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2021宝塚グランプリは「桜嵐記」に決定!主演男役は望海風斗、同娘役は星風まどか

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©️宝塚歌劇団


2021宝塚グランプリは「桜嵐記」に決定!主演男役は望海風斗、同娘役は星風まどか

毎年恒例となった、毎日文化センター「宝塚歌劇講座」受講生の方を中心に1年間の宝塚歌劇の最も優れた成果を投票で選ぶ「宝塚グランプリ2021」の結果が決まりました。昨年に引き続き今年も前半はコロナ禍による休演や延期、無観客公演がありましたが、4月にはオーケストラが再開、6月からは新人公演も再開され、ほぼ通常の状態に戻りつつあります。この間、各組メンバーの意識も格段に変化、再開された舞台はどの公演もこれまで以上に熱のこもったものになりました。今年は文化センターの受講者だけでなく宝塚担当記者や在京の評論家の方にも参加していただくなど幅広い選考の結果、次のような結果となりました。

2021宝塚グランプリ
最優秀作品賞
★ミュージカル(大劇場)部門
桜嵐記(上田久美子)
★ミュージカル(大劇場以外)部門
夢千鳥(栗田優香)
★レビュー部門
シルクロード盗賊と宝石(生田大和)
モアーダンディズム(岡田敬二)
★再演部門
ロミオとジュリエット(星組公演)

最優秀主演男役賞
望海風斗(fff)

最優秀主演娘役賞
星風まどか(哀しみのコルドバ、元禄バロックロック)

最優秀助演男役賞
愛月ひかる(ロミオとジュリエット、柳生忍法帖)

最優秀助演娘(女)役賞
音くり寿(元禄バロックロック、哀しみのコルドバ)
最優秀歌唱賞
望海風斗(fff)

最優秀ダンス賞
柚香光(The Fascination!ほか)

最優秀新人賞
華世京(ほんものの魔法使)
天飛華音(柳生忍法帖新人公演、マノン)

最優秀演出賞
上田久美子(fff、桜嵐記)

最優秀主題歌賞
「桜嵐記」(「桜嵐記」青木朝子)

最優秀振付賞
原田薫(「夢千鳥」タンゴのシーン)
KAORIalive(「ロミオとジュリエット」フィナーレのデュエットダンス)

最優秀衣装デザイン賞
元禄バロックロック(加藤真美)

最優秀美術賞
シャーロックホームズ(國包洋子)
 
特別賞
縣千(「ほんものの魔法使」の犬の演技と「シティハンター」の海坊主の演技に対して)

特別功労賞
轟悠(「婆娑羅の玄孫」の演技と長年の宝塚歌劇に対する功績に対して)


選考経過
選考の方にはあらかじめ各部門のノミネート表をお送りし、それに〇印をつけて頂くという選考方法で投票を行って頂きました。結果、作品賞は楠木正行の潔い生きざまを感動的に描いた、珠城りょう、美園さくらの退団公演、月組公演「桜嵐記」と楽聖ベートーベンの作曲の秘密に迫った望海風斗、真彩希帆の退団公演、雪組公演「fff」が抜きんでて互角の大接戦。2票差で「桜嵐記」が栄冠に輝きました。いずれも上田久美子の作品で、この2本は宝塚全体にとっても今年の大きな収穫、2021年は上田の時代だったようです。作品賞はこの2作に集中、そのほかは宙組公演「シャーロックホームズ」と花組公演「元禄バロックロック」が2票ずつ獲得したにとどまりました。

大劇場以外の作品では花組公演「NICE WORK IF YOU GET IT」と宙組公演「プロミセスミセス」の原田諒作品2本と栗田優香のデビュー作、宙組公演「夢千鳥」の三つ巴となりましたが「夢千鳥」が一歩抜け出しました。竹久夢二の半生を斬新な演出で描破、和希そらの熱演が見事でした。コロナ禍でたった4日間の公演でしたが後日配信されたことが評価につながったようです。これはぜひ再演を願いたいものです。

