元宙組トップスター、凰稀かなめが、4日大阪市内で会見、退団後初舞台となるミュージカル「1789」(小池修一郎脚本、演出)のマリー・アントワネット役に対する抱負を語るとともに、退団後初めてスカート姿を披露した。
昨年2月に退団してちょうど1年、「男役から徐々に女に戻る訓練をしている最中」という凰稀、スカートをはくのは音楽学校の制服以来とか。「退団してさあ女に戻ろうと、スカートをいっぱい買ったのですが、結局、全然はかず、きょうが初めてです」と膝うえ10センチのミニスカートにちょっと照れくさそう。「何しろ人生の半分以上、男役として生きてきたので、その習慣を拭い去るのはなかなか大変です」と苦笑い。ヘアスタイルは男役当時と変わらずショートのまま。「一度は伸ばそうと思い、伸ばしかけたのですが、ストレスがたまって、また切ってしまいました」よほど男役人生が身に染み込んでいるらしい。そんな時に「1789」のマリー・アントワネット役が舞い込んだ。
「1789」は、昨年、龍真咲を中心にした宝塚月組で日本初演されたフランス革命を庶民の側から描いたフレンチ・ミュージカル。演出の小池修一郎氏が日本向けに翻案したバージョンを、東宝が男女版で上演する運びになり、宝塚では愛希れいかが演じたフランス王妃マリー・アントワネットを花總まりとダブルキャストで演じることになった。
「小池先生から直接電話がかかってきたのですが、びっくりしてすぐにはお受けしますとはお答えできませんでした。でもフランス版や宝塚版の映像を拝見したら、現代的なマリー・アントワネットで、これなら私にもできるかもしれないと思って、しばらく考えたうえでお受けすることにしました」と慎重に受けたことを明かし「『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネットなら断っていたでしょうね」と笑った。
現在は女性らしい高い声を出すためのボイストレーニング中。「男役生活が長かったので、普通にしゃべる声も低くなっているので、いま高い声で話すように矯正しているところ。油断するとすぐに低くなるんです」男役から女優へ、多くのタカラジェンヌOGが通る道のりを今まさに追体験しているところだ。
退団して生活のリズムが一番変わったのは睡眠時間。「在団中は、3時間ぐらいでしたが、退団してゆっくり眠れるようになったことが一番の変化ですね」と在団中のハードさを告白。「私は役を私生活に引きずるタイプで、モンテ・クリストを演じたときは、公演中は部屋を真っ暗にして牢獄生活を疑似体験したり、毎日スープしか飲まなかったりするほどでした」と、役作りのために激ヤセすることもしょっちゅうだったという。
「この一年でようやく普通の生活に戻ってきたかなあという感じだったんですが、マリー・アントワネットを演じることになって、彼女のことを調べているうちにまた神経がとんがってきて、また寝られない日々が来そうです」と笑うが、そろそろまた舞台人魂がよみがえりエンジンがかかってきたよう。「ちょっとでも近づけるように初めてネグリジェを買いました。インターネットでですが」と笑わせた。ポスター撮影では初めてドレスを着たが「素顔メークに真っ赤な口紅をつけるのが恥ずかしくて」まだ台本も出来上がっておらず、いまはとにかく女性に戻ることが最優先課題のようだ。
マリー・アントワネットについては「14歳で嫁ぎ、何もわからないまま王妃になり、不幸な人だったんだなあと思う。そんなアントワネットの人間性が出せればと思う」と抱負。娘役の大先輩、花總とのダブルキャストについては「個性が全く違うので、全然違うアントワネットになると思う。ぜひ両バージョンともご覧ください」と如才なくPRにつとめていた。
東京公演は4月11日から5月15日まで帝国劇場、大阪公演は5月21日から6月5日まで梅田芸術劇場メインホール。
©宝塚歌劇支局プラス2月5日記 薮下哲司