Quantcast
Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
Viewing all articles
Browse latest Browse all 575

珠城りょうダルタニアン颯爽登場!月組公演、浪漫活劇「All for One」開幕

$
0
0

     ©宝塚歌劇団

 

珠城りょうダルタニアン颯爽登場!月組公演、浪漫活劇「All for One」~ダルタニアンと太陽王~(小池修一郎脚本、演出)が14日、宝塚大劇場で開幕した。今回はこの公演の初日の模様をお伝えしよう。

 

「All―」は、アレクサンドル・デュマ原作の「三銃士」がベースになっているが、小池氏が、珠城を中心とした現在の月組に合わせて全く新しい解釈で読み込んだ底抜けに楽しい冒険アクション。宝塚でもこれまで様々な形で取り上げられてきた「三銃士」だが、どの「三銃士」にもなかった斬新な発想と現在の月組メンバーを適材適所に配した究極の男役の美学への追及でこれ以上ない宝塚的カタルシスが味わえ、理屈抜きに楽しめる舞台となった。小池氏の作品系列でいえば「THE SCARLET PIMPARNEL」の部類に入り、「ひとかけらの勇気」のような名曲がないのがちょっと残念だが爽快感あふれる快作に仕上がった。

 

舞台は珠城扮するダルタニアンを中心にした銃士隊メンバーが勢ぞろいしてのダイナミックな群舞からオープニング。濃いブルーに十字のマークのついたデニム地の軍服姿がりりしくかっこいい。時は17世紀。国王ルイ14世(愛希れいか)の剣術指南に銃士隊のダルタニアン(珠城)が任命されるところからこの話は始まる。ダルタニアンは銃士隊の名誉にかけて役目をまっとうしようと意気込むあまり、思わず国王を倒してしまうのだが、このことが思わぬ展開に。ルイ14世が実は女性だったのだ。ルイは男女の双生児として生まれたが、不吉の前兆と恐れた王宮は女児を棄てることに。ところが手違いで棄てられたのは王子。そこで王子が見つかるまでルイは身代わりとして男として育てられたのだが、年が経ち、スペインの王女(海乃美月)との結婚話が持ち上がったことから事態はややこしくなり、そこに現れたのがダルタニアンだった。

 

王を守る三銃士はじめ銃士隊メンバーと王家乗っ取りを画策するマザラン枢機卿(一樹千尋)とその部下ベルナルド(月城かなと)たちの戦いが、ルイとダルタニアンのひと筋縄ではいかないラブストーリーを絡めて展開していく。

 

何にでも染まることができる素直な個性の珠城を中心に、美弥るりか、宇月颯、暁千星という個性的な三銃士メンバーを配し、敵役に月城かなとをもってきた配役の妙、それぞれが舞台に映えて、見事なアンサンブルを生み出した。さらに愛希のルイ14世役は、男役出身の愛希ならではの役どころで、彼女のチャーミングな魅力がなおいっそう映えた。17世紀フランスに現在の月組メンバーを放り込んで、その魅力を最大限に発揮させることに成功、ストーリー自体も思いがけない展開で、小池氏の座付作者としての腕がさえわたった。

珠城は、下級生の頃から変に落ち着いているように見え、その安定感が時には大人びて見えたものだが、今回のダルタニアンは見違えるように若々しく溌剌とした印象。長身でたくましく「壁ドン」がこれほど似合う男役は見たことがなく、何度も登場するフェンシングの殺陣の動きも劇団☆新感線なみの派手な擬音にも助けられてなかなかシャープ、センターオーラもいや増してトップらしくなってきた。

 

ルイ14世の愛希は、もうこの人でなければできないと思わせるほどの適役。王としての品格はもちろん、女性に戻った時の可愛さはもうこれ以上ないほど魅力的。小池氏が手塚治虫氏の「リボンの騎士」へのオマージュとして考えた役というが、それを見事に体現した愛希は宝塚の娘役としていままさに円熟期といっていいのかも知れない。

 

アラミスの美弥、アトスの宇月、ポルトスの暁の三銃士メンバーもそれぞれに見せ場たっぷり。イケメンで女たらしのアラミス、しっかりものでみんなのまとめ役のアトス、力持ちで大酒飲みのポルトスという設定が三人三様ではまった。美弥も暁もいいが、なかでもひげをつけて精悍な表情で登場した宇月がこれまで蓄えた実力をきっちり出し切り、ようやく本領発揮といった感じ。歌も芝居もダンスもいまさらではあるが憎らしいほどうまい。今後も月組の大きな戦力になりそうだ。

 

今回が月組移籍後最初の舞台となった月城かなとは、銃士隊と敵対するベルナルド。愛希扮するルイをめぐって珠城と恋敵ともなる濃い役で、これがまたセオリー通りの黒づくめの衣装で強烈な印象を残すおいしい役。悪役の鋭い眼光が端正な美貌から発されると、その魅力は倍増。「るろうに剣心」以来のはまり役になりそうだ。

 

専科の一樹が悪の筆頭マザラン枢機卿。沙央くらまがルイ14世のいとこで宮廷をかきまわすモンパンシェ公爵夫人。いずれも専科ならではの好リリーフだった。

 

あと早乙女わかばや海乃美月といった娘役陣もそれなりの見せ場があるが、一番の鍵を握るルイの双子の兄弟役ジョルジュ役に風間柚乃が大抜擢。一幕後半からの登場だが、清新な演技で場をさらった。銃士隊メンバーとして、さらにフィナーレのロケットにも出演しており、全編を通じての活躍ぶりだった。

 

©宝塚歌劇支局プラス7月15日記 薮下哲司

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 575

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>