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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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礼真琴主演、星組公演「王家に捧ぐ歌」リニューアルバージョン

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©️宝塚歌劇団

礼真琴主演、星組公演「王家に捧ぐ歌」リニューアルバージョン

コロナ感染者が出て初日が延期された星組公演、ミュージカル「王家に捧ぐ歌」(木村信司脚本、演出)名古屋・御園座公演が17日から開幕し27日の千秋楽を前に26日、全国各地の映画館でライブビューイングおよびライブ配信された。

「王家-」はベルディ作曲のオペラ「アイーダ」をもとにストーリーの骨格はそのまま、曲や人物設定などを自由に脚色したオリジナルミュージカル。2003年に星組の湖月わたるのトップ披露公演として初演されその年の芸術祭賞を受賞。その後2015年に宙組の朝夏まなとのトップ披露公演として再演され、今回が3度目の上演。その間に名古屋・中日劇場や博多座でキャストを変えて上演されている。初演でアイーダを演じた安蘭けいが退団後初舞台で、再びアイーダ役を演じて話題を呼んだのも記憶に新しい。

初演当時、2001年のアメリカ同時テロを受けてブッシュ大統領がイラク侵攻を断行したときに重なり、エジプトがアメリカ、エチオピアがイラクと重なって「戦いは新たな戦いを生むだけ」というテーマが生々しく観客に届いたが、今回も何の因果かロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻と公演が同時進行となり、作品のテーマが見るものに重くのしかかった。作品自体、装置や衣装のビジュアルを現代的感覚に一新したことも手伝って、2000年前の物語とは到底思えない現実感が迫り、歌詞やせりふの一言一言が胸に響いた。

今回の装置、衣装のリニューアルはシンプルで斬新、ディズニーミュージカルで劇団四季が上演した「アイーダ」と意匠がよく似ているのが気になったが、金ぴかのイメージだった前回までの公演にくらべてスタイリッシュですっきりした印象。礼のラダメスがトートのような金髪のロングヘアだけでも随分とイメチェンだが、エジプトの軍服は純白の衣装、エチオピアは茶色と黒のイメージで極美慎扮するウバルドなどは黒の革ジャンなどを羽織ったりしてラフな感覚。それらが今この時に見事にはまった。

ラダメスの礼、アイーダの舞空はこの新しい衣装にうまくマッチ、二人の伸びやかな歌声とともに新たな作品世界を生み出した。礼で「王家」と聞いた時は一瞬首をかしげたのだが、二人に合わせた現代的なリニューアルが功を奏したようだ。

しかし、今回の最大の収穫はなんといってもアムネリス役に起用された有沙瞳の充実ぶり。檀れい、伶美うららと続いたアムネリスだったが王女(王妃ではありませんね。失礼しました!)として周囲を圧する堂々たる歌唱と貫禄は舞台を支配するという言葉がぴったりだった。有沙のための公演のような印象すら受けた。

箙かおるが演じてきたファラオを悠真倫、一樹千尋が演じたアイーダの父アモナスロを輝咲玲央が受け継ぎ、それぞれきっちりと務めあげたのも立派だった。

中堅、若手クラスはネセルの天寿光希、アイーダの兄ウバルドの極美、カマンテのひろ香祐、ケペルの天華えま、メレルカの天飛華音が主要キャスト。ファラオを暗殺するウバルドの極美以外は、比較的小さい役ばかりで見せ場も少ないが、それぞれ存在感をアピールしていた。

フィナーレは作品の主題歌をスタイリッシュに歌いつづる構成で、礼の燕尾服のダンスソロの鮮やかなステップがみどころ。パレードは元の衣装に戻り、久々に羽根なしのシンプルなエンディング。礼をはさんで舞空と有沙が並ぶラインアップが珍しかった。

©宝塚歌劇支局プラス2月26日記 薮下哲司

 


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