夢咲ねね×愛加あゆ 元娘役トップ姉妹でディナーショー開催
元星組の夢咲ねねと元雪組の愛加あゆという娘役トップ同士の姉妹によるディナーショー「ブーケ・ド・アムール」が11月21日、宝塚ホテルで開かれた。二人で「エリザベート」から男役のデュエット「闇が広がる」を歌うなど、ディナーショーならではの珍しい選曲もあって二人の宝塚愛があふれた素敵なステージだった。
真っ白なドレスに淡いピンクをかけた夢咲、グリーンをかけた愛加、ステージに現われるだけで会場がぱっと華やかになった。一曲目はショータイトルの「ブーケ・ド・アムール」から。この一曲で一気にタカラヅカモードに。2曲目は「アナと雪の女王」エルザの夢咲、アナが愛加、実際の姉妹が歌うなんとも言えない幸福感が会場を包み込む。
このディナーショーも宝塚ホテルの新装開場記念として9月に予定されていたがコロナ禍で延期、ようやく実現。「新しい宝塚ホテルで妹と一緒にできるなんて本当にうれしい。二人でいっぱい宝塚の歌を歌います」と夢咲、愛加も「出演していた舞台が中止になってお客様の前に出るのは本当に久しぶり。緊張しながらわくわくしています」といいながら笑顔であいさつ。
さっそく二人の宝塚主題歌コーナー。ちょっと違うのは二人が出演した舞台ではなくファン時代に大好きだった曲や大好きな歌を歌うという趣向。「音楽学校の文化祭で歌唱の一番が歌う歌で、二人ともぜひ歌いたかった」という「清く正しく美しく」から始まって、愛加が擦り切れるほど見たという花組公演「ザッツレビュー」の主題歌や「ハウトゥーサクシード」「エンターザレビュー」など、夢咲も「薔薇の封印」などを歌い継ぎ、極めつけは二人で「エリザベート」からトートを夢咲、ルドルフに愛加が扮しての「闇が広がる」。娘役トップ同士が男役の大曲を見事な低音を駆使して披露、夢咲は「お耳よごしではなかったですか」と笑ったが、在団時には絶対聞けない貴重なデュエットだった。コーナー最後は「フォーエバータカラヅカ」で綺麗に締めくくった。
ここでゲストの元雪組の彩凪翔の登場。愛加の一期下で雪組時代、一緒に舞台に立った仲間、夢咲が「退団公演を見てぜひ出てもらいたいと思った」とリクエストしたという。彩凪が「ねねさんは初舞台の時からファンでずっと見ていました。あゆさんは私が大役をもらった時にうまくできなくて泣いていたら励ましてくださって、一緒に旅行とかもさせて頂きました」と二人との間柄を披露、愛加とは「ファントム」夢咲とは「エリザベート」から「私が踊る時」をデュエット。彩凪も「大好きな曲」という「花吹雪恋吹雪」をソロで披露した。
「歌劇団から一着だけ衣装を貸し出してあげるといわれた」という二人が選んだ衣装は夢咲が「ロミオとジュリエット」のオレンジ色のドレス、愛加がサヨナラショーで着たグリーンのラメ入りのドレス。これを着て愛加が「前田慶次」夢咲が退団前のミュージックサロンで歌った曲ととっておきの2曲を歌った。
退団後のコーナーは、愛加が「ブロードウェーと銃弾」から「新しい恋」。夢咲が「ウエストサイドストーリー」から「アメリカ」と「アイフィールプリティ」。「ウエストサイド」は公演直前で中止になったため「お客様の前では初めて歌わせていただきました」と夢咲。二人とも圧倒的な歌唱で退団後のさらなる新生面を見せつけていた。
そしてラストは劇団四季で上演されたミュージカル「ウィキッド」から二人のデュエットで締めくくった。ディナーショーのために二日前から宝塚入りして久々に宝塚の街を満喫したという二人、すっかりファン時代に戻った仲のいい姉妹の宝塚愛に満ち満ちたステージ。そんななか今の充実した活躍ぶりもうかがえて、なんとも心の温まるステージだった。最後の曲「さよなら皆様」はついこの間まで「大劇場で私たちの声で流れていた」そうだ。
このディナーショーは12月4日に第一ホテル東京でも開催される。
なお夢咲は1月に「天使は桜に舞い降りて」に東名阪で出演。
愛加は2月にミュージカル「ヴェラキッカ」に東西で出演。
彩凪は1月に東西で上演される七海ひろき主演の「フランケンシュタイン」で初の女役に挑戦する。
一方、この日、大阪市内のホテル阪神では、元花組の天真みちるを中心とした「天真爛漫ショー大阪出張リベンジ」なるディナーショーも開かれた。前日にあった稽古をのぞいたが、これも才人天真ならではのユニークなステージ。元花組の芽吹幸奈、鳳真由が出演、歌ありトークあり朗読劇ありの盛りだくさんな内容。「エリザベート」から皇太后ゾフィーとエリザベートの歌を天真ひとりで歌い分ける「一人エリザベート」や、芽吹の「エトワール特集」など実力派ならではのステージ。鳳と芽吹の「夜のボート」も聴かせた。朗読劇は「北摂三姉妹」と題した宝塚ネタ満載の爆笑もの、さわりしか聞けなかったのが残念だった。春ごろに出版した「こう見えて元タカラジェンヌ」(左右社刊)が「もう少しで2万部。頑張らねば」と話していた。
宝塚歌劇支局プラス 2021年11月22日 薮下哲司 記