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綾凰華、有終の美飾る 雪組公演、ミュージカル「ファントム」新人公演

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新人公演プログラムより

 

綾凰華、有終の美飾る 雪組公演、ミュージカル「ファントム」新人公演

 

雪組トップコンビ、望海風斗、真彩希帆の好演で大人気のミュージカル「ファントム」(中村一徳潤色、演出)新人公演が27日、宝塚大劇場で行われた。

 

初演以来4度目となった今回の公演、パリ・オペラ座の装置を一新、映像を駆使したステージングが効果的なうえ、望海、真彩の2人が見事な歌を披露して、これまでの公演とは一味も二味も違った出来栄えで、連日、当日券も発売と同時に完売の賑わいを見せている。

 

新人公演はこの公演で新人公演卒業となる研7の綾凰華が、「ひかりふる路」以来二度目の新人公演主役でファントムに挑戦、クリスティーヌには「幕末太陽伝」以来二度目のヒロインとなった野々花ひまり、キャリエールが前回の「凱旋門」新人公演で主演した縣千というキャスティング。本公演が素晴らしいだけに3人ともプレッシャーはこの上もなく大きかったと思うが、新人公演らしい若々しさと懸命な取り組みに好感が持て、大きな破綻もなくきれいにまとまった公演となった。

 

一本立て公演の常で、時間の関係でカルロッタの楽屋の場面やオペラ座団員たちの場面のカットがあり、フィナーレと休憩なしで約2時間弱。

 

エリック(ファントム)の綾は、「ひかりふる路」の時と比べると、歌唱に格段の成長がみられ、難曲ぞろいのナンバーをどれも無難にクリア。特訓の成果を大舞台で披露した。演技的にも甘いマスクにふさわしく威圧的なイメージを捨て、悲劇の青年エリックという純真な部分に絞ったアプローチが功を奏し、後半の親子の対面シーンが感動的に盛り上がった。プロローグと後半の格闘シーンでマスクが外れるというアクシデントが何度もあったが、巧みにカバーしてハプニングへの臨機応変なところも見せ、大器の片りんもうかがわせた。

 

クリスティーヌの野々花も、幕開きの「パリのメロディー」や「HOME」「My True Love」と名曲ぞろいのナンバーを破綻なく歌い、とくにファントムに「素顔を見せて」と歌う一番の難曲「My True Love」は入魂の歌いこみだった。綾、野々花ともに本役二人のうまさに引っ張られた感じで、雪組メンバー自体の歌唱力がアップしたようにも思われる。

 

その典型がキャリエールに扮した縣千。101期生ということは研4で、ファントムの父親であるキャリエール役というのはちょっと酷なような気がしたのだが、端正なマスクにひげを蓄え、若さを抑えた落ち着いた演技と歌がなかなか見事で、今回の新人公演で一番の出来栄えだったといっていいのではないだろうか。クライマックスのエリックとの銀橋の場面が感動的に盛り上がったのは受けの縣が自然に父親に見えたからでもある。綾より上背があり、父親としての風格が出せたことも大きい。

 

この3人以外ではシャンドン伯爵の彩海せらの清新な雰囲気が印象的。さわやかな二枚目ぶりで今後の活躍に期待したい。オペラ座の新支配人ショレは陽向春輝。芝居巧者の二枚目としてこれからの活躍が期待されていたのだが、この公演で退団が発表された。ショレ役も嫌みのないオーバーアクトで、彼女ならではのうまさが光っていた。妻のカルロッタは羽織夕夏。この公演随一の道化的役どころをぎりぎりの線まではじけまくり、そのうまさで感心させられた。

 

あとは楽屋番ジャン・クロードの鳳華(ほうか)はるな、エリックの母親ベラドーヴァの有栖妃華(ありす・ひめか)、オペラ座の団員セルジョの眞ノ宮るい、若かりし頃のキャリエールの真友月れあといったところが役的に目立つぐらい。しどころはあるが出番が短く、役が少ないのがこの公演の弱点。新人公演は本公演の半分の人数だがアンサンブルでさえまだ多いぐらいだった。前回新人公演でヒロインを演じた潤花はシャンドン伯爵の愛人ソレリ役(本役は彩みちる)だったが台詞は一言というのも寂しかった。

 

©宝塚歌劇支局プラス11月30日記 薮下哲司

 

 

 

2018年宝塚各組の魅力を分析!「宝塚イズム38」12月1日発売!