レビュー部門は票が割れどの作品が受賞してもおかしくない接戦でしたが生田大和の初レビューとなった雪組公演「シルクロード盗賊と宝石」とベテラン岡田敬二の星組公演「モアーダンディズム」が同票で1位を分け合いました。ストーリー仕立ての異色のショーとノスタルジックでオーソドックスなレビュー、対照的な2作品でした。次点は1票差で惜しくも野口幸作の宙組公演「Delicieux!甘美なる巴里」。花組公演Cool Beast!」「The Fascination!」が続きました。

再演部門も票が散りましたが礼真琴、舞空瞳のフレッシュコンビによる星組公演「ロミオとジュリエット」が最終的に抜け出ました。次点は月城かなと、海乃美月プレお披露目となった博多座月組公演「川霧の橋」で、これに柚香、星風まどか新コンビ披露の花組公演「哀しみのコルドバ」水美舞斗主演の花組公演「銀ちゃんの恋」が同票で続きました。月城主演で公演が延期された月組公演「ダルレークの恋」にも票が入っています。

注目の個人賞、主演男役賞は最後まで行方が分からない大接戦でしたが「fff」の望海風斗が2票差で「桜嵐記」の珠城りょうを押さえて2年連続の栄冠に輝きました。次点は風間柚乃が「LOVE&ALL THAT JAZZ」の演技で大健闘、芹香斗亜、柚香、礼、水美と続きました。

主演娘役賞は宙組から専科を経て花組に組替え、柚香の相手役として再び花開いた星風がダントツの1位。退団した花組の華優希の次点を大きく引き離しました。朝月希和、真彩、美園とともに「夢千鳥」「プロミセスプロミセス」のヒロインを好演した天彩峰里にも票が入りました。

助演男役賞は星組の愛月ひかるが文句なしのトップ独走。「柳生忍法帖」の芦名銅伯もありましたがここはやはり「ロミオとジュリエット」の死の演技によるところでしょう。次点の宙組公演「シャーロックホームズ」の芹香、月組公演「川霧の橋」の鳳月杏に大きく差をつけての栄冠です。彩凪翔、瀬戸かずや、千海華蘭、永久輝せあと続きました。

助演娘(女)役賞は、花組公演「元禄バロックロック」で徳川綱吉をモデルにしたツナヨシの少年時代を演じた音くり寿が圧倒的票数を獲得、栄冠を獲得しました。本来の娘役としても「哀しみのコルドバ」などの好演がありました。次点は「ロミオとジュリエット」の乳母、「柳生忍法帖」の天秀尼を好演した星組の有沙瞳。「アウグストス」のクレオパトラ役を好演した専科の凪七瑠海、「柳生忍法帖」の千姫役を好演した星組の白妙なつ、「プロミセスプロミセス」で男女二役を熱演した留依蒔世、「シティハンター」で警部役をセクシーに演じた彩みちるが同票でこれに続き、「NICE WORK-」で圧倒的美声を響かせた花組の鞠花ゆめも評価されました。退団が惜しまれます。

続いて最優秀歌唱賞は、この賞が始まって以来ずっと変わらず、今回も望海が「fff」の朗々たる歌声によってダントツで制覇。次点の真彩も同時に退団したことから来年度から誰が受け継ぐか楽しみです。ちなみにこの二人以外で歌唱賞の票を獲得したのは「LOVE AND ALL THAT JAZZ」でオペラ歌手役を演じた月組のきよら羽龍だけでした。

最優秀ダンス賞は花組の柚香が、望海の歌唱賞並みの得票で1位を獲得。「Cool Beast!」「哀しみのコルドバ」そして「The Fascination!」でのダンス力が大きく買われたようです。次点は「ロミオとジュリエット」などで礼。舞空、水美、和希が同票で並びました。

コロナ禍で休止されていた新人公演が再開され、新人の活躍にもようやく光が当たるようになった今年、注目の新人賞は接戦の末、同票で二人に決まりました。星組公演「柳生忍法帖」新人公演で柳生十兵衛役をさわやかに熱演した天飛華音そして雪組公演「ほんものの魔法使」で臆病なマジシャン、ニニアン役を好演した華世京の二人です。天飛は103期生で初の新人公演主演、華世は106期の首席でまだ研2という若さで三番手役という大役を見事にこなしました。続いて「夢千鳥」で彦乃役を好演した宙組の山吹ひばり、「銀ちゃんの恋」の小夏を熱演した花組の星空美咲、「シャーロックホームズ」新人公演で主演した宙組の亜音有星と続きました。

