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花總まり「マリー・アントワネット」安蘭けい「Oslo」美弥るりか「the Wonder」OG公演

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©️東宝 梅田芸術劇場

花總まり「マリー・アントワネット」安蘭けい「Oslo」美弥るりか「the Wonder」OGたちが活動開始!

緊急事態宣言が解除の方向に進み、演劇界も徐々に活動再開、タカラジェンヌOGたちの活動も少しずつ再開の兆しが見えてきた。そんななかから花總まりが再びマリー・アントワネットに挑戦したミュージカル「マリー・アントワネット」(ロバート・ヨハンソン演出)トニー賞受賞作「Oslo」(上村聡史演出)のヒロイン役を演じた安蘭けい、1年ぶりの公演実現となった美弥るりかの「THE WONDER MIYA COLECTION」(河原雅彦演出)の成果を報告しよう。

★マリー・アントワネット
まず「マリー・アントワネット」は、2006年に日本初演され、その後ドイツはじめ各地で上演され、2018年に凱旋公演されたニューバージョンの3年ぶりの再演。宝塚時代にも「ベルサイユのばら」で演じている花總が再びアントワネットに挑戦、その圧倒的な存在感で魅了した。

「エリザベート」のミハイル・クンツェ作詞、シルベスター・リーバイ作曲コンビの手になるこのミュージカルは、1789年、革命によって処刑された悲劇の王妃マリー・アントワネットと同時期に生を受けた庶民の娘マルグリットとの対照的な人生を描きながらその二人が交差していく様を描いている。フランス人が作った話ではないので全体的にはいくぶんアントワネットに同情的なつくりで、革命政府側は敵役的なしつらえではあるところにステロタイプ的な不満はあるが、宮廷の豪華な装置やきらびやかな衣装など、宝塚顔負けのゴージャスさで目を楽しませてくれた。

アントワネットの花總と笹本玲奈はじめ主要な役でダブルキャストが組まれているが私が観劇した日はフェルゼンが田代万里生、マルグリットがソニン、ジャック・エベールが上山竜治、オルレアン公が上原理生という配役。ほかに王妃の衣装係ローズ役で彩吹真央、王妃の付き人のランバル公爵夫人役で彩乃かなみが出演している。

花總のアントワネットはこの手のコスチュームものになるとさすがに宝塚での豊富なキ
ャリアが生きていて、ドレス姿の優雅な身のこなし方など見事というしかなく、そこにアントワネットが実際に存在しているかのような錯覚にとらわれるほど。フェルゼンの忠告に耳を貸さず、国家の存亡の危機にも無関心だった無邪気な時代から徐々に周囲の陰謀に気づいていくあたりの演技も納得のいくものだった。歌唱も安定感があってここちよく聞くことができた。「レディ・ベス」や「エリザベート」など王妃物には欠かせない存在といっていいだろう。

彩吹は「レ・ミゼラブル」でいえばテナルディエ夫人のような役割で最後にはアントワネットを裏切る打算的な女性、一方、彩乃は最後までアントワネットに忠節を尽くす女性、対照的な役どころをそれぞれ柔軟な演技で的確に表現していた。彩乃のなめらかな歌声を久々に聴けたのが収穫だった。ほかにはマルグリット役のソニンの熱演ぶりが特筆に値するが男性陣ではフェルゼン役の田代の充実ぶりに目を見張った。ずいぶん貫禄が付き、歌のうまさにも円熟味が増した印象。すべてに納得のいく歌と演技だった。

★Oslo
「Oslo」は、1993年のイスラエルとパレスチナのオスロ合意の知られざる裏側に迫ったJ・T・ジョーンズ脚本による硬派の野心作。2017年のトニー賞で作品賞を受賞した話題作の日本初演。ノルウェーの社会学者テリエとその妻で外交官のモナがイスラエルとパレスチナの国境地帯を訪問した時、敵対する二人の少年が銃を持って対峙しながらも実際は怖さに震えているのを目撃、この危機的状況を打開する手立てを探り、疑心暗鬼の声を跳ね返しながら両陣営の平和交渉を少しずつ行動に移していくというストーリー。最終的に合意に成功するものの、30年たった今、事態はいまだにくすぶっており、今後に問題を提起したまま終幕を迎える。

テリエには坂本昌行、その妻モナに安蘭けいが扮して時には進行役も務めながら舞台を回していく。パレスチナ側の代表に益岡徹、イスラエル側が福士誠治。ほかにも実力派が脇を固める中、頭脳明晰でユーモアのセンスがあり、緊迫した状況の中で彼女の存在自体が唯一の救いになるという難役を安蘭が的確に演じた。「ビリー・エリオット」や「サンセット大通り」といったミュージカルの大作で培った華やかな舞台演技がこういったストレートプレイに見事に生かされていた。ほぼ会議室だけの会話劇だが、ニュース映像などを駆使して約3時間、緊迫感を持続させた演出も素晴らしかった。

★the Wonder MIYA COLECTION
昨年2月に上演されるはずだった元月組の美弥るりかのコンサート「the Wonder MIYA COLECTION」(河原雅彦演出)が、2月19日、大阪梅田芸術劇場メインホールから丸1年遅れでスタートした。

コンサートは二部構成でたっぷり二時間半。一部は「mirror」というオリジナル曲でオープニング。特別出演という形の元花組の仙名彩世と合わせ鏡で登場。パリ、ニューヨーク、ロンドン、アフリカ、日本と世界各地を旅しながら、美弥の5変化を楽しもうという趣向。シャンソンやロックなど歌のジャンルの幅の広さもさることながら、ファッションショーのようなユニークで豪華な衣装がみどころだった。シルクハットに燕尾風の男役スタイルはもちろん着物を大胆にアレンジしたジャパネスクなど美弥のキレキレのファッションセンスがうかがえるステージだった。
二部はゲストコーナーを中心にトークも交えたフランクな展開。初日のゲストはダンサーの東山義久で、東山がこの日のために振り付けたというダイナミックなダンスを美弥とともに踊る一幕も。仙名は「ラ・マンチャの男」のテーマソングを朗々と歌い上げた。この曲は、松本幸四郎でしか聞いたことがなかったのでことのほか新鮮だった。
延期になったうっぷんをすべてはきだしたような盛りだくさんな内容だったが、1年後でもとにかく実現できたことで出演者全員になんとも言えない幸せ感が漂う素敵なコンサートだった。

★宝塚音楽学校文化祭
宝塚音楽学校でも恒例の107期生39人の卒業公演「文化祭」が2月26,27、28日の3日間、宝塚バウホールで開催された。コロナ禍真っただ中に本科を過ごし、文化祭の稽古もままならない厳しい状況だったが、歌にダンスに演劇にと、2年間のレッスンの成果を初々しく発表。なかでも首席の西村あみさん(芸名・白綺麗)の突き抜けるような歌声が早くも評判になっている。初舞台はコロナ禍でいつもより遅く6月の宙組公演からとなる。

©宝塚歌劇支局プラス3月5日記 薮下哲司

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