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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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柚香光、水も滴る光源氏で観客を魅了 花組「新源氏物語」新人公演

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柚香光、水も滴る光源氏で観客を魅了 花組「新源氏物語」新人公演
 
花組期待のホープ、柚香光が主演した宝塚グランドロマン「新源氏物語」(柴田侑宏脚本、大野拓史演出)新人公演が、20日、宝塚大劇場で行われた。今回はこの模様を報告しよう。

榛名由梨が演じた初演(1981年)のときは大地真央が代役公演で、剣幸が演じた再演(1989年)の新人公演は天海祐希が新人公演で演じ、それぞれその後のおおきなジャンピングボードになった光源氏。柚香の光源氏も、のちのちファンに語り継がれていく舞台になったのではないかと思う。本公演の明日海りおに比べれば、演技的にはまだまだ粗削りだが、たとえようもなく美しく雅やかで包容力のある光源氏だった。

公演中に一回しかない新人公演、最近とみに人気が高く、どの公演も早くからチケットは完売するが、今回の新人公演は本公演でもポジションが三番手格にあがり、人気急上昇中の柚香が光源氏を演じるという話題性と彼女にとって最後の新人公演ということが重なって、特に人気が高くチケットは仰天するようなプレミア価格で取引されるほど。客席の雰囲気も心なしかいつもより熱かった。

暗闇に灯りがともり、緋毛氈をバックに純白の衣装に身を包んだ柚香源氏が銀橋から後ろ向きに登場して正面を振り返ったとたん客席からは割れんばかりの拍手。黒い烏帽子が長身をさらに大きく見せたうえ、くっきりした目鼻だちに白塗りの化粧がよくはえて、まさに光源氏が現代に甦ったよう。どことなく現代的な風貌が、またプレイボーイとしての光源氏にぴったりだった。義母、藤壺(朝月希和)を慕うあまり、その面影をほかの女性に求めて女から女へとさすらう光源氏だが、その一番のベースとなる前半の藤壺とのラブシーンがなまめかしく、なかなか真に迫っていて、その後の展開がおおいに納得がいった。

男役スターの音域に合わせて曲作りをした寺田瀧雄氏の曲だけに、柚香の音域にもあったのか課題だった歌も、一、二か所を除いて見違えるよう。新人公演の締めくくりにふさわしい最高の出来だった。

男役では頭中将(本役・瀬戸かずや)に扮した水無舞斗が素晴らしかった。柚香と同期ということもあり源氏と腹心の親友という雰囲気が濃厚に出ていたのと、きりっとした表情が、白塗りの化粧によく映えて、柚香とは違った意味でとにかく美しい。雨夜の品定めの場面での色っぽい台詞もさまになっていたが、柚香と水無が二人並んで舞を披露する場面は、まさに眼福だった。

惟光(芹香斗亜)の優波慧は、緊張からかオープニングシーンのソロがやや弱くて減点材料。その後は源氏の随身、惟光として、コミカルな場面もそれなりにこなした。もともと実力派で、決して柚香、水無とそん色はないのだが、2人の圧倒的な存在感の前に、今回はちょっと影が薄かった。

本公演で柚香が二役で演じた六条御息所と柏木は、帆純まひろが抜擢された。柚香と水無を足して割ったようなすっきりとした美丈夫だが、台詞はまだできておらず、時代物の発声になっていないのが難点。しかし、大健闘でこの経験は、今後必ず役立つだろう。御息所と柏木では、やはり柏木が似合った。

女役陣は藤壺(花乃まりあ)の朝月希和が、気品をたたえ源氏を包み込むように好演。ほかに紫の上(桜咲彩花)が城妃美伶、朧月夜(仙名彩世)は雛リリカ、女三の宮(朝月)が茉玲さや那、雲井の雁(城妃)が春妃うらら、若紫(春妃)が音くり寿といったメンバー。

城妃が、現代的なつくりでそれはそれでいいがやや違和感があったかも。音の若紫は可愛いものはもちろん、オープニングのソロも聴かせた。歌といえば、源氏と藤壺のラブシーンのバックで歌った若草萌香の美声は素晴らしかった。役は王命婦(芽吹幸奈)だった。

弘徽殿の女御(京三紗)で出演したトップ娘役の花乃まりあは、もともとふり幅が広く、なんでもできる娘役スターらしく、楽しんで演じている感覚がみていて頼もしかった。

©宝塚歌劇支局プラス10月21日記 薮下哲司



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