恒例、花詩歌タカラヅカ「ファントム」公演に抱腹絶倒!
上方落語界のタカラヅカ大好き噺家たちによる花詩歌タカラヅカ(ハナタカ)公演が今年も5月12、13日に大阪・天満天神繁昌亭に超満員の観客を集めて開催された。「ロミオとジュリエット」「エリザベート」「ミー&マイガール」「ノバ・ボサ・ノバ」と続いて、今年は望海風斗、真彩希帆の素晴らしい歌唱による雪組公演の記憶も新しい「ファントム」への挑戦、さてどんな舞台になるか胸をはずませて客席についた。
年ごとにファンの間で評判が高まり、今年は発売後2時間でチケットが完売したという人気公演。昨年からは神戸公演や横浜公演も実現、ますます注目の公演となってきた。眼目のなりきり宝塚公演の前にまずは本職の落語の高座から開幕。公演に出演するメンバー4人が羽織姿で一席うかがうものですべて宝塚ネタというところがミソ。初日の12日は月亭天使、笑福亭生寿、桂春雨、桂あやめの出番。晴れて「絹越うの」のタカラヅカ名の付いた天使、娘役トップスターといって笑わせた生寿などなどいずれも枕にタカラヅカネタをしっかりとイレ込んだが、宙組公演「オーシャンズ11」を観劇する親子の話を取り入れた春雨の物まね入りの落語には大喝采。すみれコードぎりぎりのきわどいネタもあって、会場を埋め尽くした宝塚ファンたちは腹を抱えて大笑い、涙を流すほどの大喜びだった。
「ファントム」初日は、エリックが「さざ波乃の」こと林家染雀、クリスティーヌが娘役トップスター・高原らなの笑福亭生寿、キャリエールは美園章こと実力派、笑福亭生喬、カルロッタが座長格の逢坂夕陽こと桂あやめ、フィリップが小石川みや美こと桂春雨という配役。ほか総勢20数人での公演。
さすがにオープニングのダンスシーンはカット、その代わり阿倍野こぶしこと真山隼人の浪曲による「ファントム」解説からスタート。浪曲と三味線であらかた説明があったあとオペラ座前の場面へ。生寿扮するクリスティーヌが楽譜を持って「ラララララ」と歌うのだが思い切り音程が外れていきなり大爆笑。そこへ春雨のフィリップが現れ、真面目に台詞をいうものだからますますおかしくてこの先どうなるのかと心配になるほどだったが、なんとかストーリーが進展、何やら茶色いものを頬につけた染雀扮する怪人エリックが登場。何事もなく進んでいたのだが、何かおかしいと思ったら仮面をつけ忘れていたことが判明、ここからは客席も巻き込んでの大爆笑大会とあいなった。
一幕、二幕とほぼオリジナル通りに進んだが、装置の出し入れに手間取って出演者が暗闇で棒立ちになったり、キーが違って歌い直ししたりと、失敗は数々あれど、全員必死の大熱演。「ファントム」と言えばシャンデリアだが、なんと百貫で舞 こと 桂三金の人間シャンデリアが登場、これは傑作、大笑いだったがこの発想はユニークだった。一方、生寿が「真彩希帆さんの偉大さがわかった」と話す通り、クリスティーヌとエリックのデュエットの難しさが、彼らが必死に歌えば歌うほど逆によくわかり、「ファントム」の楽曲のよさが浮き上がる結果となった。
エリック役の染雀、キャリエール役の笑喬が歌うクライマックスの歌は実力派同士とあって大いに盛り上がり、ここはさすがに笑いもなかった。フィナーレのパレードまでじっくり2時間。今回も笑い疲れてがっくりするほどのおかしさだった。
次回の7月13日には神戸喜楽館で「ベルばら」名場面集を上演予定、
また、7月28日には横浜にぎわい座でも上演予定とのことだ。
©宝塚歌劇支局プラス5月14日記 薮下哲司