 

宝塚歌劇専門の唯一の愛ある評論誌「宝塚イズム」(青弓社刊、薮下哲司、鶴岡英理子編、著)の最新号「38」(定価1600円+税)が12月1日から全国大型書店で一斉に発売されます。

 

最新号のトップ特集は花組・明日海りおを筆頭に月組・珠城りょう、雪組・望海風斗、星組・紅ゆずるそして宙組・真風涼帆が率いる各組の魅力をとことん分析、105周年を迎える来年に向けての期待と課題を考えます。

 

一方、「エリザベート」などのヒットメイカー、小池修一郎がすっかりベテラン格となり、若手作家の育成が急務の宝塚にあって上田久美子、小柳奈穂子、生田大和の3人が急成長、今号ではこの3人にスポットをあててその個性と魅力についても論じてもらいます。

 

ほかにOGロングインタビューは、元宙組トップスターで「マイ・フェア・レディ」のイライザ役で女優デビューしたばかりの朝夏まなとさんの登場。宝塚への愛とこれからの抱負を語ってくれました。各組全公演の公演評、新人公演評、そしてOGが出演した話題の公演についてもフォロー、今回も宝塚ファンには欠かせない一冊です。是非書店でお買い求めください。

 

 

 


 明日海りお、魅力全開!スペシャルステージ「Delight Holiday」開幕

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   ©宝塚歌劇団

 

 明日海りお、魅力全開!スペシャルステージ「Delight Holiday」開幕

 

明日海りおを中心とする花組選抜メンバー18人によるコンサート、スペシャルステージ「Delight Holiday」(稲葉太地作、演出)が、東京ディズニーランド隣の舞浜アンフィシアターで11月30日に開幕、広い会場が連日超満員のファンの熱気でにぎわっている。

 

「Delight―」は、トップ就任4年を超え、花も実もあるビッグスターに成長した明日海が初めて開くコンサート。JR舞浜駅をおりて劇場へ行くまでのイクスピディアには明日海のポスターがいたるところに貼られていて最初は小さかったものが劇場に近づくにつれてだんだん大きくなっていくという、観劇前からいやがおうでも盛り上がるという憎い演出。アンバサダーホテルを抜けたところに建つアンフィシアターはもともとシルク・ド・ソレイユの専用劇場として建設されたものだが、東北大震災後にシルクが撤退、現在はコンサートホールとして使用されていて、宝塚が使うのは今回が初めて。実は東京宝塚劇場が改築されるとき、日比谷の敷地が手狭なため別の場所に移設する話が持ち上がり、この舞浜が第一候補だった。結局、さまざまな理由で日比谷の同じ場所で改築され、現在に至っているが、そんなゆかりのある場所でのコンサートだ。

 

アンフィシアターは半円形のステージが客席に飛び出していて、客席はそれを取り囲むように作られている、今はない梅田コマや新宿コマ、ニューヨークのエブリフィッシャーホールを思い起こさせる作りだ。ショーはその半円形のステージで繰り広げられ、時折、出演者が客席に降りてパフォーマンスするので、人数が少なくても迫力があり、観客も一体となってショーに入り込める臨場感あるステージとなった。

 

コンサートは明日海のワンマンショーというより明日海と花組の仲間たちといった感じの和やかな雰囲気のステージで、明日海の歌はもちろんだが、仙名彩世や鳳月杏らの歌もちりばめ、平成ヒットメドレーやDisneyメドレーでは出演者全員の見せ場、聞かせどころを作るなど明日海の組子への気遣いが感じられるのが見ていて気持ちがよかった。曲間のMCもずいぶんこなれてきたようだ。

 

プロローグはソフト帽を目深にかぶった明日海が、半円形のステージの中央からセリあがりで登場、そのかっこよさに満員の会場からは悲鳴に似た歓声が上がり、幕開けからボルテージは最高潮。3曲目の「Delight、Delight」でさっそく観客と一体になる振付指導があって、さらに盛り上がるという寸法。

 

