©️甲南女子大学
安蘭けいさんがゲスト講師で登壇。甲南女子大学の宝塚歌劇講座特別編
甲南女子大学の第3回宝塚歌劇講座特別編「宝塚歌劇と漫画」が、ゲスト講師に女優で元星組トップスターの安蘭けいさんを講師に迎えて、11月17日同大学の大教室に約300人の受講者を集めて行われた。
一昨年、レビュー90周年を記念して演出家の三木章雄氏と元専科の女優、出雲綾さんをゲストに開講した甲南女子大の宝塚歌劇講座特別編。昨年は「エリザベートと宝塚」をテーマに元雪組トップスター、一路真輝さんをゲストに迎えて開講しましたが、今年は「ベルサイユのばら」上演45年を記念して「宝塚歌劇と漫画」がテーマ。「ベルサイユのばら」ではフェルゼン、アンドレ、オスカルの主要3役に加えてベルナールを演じ、青池保子原作の「エル・アルコン~鷹」にも主演、漫画原作にゆかりのふかい安蘭さんを迎えました。
講座はまず甲南女子大学の宝塚歌劇同好会エトワール所属の学生による「宝塚歌劇とマンガの繋がり」の発表から。紺の制服姿に身を包んだメンバーが宝塚歌劇にはさまざまなレパートリーがあり、そのなかで最近は漫画原作が多くなってきていること、その理由などを絵入りのパワーポイントでわかりやすく解説、「ベルサイユのばら」のヒットの秘密にも言及しました。
次いで私が登壇して「ベルサイユのばら」が宝塚で上演されたきっかけ、初演のころの宝塚を取り巻いていた状況などを解説。「ベルサイユのばら」が現在に至るまで人気を保つさまざまな理由を解き明かし、なかでも演出に歌舞伎界から長谷川一夫を招いて、洋物の芝居に歌舞伎の演出を取り入れたことで独特の様式美が現出、日本人好みの舞台になったことがヒットの一つの要因と分析しました。
一方、安蘭さんは漫画の主人公を演じる上でのイメージづくりの苦労を、実体験から紹介。数々の大先輩が演じてきた「ベルサイユのばら」のキャラクターより自らが初演した「エル・アルコン」のダークヒーロー、ティモシー・パーシモンを創造したときの方が難しかったと振り返り、もしもう一度できるならこの役を極めてみたいほどだと思い入れを語りました。
安蘭さんの基調講演のあと甲南女子大学宝塚歌劇講座講師の永岡俊哉さん(羽衣国際大学准教授)の司会で安蘭さんと私のフリートーク。まずは「宝塚歌劇と漫画」というテーマに即して、まずは「ベルサイユのばら」の4役について。「フェルゼンはチョイ役だったけど」と笑わせながら「私はやはりピュアなアンドレが一番やりがいを感じました。オスカルは女性なので男役として演じる上で難しい役ですが、男役である自分と同じ、自然にやればいいと思ったらすんなり入っていけました」と感想。ただ「“ベルばら”独特の演出は、相手役の顔をみずに前を向いてセリフを言わなければいけなくて、なんとなく居心地が悪くて好きではなかった」と今だから言える衝撃の発言も。
好きな役だという「エル・アルコン」のティモシー・パーシモンは宝塚には珍しいダークヒーロー。「雪組時代はフェアリー系といわれてなんとなく居心地が悪かったのですが、星組に組替えになった最初に演じた石川五右衛門で、自分自身これだ!と思うところがありました。ダークといっても裏には純真な心があるという設定が宝塚的であり魅力的で自分に合うと思いました」ただの二枚目を超越した安蘭けいならではの男役の美学はこうして完成したのだった。
漫画の話題以外にも宝塚音楽学校に4回挑戦して入学したときのエピソードや、代表作となった「スカーレット・ピンパーネル」の誕生前夜の生みの苦しみなど、これまでファンもあまり聞いたことがない貴重な話をふんだんに吐露。
ファンからの質問にも気さくに応じ「赤と黒」再演についての思いや、「ベルサイユのばら」ではあと何の役がやりたいかの質問に「マリー・アントワネットがやりたい」と話して大喝采を浴びるなど、最後までリラックスしながらも有意義なフリートークだった。
来年創立100周年を迎える甲南女子大学では、来年も宝塚歌劇講座特別編を開講する予定。詳細が決まれば追ってお知らせいたします。
©宝塚歌劇支局プラス11月18日記 薮下哲司
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