©️梅田芸術劇場
明日海トート再び降臨!
「エリザベートTAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート」大阪公演
ミュージカル「エリザベート」の宝塚初演から25年となった今年、これを記念して歴代出演者が勢ぞろいしたスペシャル・ガラ・コンサートが5日から大阪・梅田芸術劇場メインホールで開幕した。
20周年を記念したガラ・コンサートから5年ぶりの開催で、今回は1996年初演の一路真輝を中心とした雪組メンバーはエルマー役だった和央ようか、少年ルドルフ役の安蘭けいを除いて不参加だが、続演した麻路さきを中心とした星組メンバーはじめ、姿月あさと、春野寿美礼、彩輝なお、水夏希、瀬奈じゅんという歴代トートが出演するアニバーサリー・バージョン。前回は在団中だった明日海りおを中心とした2014年花組バージョンと朝夏まなとを中心とした2016年宙組バージョンがフル・コスチュームで出演。4月11日に退団する雪組の望海風斗も22日の東京公演から退団後の船出をこのコンサートからスタートする。なかでも望海がトート、夢咲ねねと明日海がwキャストでエリザベートに扮する同期生トリオの夢の競演が話題となっている。
コンサートは5日、麻路を筆頭に歴代エリザベート出演者が歌い継ぐアニバーサリー・バージョンから開幕。初演キャストの一路と花總まりのビデオメッセージがお祝いムードを盛り上げた。その後6、7日に朝夏を中心とした2016年宙組バージョンが上演され、続いて9日から明日海を中心とした2014年花組バージョンが登場した。
明日海の退団後の舞台は「ポーの一族」以来、「エリザベート」のトート役は7年ぶりとなった。エリザベートは蘭乃はな。フランツ・ヨーゼフは北翔海莉。ルキーニは宇月颯。ルドルフは澄輝さやと。ゾフィーが純矢ちとせ。マックスが悠真倫、リヒテンシュタインが芽吹幸奈、少年ルドルフが矢吹世奈、マダム・ヴオルフが大月さゆというキャスト。
舞台上のオーケストラが演奏を始めると上手からルキーニ役の宇月が登場。煉獄の裁判が始まり、ハプスブルク家の人々が甦るオープニングシーンへ。「エリザベート」の世界がコンサート形式で現出する。
明日海登場はそのすぐあと。真っ黒な衣装に身を包み、舞台奥でスポットを浴びた明日海トートが「私を燃やす愛」を歌いだすと、その歌声の豊かさとともに圧倒的オーラで舞台空間を制圧、7年間の明日海の男役としての成熟ぶりを改めてうかがわせた。
明日海が本公演でトートを演じたのは、2014年、花組トップ披露公演の時。その時も黄泉の帝王とは思えない人間的な温かみのあるトートを演じ、新たなトート像を作り出していたが、7年後の今、再び見る明日海トートは、この世のものとは思えない美しさと逞しさを兼ね備えていた。「ポーの一族」のエドガーといい「エリザベート」のトートといい退団後に代表作を再演できるという幸運に恵まれ、いずれも進化した形で再現した明日海という人は本当に強運の持ち主だと思う。
エリザベートの蘭乃は、退団後も東宝版で引き続きエリザベートを約一年間演じ、少女時代から皇后時代まですっかり体になじんでいたが、時々歌唱が不安定になるのは宝塚時代からあまり変わっていなかった。フランツ役の北翔は貫禄十分。哀感ただよう「夜のボート」が絶品だった。宇月のルキーニは、月組時代に新人公演で好演したのが印象に残っているが、歴代そうそうたるメンバーとは一味違った道化師のような軽妙さで演じて新鮮だった。二幕冒頭の「キッチュ」では明日海の宝塚時代のトレードマークである花組ポーズを客席のファンにしてもらって写真を撮り、会場を沸かせていた。
ルドルフは少年時代を矢吹、青年時代を澄輝が演じ、澄輝と明日海は初顔合わせで「闇が広がる」を歌った。奇跡の組み合わせともいうべき端正なデュエットだったが、二人並ぶと澄輝が随分長身だったことを再認識。あとマダム・ヴォルフを歌った大月が好唱。退団後の数々の舞台経験を経て女優として一回りスケールが大きくなった成果が表れているようで感慨が深かった。
アンサンブルで出演しているメンバーにも天真みちるはじめ懐かしい顔が多く、いろんな役を早変わりで脇を固め、コンサートを支えていたのが印象的。卒業しても宝塚愛とエリザベート愛に包まれたコンサートだった。
大阪公演のあと東京公演は17日から5月5日まで東急シアターオーブにて開催される。
©宝塚歌劇支局プラス4月10日記 薮下哲司
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明日海トート再び降臨! 「エリザベートTAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート」
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