ここからスタッフになりますが演出賞は「fff」と「桜嵐記」の2作で文句なしに上田久美子が受賞。ほぼ満票に近く、次点は原田諒(「プロミセスプロミセス」「NICE WORK-」)と「夢千鳥」の栗田でした。ここにデビュー作の栗田が入ったことに注目、次回作に期待がかかります。「元禄バロックロック」の谷貴矢、「シャーロックホームズ」「シルクロード」の生田と続きます。

次に主題歌賞は月組公演「桜嵐記」の主題歌「桜嵐記」(青木朝子)が雪組公演「fff」の「ハイリゲンシュタットの遺書」(甲斐正人)を2票差で破ってトップに。「元禄バロックロック」の「花のおエド」「ラッキーこいこい」(太田健)が続きました。

振付賞も票が割れ、宙組公演「夢千鳥」のタンゴのシーン(原田薫)と星組公演「ロミオとジュリエット」フィナーレのデュエットダンス(KAORIalive)が同票で受賞となりました。夫婦喧嘩がタンゴに変化していく独創的なダンスシーンと礼真琴と舞空瞳が見せた超人的なデュエットダンス、どちらも宝塚史上に残る名場面でした。次点の雪組公演「Fire Fever」の71人のラインダンス(御織ゆみ乃)も高得票、ほかに「夢千鳥」のフィナーレ(百花沙里)や「The Fascination!」のピアノファンタジー再現シーン(御織)「Dream Chaser」のミロンガ(Anju)「モア―ダンディズム」の「手紙」(謝珠栄)などにも票が入りました。いずれも甲乙つけがたい名場面ばかりです。

衣装デザイン賞も最後まで行方が分からない接戦でした。こちらは花組公演「元禄バロックロック」(加藤真美)が月組公演「桜嵐記」(薄井香菜)を1票差で破りました。「元禄‐」の和洋折衷の斬新なデザインが評価されましたが、「桜嵐記」のオーソドックスな甲冑姿の美しさも目に焼き付いています。続いて「fff」「シャーロックホームズ」(有村淳)「柳生忍法帖」(河底美由紀)も同票で並んでいます。

美術賞は19世紀ロンドン、シャーロックホームズの事務所を緻密に再現した「シャーロックホームズ」(圀包洋子)が圧倒的多数で1位に。次点は「桜嵐記」(新宮有紀)「fff」(大橋泰弘)と続きました。

特別賞は、月組公演「桜嵐記」で後醍醐天皇役を圧倒的存在感で演じた専科の一樹千尋と雪組公演「ほんものの魔法使」で犬のモプシー、「シティハンター」で海坊主を果敢に演じた縣千がノミネート、1票の僅差で縣に決まりました。宙組公演「プロミセスプロミセス」で急きょ男女二役を見事に演じ分けた留依蒔世はここでも番外ノミネートの声が上がっています。

そして特別功労賞は、10月1日をもって退団した専科の轟悠にほぼ満票で決定。長年の宝塚歌劇に対する貢献と功績に対しての顕彰です。これは誰も異論をはさむ余地はなさそうです。

以上が宝塚グランプリ2021の結果となりました。「桜嵐記」3部門、「fff」3部門、「元禄バロックロック」3部門、「ロミオとジュリエット」3部門、「夢千鳥」2部門とうまく分け合った形です。今年は上田久美子、生田大和、原田諒をはじめとした中堅層が活躍、谷貴矢、栗田優香といった新たな才能も登場する一方、植田紳爾、岡田敬二といったベテランも健在で、伝統を守りながら新しい冒険にも果敢に挑戦する宝塚歌劇の攻めの姿勢が顕著に表れた年になったと思います。コロナ禍で恒常化したライブ配信が観客動員にどう反映してくるか注目しながら2022年も見守りたいと思います。

本年もご愛読ありがとうございました。来年も引き続きよろしくお願いいたします。

薮下哲司

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