには陰のある王子という役柄がぴったりあって、後半の大きな山場もしっかりと見せ抜き男役としてもさらにグレードアップした感。ルスダン舞空は、無垢な少女からは母として女王として成長していく様を丁寧に表現見事なヒロイン芝居をみせてくれた。

 

 帝王ジャラルッディーン央の鮮やかな登場ぶりと貫禄そして副宰相アヴァクに扮した暁のディミトリへの嫉妬からくる狡猾さの表現なかなか見事で、最後に翻意ルスダンに忠誠を尽くすという誓いの言葉に力強さがみなぎった

 

 国王ギオル綺城の見事な包容力、その妻バテシバの有沙瞳も好演。ただ有沙の出番があまりにも少ないのは残念だった。白人奴隷ミレイ美はワンポイントだ個性を生かした役どころで印象的だった。

 

 ほかにジャラルッディーンの側近ナサウィーに扮した天華えまも目に焼き付いた。娘役はタマラ王女に抜擢されたひよりのほかは小桜ほの、瑠璃花夏、詩ちづるがリラの精、ゆりが女官長というのはちょっと贅沢だった

 

とはいえ美稀扮する物乞い支配するこの舞台、おおいに見ごたえがあったといっていいだろう。

 

ジャガービート」は、礼をジャガーに例えてノンストップで走りまく体力勝負ショー。オープニングに暁が登場、ラインダンスが前半にあったり燕尾服の群舞のあとにはデュエットダンスという定番を外したつくりで、綺城青、暁が黒、赤が天華、白が極美と衣装も脱オーソドックス、それはそれで面白いが、あまりのスピード感に見る方が疲れてしまった

 

暁が加入しただけで星組の雰囲気ががらりと変わったのはえらいものと暁のダンスのからみもあってそこは新鮮だったが、芝居の余韻が吹っ飛んでしまうほどのパワフルなショーだった

 

©宝塚歌劇支局プラス1213 薮下哲司記

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 575

Trending Articles