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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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「ポーの一族」舞台化実現までの33年「萩尾望都トークショー」に小池修一郎氏がゲスト出演

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「ポーの一族」舞台化実現までの33

萩尾望都SF原画展「萩尾望都トークショー」に小池修一郎氏がゲスト出演

 

「ポーの一族」「トーマの心臓」などの名作を生んだカリスマ的漫画家、萩尾望都氏のさまざまなジャンルの作品のなかから1975年に発表した「11人いる!」に代表されるSF作品に特化した「萩尾望都SF原画展」が2016年から全国を巡回現在最後の地、大阪あべのハルカス近鉄本店ウィング館4階第2催会場で19日まで開催されている。その最終日前日の18日、宝塚歌劇団演出家の小池修一郎氏をゲストに迎えて萩尾望都トークショーが開かれた。会場は熱心なファンで満員の盛況だった。

 

全国各地で開催されてきたこの展覧会、コロナ禍で中断を余儀なくされ最後の地、大阪まで6年もかかる長丁場となったが、ようやく最終の地に到達、大阪だけのスペシャル企画として「百億の夜と千億の昼」より新たなカラー原画と漫画原稿の展示があるなどファンなら見逃せない原画展となった。

 

そしてこの6年の間に「ポーの一族」の連載再開と念願の宝塚での舞台化があり、萩尾望都という名前がさらに大きくクローズアップされた6年間でもあった。SF原画展のトークショーではあるものの、萩尾氏たってのリクエストで小池氏を指名、小池氏も多忙なスケジュールを調整して駆けつけ、豪華な顔合せのトークショーが実現した。

 

甲南女子大学メディア表現学科で少女漫画を研究されている増田のぞみ教授の司会で始まったトークショー、まずは原画展の目玉「百億の夜と千億の昼」創作のきっかけからスタート。主人公の阿修羅を少女と設定したことに対して小池氏「宝塚をご覧になっていたことからの影響でしょうか」と質問萩尾氏は1960年代、中学、高校の3年間、大阪・吹田市に住んでいたことがあり、その時に「霧深きエルベのほとり」など何回か宝塚を観劇しているのだとか、そこで宝塚が萩尾作品に影響を与えているのではないかという質問だったのだが萩尾氏は「宝塚のスケールの大きさ、美を追求する姿勢は素晴らしく大好きです」と答えたが「私のイメージとしては手塚治虫さんのメトロポリスにでてくるヒロインの影響が強かったと思う」と答えて小池氏をがっかりさせる一幕も。「でも手塚さんは宝塚に大きな影響を受けていらっしゃるので、手塚さんを通して宝塚の影響を受けていらっしゃることにしましょう」と強引にこじつけて会場のファンの笑いを誘っていた。

 

小池氏と萩尾氏の出合いは1985618日。東京宝塚劇場での花組公演「哀しみのコルドバ」新人公演終了後の帝国ホテルの喫茶室で偶然となり合わせになったことからだった。この時のことはすでに、いろんなところで小池氏が語っているが、その後、後日談があったことがこの日明らかに。萩尾氏が舞台の脚本を依頼された時、小池氏からもらった名刺を思い出し「この人なら」と台本の手直しを依頼したのだが、小池氏は送られてきた台本を見て「絵とセリフが混在、意味不明でどうご返事しようかと思っていた時に、その台本を落としてしまい前後が分からなくなって」そのままになってしまったのだとか。そんなこんなで萩尾氏との交流が続き「いつかポーの一族の舞台化を」と約束、33年が過ぎた。

 

「ポーの一族」舞台化が実現したのは2018年正月。「明日海りおという14歳のエドガーを演じることができるスターが出てきてくれたからできました。33年待っていた甲斐があったと思う」と小池氏。萩尾氏も「本当に待っていた甲斐があましたね」と明日海エドガーのすばらしさを称賛。小池氏はまた当時の花組のメンバーが「ポーの一族」を舞台化するにあたって適材適所であったことも成功の原因だったと分析していた。

 

宝塚公演後の男女版上演について、萩尾氏は「宝塚版はファンタジーとしてよかったけれど男女版も現実味があってまた違った良さがありました。本当にありがとうございました」と両方のバージョンに満足されている様子だった。

 

2人のトークはそのほかにもいろんな分野におよび約二時間たっぷり。今後の二人の予定としては、萩尾氏が「ポーの一族」の続編でアランをどう生き返らせるか現在秘策を練っているところと、そのアイデアの一部を披露、集まったファンから大きな拍手がわきおこった。一方、小池氏は来年4月、宙組の真風涼帆がジェームズ・ボンドに扮する007シリーズ第一作「カジノロワイヤル」宝塚版演出が決定。「ダニエル・クレイグがボンド役を卒業、次回作のボンドが誰になるかまだ分からない時に宝塚でやるという発表があったので、次回作のボンドは女性が演じる男役というニュースが全世界的に流れたみたいで注目度の高さに驚きましたが、最近のハイテクな007ではなくショーン・コネリー的なアナログな世界を再現したい」と構想を話していた。

 

©宝塚歌劇支局プラス918日 薮下哲司記

 


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