珠城りょう、退団後初コンサート「CUERO」開幕
星組宝塚大劇場公演が関係者に新型コロナ感染者が出て5月5日まで中止になるという衝撃のニュースが流れた30日、元月組トップスター、珠城りょうの退団後初コンサート「CUERO」(川崎悦子作、演出、振付)が、梅田芸術劇場シアタードラマシティで開幕した。昨年8月に「桜嵐記」「Dream Chaser!」で宝塚を退団、OG公演のゲストなどに出演はしていたが、自身の本格的なコンサートは退団後初となった珠城、髪はずいぶん伸びたが、男役の雰囲気はまだまだ濃厚に残し、いまの珠城をみてもらおうという趣旨で、自作の新曲やミュージカルの楽曲、Jポップ、もちろん宝塚の曲も含めた幅広い選曲で、新たな珠城の魅力を見せつけた。
珠城がタイムマシン「Cuero」号のチーフパーサーという設定で、観客を1時間40分の時間旅行に案内するという趣向。オープニングは近未来。黒光りのするロングコートで登場、7人のダンサー陣を引き連れて「アメイジング」をハードにそしてダンサブルに披露。すっかり熱くなったところでコートを脱いで純白のパーサーとしての衣装に早変わり、続く2曲目は自身が作詞作曲したというオリジナル「This Heart&Soul」を熱唱。よく伸びる滑らかな歌声は、宝塚時代よりも一段とつやが増し、久しぶりのステージを思う存分楽しんでいる感じが伝わった。
次は1930年代アメリカにワープ、スイングジャズなどを歌い踊ったあとは珠城が研1くらいの宝塚に。通常パターンはここで珠城が宝塚メドレーを歌うのだが初日はスペシャルゲストの元雪組・彩凪翔が登場。稽古場で彩凪が歌の稽古をしているところに珠城が燕尾服姿であらわれるという設定。彩凪は珠城の二期上級生、組が違ったので共演はしたことがないというが、仲が良くお互い芸熱心なこともあって、よくいろんなことを相談していたという。一緒には出ていないが共通の作品「Jin」の話で盛り上がり、二人ともやりたかったが在団中かなわなかったという、とっておきの宝塚の主題歌をデュエットで披露した。
共演のダンサー陣7人のなかでOGは同期の風馬翔一人だけ。上口耕平ら男性陣も交じったメンバーというのが退団後のコンサートということを実感させるが、在団時と何も変わらない珠城のリラックスした舞台姿をみているとなんだか不思議な感覚のするコンサートだった。休憩なしで一気に駆け抜け「久しぶりのステージで改めて歌うこと踊ることが大好きだと実感しています。すごくハードですが楽しすぎて苦にならないんです。この楽しい時間を皆さんと一緒に共有して頂けて本当に幸せです」と珠城。久々の舞台に充実感があふれていた。大阪は5月3日まで、5月13日から15日まで東京国際フォーラム。ゲストは元星組の愛月ひかる。愛月も退団後初舞台となる。
一方、この日、宝塚ホテルでは元花組のトップスター春野寿美礼のトークライブがゲストに元雪組の娘役トップ真彩希帆を迎えて行われた。宝塚が生んだ二人の歌姫、春野と真彩は昨年、ミュージカル「ドン・ジュアン」で共演、春野のたってのリクエストで実現したのだとか。
新装なった宝塚ホテルの初登場となった春野、紫色の豪華なドレス姿でまずはミュージカル「レベッカ」の同名主題曲を披露してスタート。「レ・ミゼラブル」からファンテーヌが歌う「夢やぶれて」と春野ならではの選曲に聴き惚れる。
真彩は「マリー・アントワネット」から「100万ドルのキャンドル」で登場。ファン時代から大ファンだったという春野とひとしきりトークで花を咲かせた後、二人の宝塚時代の共通の作品、ミュージカル「ファントム」から「HOME」をエリック春野、クリスティーヌ真彩の新旧コンビでデュエット。これはファンならずとも聞き逃せない見事なビッグプレゼント。この一曲だけで十分というほどの素晴らしいデュエットだった。
春野はさらにミュージカル「MOZART!」から極めつけ「星から降る金」を熱唱、ますます充実した歌唱で魅了した。トークライブということでトークを含めて約1時間の短いショータイムだったが、聴きごたえ十分、至福の一時間だった。東京は元雪組トップスター、望海風斗をゲストに迎えて5月7日に第一ホテル東京で開催される。
珠城のコンサート、春野のトークライブともにライブ配信があり、貴重なライブが気軽にどこでも見られる世の中になった。コロナ禍が生んだ唯一の恩恵といえそうだ。ともあれ星組公演の早期再開を祈りたい。
©宝塚歌劇支局プラス4月30日記 薮下哲司
↧
珠城りょう、退団後初コンサート「CUERO」開幕
↧