明日海がピアノで「ラグタイム」を演奏するとそれがそのままオーケストラに受け継がれて、鳳月杏、優波慧、聖乃あすかの3人の男役スターがスリットの入ったロングドレスで登場、明日海とセクシーなダンスで濃厚に絡むという場面もあって目を楽しませてくれる。

 

プリンセス・プリンセスからDA PUMPの「U・S・A」まで平成元年から30年までのヒット曲をメドレーで歌い継ぐコーナーでは聖乃が「きよしのずんどこ節」を合いの手を「あすか」に変えて大いに盛り上げ、仙名が会場内の通路をトロッコに乗って歌った安室奈美恵の「HERO」を絶唱、これが聴きものだった。AKBやモー娘。のヒット曲を娘役メンバーが歌ったり、平井堅の曲を鳳月が歌うなどおなじみのJポップがずらり。明日海が何を歌ったかは見てのお楽しみというところにしよう。

 

続く「Delight stage」は、明日海がこれまでに出演した作品からの思い出の曲を歌うというコーナーで、ここが日替わりで曲が変わる。Aパターンを観劇したのだが「アリスの恋人」「エリザベート」「EXCITER!」「ハンナのお花屋さん」と続いた。「エリザベート」は芽吹幸奈を相手に「私が踊るとき」と優波慧を相手に「闇が広がる」だった。思わず明日海トートをもういちど見たくなる充実の歌唱だった。

 

ここで鳳月と仙名が残って出演者の紹介コーナーへ。この日は凛乃しずかと泉まいらが登場したが「小学生のころからの明日海さんファン」という凛乃が、ファン目線丸出しで明日海の魅力を語り、会場大爆笑の一コマも。コンサートはなごやかに進む。

 

続くコーナーは舞浜にちなんだDisneyコーナー。城妃美伶が「モアナと伝説の海」の主題歌、鳳月が「リメンバー・ミー」の主題歌、「メリー・ポピンズ」からは芽吹幸奈が「スプーン一杯の幸福」と続け、明日海が「ヘラクレス」仙名が「アナと雪の女王」のヒット曲「ありのままに」を歌い継いで最後に「アラジン」から極めつけ「ホール・ニュー・ワールド」を明日海と仙名がデュエットするという渋い選曲。

 

このあとは華やかな大詰めからフィナーレに展開して、休憩なしで1時間50分があっという間だった。ディズニーランドに隣接した舞浜という場所柄か、コンサートだからか、やたらに男性客が多かったのも今回の特徴。東京宝塚劇場には入りにくいがここなら堂々と入れそう、ということかも。ディズニーランドのアトラクションのひとつといった感覚で見られるのかもしれない。場内のクリスマスツリーやグッズ売り場など撮影ポイントも大賑わい。舞浜でのコンサートは大成功だった。

 

©宝塚歌劇支局プラス12月3日記 薮下哲司

 

和央ようか 芸能生活30周年記念コンサートを開催 

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和央ようか 芸能生活30周年記念コンサートを開催 

 

元宙組トップスター、和央ようかが、宝塚での初舞台から30周年を迎えたのを機に、12月2日に東京・コットンクラブ、4日に大阪・ビルボード大阪で「YW Memories and Melodies」と題したコンサートを行った。いずれも狭いライブハウスなので熱心なファンクラブのメンバーで満員の盛況。退団後12年、すっかり女っぽくなったが、男役時代のかっこよさもそのまま健在、根強い人気をうかがわせた。

 

「スカーレット・ピンパーネル」などの作曲家フランク・ワイルドホーンと結婚、現在はニューヨーク住まいだが、このコンサートと来年1〜2月にかけての「ベルサイユのばら45」出演のため久々の長期里帰り中。

 

コンサートは初舞台の「キス・ミー・ケイト」の「ショーが始まる」と「So in Love」からスタート。出演作の主題歌を一気に歌いながら当時の思い出トークを交えるという構成でファンならずとも当時のことを思い出しながら懐かしい気分に浸れた。

 

