ヤン、オサ、アサ夢の競演!宝塚バウホール40周年記念公演開幕
宝塚バウホール開場40周年を記念、安寿ミラ、春野寿美礼、瀬奈じゅんとそれぞれ一時代を築いたとトップスター3人が勢ぞろいした夢のコンサート「Trois Violette(トロワ・バイオレット)」(中村一徳構成、演出)が、14日、宝塚バウホールで開幕した。今回はこの公演の初日前日に行われた舞台稽古の模様をお伝えしよう。
宝塚バウホールは1978年4月に、次世代を担う若手の登竜門としての実験的な作品やスターのリサイタルの開催などを目的として大劇場の入り口に建設された定員500人の中劇場。バウには船の帆先の意味がある。104年前、第一回公演が行われた宝塚パラダイス劇場の場所にあり、入り口右側に礎石が残っている。普段は素通りする人が多いが、たまには少し遠回りして宝塚の歴史を確認していただきたい。
そのバウホール開場40周年記念公演が、現役生ではなくOG公演というのがなぜこうなったのか、ちょっと理解に苦しむが、安寿、春野、瀬奈と元花組トリオで実現したのは、なかなか粋な計らいだった。安寿は1980年から1995年まで在団、トップ在位期間は1991年から4年。春野は1991年から2007年まで在団、トップは2002年から5年、瀬奈は1992年から2009年まで在団、トップは2005年から4年。瀬奈は月組でトップになったが、もともと花組で、安寿がトップ時代に二人が花組に1年ずれて配属されている。ということで春野と瀬奈にとって安寿は雲の上の憧れの上級生。
安寿は退団後、振付家として宝塚にカムバックするが、その第1作が匠ひびきのトップ披露&サヨナラ公演の「Cocktail」だったが、その時の稽古で春野と瀬奈のあまりのぐだぐださに業を煮やした安寿が「殺すぞ!」と檄を飛ばしたのだが、二人が「ヤンさんに殺されるなら本望」といって安寿をあきれさせたという有名なエピソードがあるほど。
今回のコンサートはそんな仲のいい上級生と下級生それぞれがお互いを立てながらも各自の才能を発揮した宝塚ならではのコンサートで、なんとも気持ちのいいステージとなった。
幕が開くと白地にゴールドの飾りのついたジャケットに黒のパンタロンといえうお洒落なスタイルの3人が板付で登場。バックダンサーは舞城のどか、扇けい(在団時は扇◎)愛純もえり、月央和沙の4人。安寿の「キャント・ストップ・ミュージック」を皮切りに春野、瀬奈の宝塚時代の大劇場公演のショー作品の主題歌をメドレーで歌い継ぐ。安寿は「火の鳥」春野は「エンター・ザ・レビュー」瀬奈は「アパッショナード」と懐かしいメロディー満載だ。
ひとしきりメドレーの後、3人のMCはバウホールの思い出話に進みバウホール開場第1作の「ホフマン物語」の主題歌を3人で、続いてそれぞれのバウ主演作の中から思い出の曲を披露。安寿は「ディーン」春野は「冬物語」瀬奈は「マノン」といった具合。当時すべてリアルタイムで見ているので懐かしさもひとしおだった。若手だった当時より歌唱が格段に素晴らしく、違う曲を聞いているようだった。
引き続きレッド、ゴールド、ブルーのラメのドレスに身を包んだ3人が登場。華やかに「ドリームガール」を熱唱。「ロミオとジュリエット」の「世界の王」と続けてショーは否が応でも盛り上がった。
ここでダンサーズ4人が3人への思いをひとしきり語った後、コンサートの目玉企画である3人のセルフプロデュースコーナー。安寿、春野、瀬奈それぞれの思い出の作品の場面を後の二人が思いがけない役でお手伝いする趣向。誰が何の役するかは見てのお楽しみだが、春野は「アプローズタカラヅカ」からギャングのシーン。瀬奈は「ME&My Girl」の「街灯によりかかって」と「アパッショナード」の一場面、安寿は2年前にグルーシンスカヤ役で出演したミュージカル「グランドホテル」から一場面を再現した。「グランドホテル」では瀬奈がバロン、春野がラファエラ。何ともゴージャスだった。
エンディングは3人がとっておきの歌をじっくり披露、フィナーレは「タカラヅカフォーエバー」の大合唱で締めくくった。3人とも男役を卒業してかなりの時間がたち、男役ではなくベースは女性として出演だが、いったん男役の扮装をしてポーズを作ると、一気にタイムスリップ、見事な男役がそこに現れた。しかし、在団中とは一味違ったしなやかさがあふれ、男役というより男前なかっこいい女性が勢ぞろいした感覚。しかし、それがほかの劇場で見る3人とは違って何とも魅力的だった。
公演は19日まで。隣接の「宝塚歌劇の殿堂」ではこのあと4月27日から8月20日まで「宝塚バウホール40周年展」がある。
©宝塚歌劇支局プラス4月14日記 薮下哲司