記者会見での一コマ(携帯で撮影のため、粗い画像になっています。)
早霧せいな、退団後初ミュージカルの抱負と近況語る
昨年7月「幕末太陽傳」を最後に退団した元雪組のトップスター、早霧せいなが、退団後の初ミュージカルとして「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」(5月19日から大阪・梅田芸術劇場シアタードラマシティ、6月1日から東京・赤坂ACTシアター)に挑戦することになり、その稽古を前に3月31日、大阪市内で会見、退団後初ミュージカルへの抱負を語った。今回はこの模様をお伝えしよう。
「ウーマン・オブ―」は1981年、ローレン・バコールの主演によってブロードウェーで初演されたミュージカルで、人気ニュースキャスターのヒロインが、風刺漫画家の夫との結婚生活と仕事をいかに両立させるかを描いた働く女性のための都会派ミュージカル。日本でも1982年に鳳蘭の主演で「ミズ」というタイトルで上演されている。当時の日本もかなり女性の社会進出は増えていたが、まだまだ厳しい時代で、この作品が描く内容はかなりの先取り感があり、36年たった今の方が内容的にぴったり。早霧の退団後初仕事にふさわしいミュージカルといえそうだ。
退団後初ミュージカルにこの作品をと聞いた時の印象としては「退団したばかりの、まだ女優という言葉にも立場にもしっくりこないころにお聞きしたので、あまり実感がなかった」といい「周囲の方にすすめられるままに」決めたという。しかし、上演台本が出来上がり「じっくり読ませて頂いてからは、ああ、これをやるのかとだんだん体に染み込んできました。でも女優という肩書にはまだ違和感があって、何かほかのいいネーミングはないですかねえ」と笑わせた。
ヒロインのテス・ハーディングはバリバリのニュースキャスターという設定。「その年一番活躍した女性という意味の“ウーマン・オブ・ザ・イヤー”の授賞式の場面から始まります。授賞式はドレスだと思いますが、普段はパンツスーツだったりすると思う。タイトなスカートでのダンスシーンとか踊ったことがないので、破かないようにしないと(笑)」とまずは衣装の心配から。「日本のワイドショーなどのキャスターではなく、CNNとかに出てくる戦闘的なキャスターです。自分が一番と思っている女性ですね。私はそこまでバリバリではないです(笑)」
テスは最初の結婚に失敗、漫画家の夫とは二度目の結婚という設定。「結婚という経験がないので、そこが問題ですが(笑)仕事と生活の両立ということでいえば、宝塚の時も結構厳しかったので、そのあたりを突き詰められたら。コメディって力仕事なんですよ。ただ台詞を言ったり歌ったりするだけではなく、もうひとつ上の部分が求められるんです。終わってからみなさんに“コメディ見たな”と思ってもらえるように頑張ります(笑)」
退団して7月で丸一年になるが「もうすごい昔のことのように思える」と早霧。毎日稽古と自宅の往復でほかには何もできない毎日で「それが好きだったからやれたんです」と振り返る。退団後は「ロスになるかなあと思ったんですが、やれなかったことをやったり、見られなかった舞台を見たりして毎日が充実しています」という。ちなみにやれなかったこととは何かと思ったらキックボクシング!「在団中はけがしたらダメと思ってやらせてもらえなかったんです」とケロリ。「体を動かすことが好きなので、もちろんダンスも大好きです」という。「窓越しにしか見られなかった満開の桜を、目の前で見られる幸せ、毎日が充実しています」と目を輝かせた。
女優という言葉には違和感はあるというが、「ずっと応援してくださった方たちのために、舞台、映像とか関係なく、お声がけ頂ける物いろんなことに挑戦していきたい」とこれからも前向きに活動していきたいという。
久しぶりに会った早霧は、前にもまして明るく元気で、話しているとこちらまで元気をもらえる気がした。「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」でも鳳蘭とはまた違った魅力を見せてくれるに違いない。
©宝塚歌劇支局プラス3月31日記 薮下哲司