まずは研2で出演した「ベルサイユのばら」のオープニングから。本公演は小公子だったが新人公演でオスカル役に大抜擢され、「私の運命を大きく変えた」という当時のエピソードから始まってバウ初主演の「大上海」宙組トップ時代の「カステル・ミラージュ」と続き、現在、雪組で上演中の「ファントム」からも3曲を披露、元祖の貫録を示した。「聖なる夜の奇跡」「BOX MAN」などのドラマシティ公演の主題歌も忘れず、全国ツアーでレット・バトラーを演じた「風と共に去りぬ」やルドルフを演じた「うたかたの恋」からもそれぞれ一曲と、出演作の主要曲をほぼすべて網羅。ワイルドホーンとの出会いともなったサヨナラ公演「NEVER SAY GOODBYE」からの曲で宝塚時代をしめくくり、退団後の作品からは「CHICAGO」「マレーネ・ディートリッヒ」「ドラキュラ」と続けた。ワイルドホーンが彼女のためにプレゼントしたクリスマスソングで季節感も演出するというサービスも。

 

アンコールでは12月1日からNHK「みんなのうた」でオンエアされている「しんかいぎょのまち」(徳永美奈子作曲、すずきかなこ作詞)を「歌っているのが私じゃないといわれているみたいなので」と初めて生歌で披露。なるほどこれまでの和央のイメージとは全く違ったかわいい歌で意外な新境地といったところ。1月末までオンエアされるという。そして最後はやはり「NEVER SAY GOODBYE」の同名主題歌で30年アニバーサリーコンサートの幕を閉じた。黒のシンプルなパンツスーツに長い髪が印象的、肩の力の抜けた男前のかっこいい女性がそこにいた。

 

コンサートは18日にも東京・コットンクラブで開催される。

 

©宝塚歌劇支局プラス12月5日記 薮下哲司

柚香光×水美舞斗、同期コンビ競演「メランコリック・ジゴロ」全国ツアー

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  ©宝塚歌劇団

 

柚香光×水美舞斗、同期コンビ競演「メランコリック・ジゴロ」全国ツアー

 

人気スター、柚香光を中心とした花組全国ツアー公演、サスペンス・コメディ「メランコリック・ジゴロ」(正塚晴彦作、演出)とスパークリング・ショー「EXCITER‼2018」(藤井大介作、演出)が15日、ツアー最終地、大阪・梅田芸術劇場メインホールでの公演の初日を迎えた。客席には前日に「ファントム」宝塚大劇場公演を終えたばかりの雪組トップコンビ、望海風斗、真彩希帆に加えて凪七瑠海も駆け付け、満員の会場は開演前から興奮状態、そんななか始まった公演は、息の合った同期コンビのパワーが爆発、エネルギッシュなステージとなった。

 

「メランコリック・ジゴロ」は1993年に安寿ミラ、真矢みきのコンビで初演され、ヤンミキコンビの人気を決定づけた伝説の作品。二人の印象が強すぎてなかなか再演されなかったが2008、10年に真飛聖、壮一帆時代の花組で久々に再演され、2015年には朝夏まなと、真風涼帆の宙組コンビでも再演され、今回は以来3年ぶりの上演。

 

歴代では一番若いコンビとなったが、もともと主人公のダニエルは大学生という設定なので違和感なく、柚香と水美が同期ということもあって、二人の演技の間が絶妙で、見ていてとにかく心地よかった。演じている方も楽しく、気持ちよかったのではないかと思う。

 

田舎娘アネット(春妃うらら)との浮気がもとでパトロン(華雅りりか)に捨てられ、無一文なったダニエル(柚香)が親友スタン(水美)のもうけ話に乗せられたことから、次々に予想外の話に巻き込まれるというコメディータッチのミュージカル。第一次世界大戦をはさんで、貨幣価値が大変動したことが、お話の大きなカギになっているのだが、そのことを誰も知らなかったというのは、あまりにも世間知らずというかなんというか。まあそんな細かいことをスルー出来れば、かっこいい主演二人を見ているだけで十分楽しくみられる。

 

宝塚のスターになるために生まれてきたような華やかさのある柚香は、入団10年たってスーツ姿の360度どこから見てもかっこよく見えるすべを身に着け、長い手足を美しくしなやかにさばくと周囲の空気が動くような錯覚さえ感じさせた。これぞ宝塚のスターの王道で、ショーのセンターがこれほど似合うスターは近来にない。

 

