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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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縣千バウ初主演、雪組若手メンバーと大奮闘!「Sweet Little Rock’n’ Roll」

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©️宝塚歌劇団

縣千バウ初主演、雪組若手メンバーと大奮闘!「Sweet Little Rock’n’ Roll」開幕

彩風咲奈を中心とした雪組東京特別公演「odyssey」がコロナ禍で初日直前に全公演中止という衝撃的なニュースが飛び込んで間もなく、初主演の縣千を中心とした雪組若手メンバーによるバウ・ミュージカル・プレイ「Sweet Little Rock’n’ Roll」(中村暁作、演出)が、予定通り14日から宝塚バウホールで開幕した。

シェイクスピアの「から騒ぎ」を下敷きに、1950年代のアメリカに舞台を移して、ハイスクールに通う若者たちの恋模様をコミカルに描いた青春ミュージカル。ジョン・トラボルタ主演「グリース」(1978年)宝塚版といったところで、1985年に当時の月組の若手メンバーで初演、以来なんと37年ぶりの再演。「マノン」や「Dream Chaser」で活躍するベテラン中村暁氏のデビュー作でもある。

縣が演じた転校生のビリーは涼風真世、夢白あやが演じたシンディーはこだま愛、彩海せらのロバートが桐さと実、音彩唯扮するメアリーが朝凪鈴、眞ノ宮るいが演じた落ちこぼれのロッキーは麻路さきといった配役だった。もちろん涼風もこだまもまだトップになる前、麻路にいたってはまだ研3くらいではなかったかと。ハイスクールの若者たちの他愛ないストーリーだが50年代のヒット曲をふんだんに使ってとにかく若さ弾ける楽しい舞台だった。中村氏によると今回の再演は木場新理事長の発案で実現したものというが、縣をはじめとした雪組若手メンバーが元気はつらつ、初演同様かそれ以上に若さまぶしい楽しい舞台に仕上がった。何しろ出演者全員が初演時にはまだ生まれていなかったというのだから驚き!

中身はほぼ初演と同じだが、音楽をすべて手島恭子作曲によるオリジナルに一新、振付も今風に大幅に刷新したのが大きな変更。これが2022年版リニューアル成功の大きな要因となった。さらに華やかなフィナーレが加わった。

転校生ビリーに扮した縣のシルエットにスポットが当たり、ソロのダンスに展開するオープニングがなんともカッコいい。ハンサムなビリーに、女子生徒は大騒ぎ、男子生徒は面白くない。そんななかで夢白扮するクラスのマドンナ的存在のシンディーだけはビリーを無視、ことあるごとにビリーにつっかかる。ロバート(彩海)とメアリー(音彩)の純情コンビ成立に成功したフットボール部のコーチ、フレディ(真那春人)と教務主任のマクリーン(愛すみれ)は、今度はビリーとシンディーもくっつけようと、生徒を巻き込んで一計を案じる…こんなストーリーがコミカルにテンポよく展開していく。

30人の出演者全員に役があって、何らかのセリフもあり、若手のすみずみまで元気はつらつ、しかもハイスクールが舞台とあってとにかく明るくにぎやか。群像劇としてもなかなかよくできていて、若手発掘にはもってこいの舞台だった。

主演の縣は持ち前のダンス力をふんだんに発揮、オープニングからダイナミックなダンスで見せる。突っ張りながらもそこは高校生、初々しいところもあってというビリーのこの年代にありがちな背伸びした感覚を等身大で体現、さわやかさあふれる好演だった。

相手役の夢白も、華やかな美貌に加えて的確な演技力があり、縣とのセリフの応酬も息があっていてなんとも心地よかった。役によっていろんな面を表現するすべを身に着けてきたようで今後がさらに楽しみだ。

この公演を最後に月組に組替えになることが発表されたロバート役の彩海は、好きな相手に恋の告白もできない純情な青年役をういういしく演じた。金髪がアイドル性豊かな甘いマスクによく似合い、役柄にぴったりだったこともあってなかなかの好感度だった。歌唱力も強みで新天地での活躍も期待したい。

ロバートが恋するメアリーに扮した音彩は、舞台に登場しただけで吸い込まれるような存在感があった。「シティハンター」新人公演のヒロイン役を好演して注目された105期の首席。今回は軽い役でまだまだ未知数だが歌唱力もあり、夢白と拮抗する美貌は確かに強力な武器。彩海とのコンビがことのほかよく似合った。

大人組では校長先生グッドマンの奏乃はると、フレディの真那、マクリーンの愛がそれぞれ抜群のつくり込みでさすがの好演。なかでも真那の硬軟自在の達者な演技が若手中心のこの舞台にあって大きな底上げとなっていた。ちなみにフレディの初演は未沙のえるだった。

若手では落ちこぼれ3人組、ロッキーの眞ノ宮、プレスリーかぶれのチンピラ、ぐいぐいジョーの天月翼、その手下スタージョンの麻斗海伶がそれぞれ思い切りのいいつくり込みで笑わせてくれた。娘役もシンディーのクラスメイトで、一人ゆっくりしゃべるケイト役の琴羽りりやロッキーの相手役ミリーの華純沙那らが健闘、雪組若手の芝居心の豊かさを証明していた。

公演は25日まで。コロナ感染の急拡大が心配だが千秋楽まで完走できることを祈りたい。


©宝塚歌劇支局プラス2月15日記 薮下哲司
 


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