芝居心もあって「メランコリック・ジゴロ」で言えば、どちらかというとダニエルよりスタンの方が似合うタイプ。ダニエルはプレイボーイぶってはいるが実は優しくまじめな青年というところがミソで、朝夏まなとはその辺のバランスがうまかったが、柚香だと最後のハッピーエンドの後、フェリシア(舞空瞳)をちゃんと幸せにしてくれるかどうか、ちょっと不安なところが見えてしまう。そんなちょっとワルで崩れた部分が垣間見えるのが柚香の魅力でもある。新しいタイプの男役スターとして、これからの活躍に大いに期待したい。

 

一方、スタン役の水美は、バウ初主演以後、急速に赤丸上昇中。すっかり花組の重要な戦力になった。端正な顔立ちにシャープなダンスが強みだ。スーツ姿もすっかり身体になじみ、柚香との相棒感がなんともいえず心地いい。ダニエルにもうけ話を口説くくだり台詞のテンポが抜群だった。

 

娘役はダニエルを兄と信じて訪ねてくるフェリシアが舞空、スタンの恋人ティーナが華優希。それぞれの個性をうまく振り分けて適役好演だったが、それぞれの相手役の組み方が逆の方が似合うような気がした。

 

ほかではフォンダリの羽立光来と息子バロットの飛龍つかさがひときわ翔んでいた。バロットの妻ルシルの真鳳つぐみの弾けぶりも面白く、謎の浮浪者、高翔みず希が舞台を締めたのはいうまでもない。

 

ショーは花組の名物となったおなじみショーの再演だが、柚香のショースターとしての華やかさが十二分に生かされ、テンポ抜群のあっというまの50分だった。柚香はダンスと存在感の大きさで歌の弱さを完全に忘れさせた。客席おりが何度もあって、ファンサービスも堂に入ってきたようだ。恒例チェンジボックスの変身シーンのかっこよさも極めつけだった。

 

柚香と水美のコンビがショーのメーンになっていて、二人のコンビネーションのよさもショーを盛り上げた一因。踊れる娘役、舞空の見せ場もあって、ポスト愛希れいかを思わせて頼もしかった。歌のうまさで定評のある和海しょう、羽立、乙羽映見らの聴かせどころもきちんとあり、花組少数精鋭のパワー満開だった。

 

 

©宝塚歌劇支局プラス12月15日記 薮下哲司

 

 

 

荻田浩一がOSKでアーサー王伝説を!「円卓の騎士」開幕

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OSK日本歌劇団資料より

 

荻田浩一がOSKでアーサー王伝説を!「円卓の騎士」開幕

 

元宝塚歌劇団で現在ミュージカル界で幅広く活躍している演出家、荻田浩一氏が宝塚と同じ女性だけのレビュー劇団、OSKでミュージカル・ファンタジー「円卓の騎士」を演出、21日、大阪・近鉄アート館で初日の幕を開けた。涼風真世らが出演したミュージカル「レベッカ」(山田卓也演出)の大阪公演もスタートしたので合わせて報告しよう。

 

「円卓の騎士」は、映画、舞台でよく知られるアーサー王伝説を題材にしたミュージカル。宝塚でも宙組誕生時に上演された「エクスカリバー」(小池修一郎脚本、演出)や月組の珠城りょうのトップお披露目公演となったドラマシティ公演「アーサー王伝説」(石田昌也脚本、演出)がある。今回荻田氏が取り組んだ「円卓の騎士」は、中世に語り伝えられたアーサー王伝説の原点を掘り起こしたミュージカル・ファンタジーで、アーサー王に扮した楊琳、王妃グイネヴィアに扮した舞美りんはじめOSKの実力派メンバーの好演もあって幻想的で見ごたえのある舞台に仕上げている。

 

アーサー王伝説が、イギリスの5〜6世紀に生まれたものであるということから、今回の舞台は忠実にその時代を背景にしていて、当時のイギリスを制覇していた独自の信仰に対して大陸から伝えられてきたキリスト教との対立が、物語の大きなカギとなる設定で、王妃グイネヴィアと騎士ランスロットの不倫も魔法使いの陰謀であるという解釈になっていて、舞台全体に常にかすみがかかっているような舞台づくりが、西洋のお伽噺をひもとくような懐かしくも幻想的な雰囲気で、なんともいえない不思議な空間を作り上げた。

 

オープニングは若きアーサー王がまぎれこんだ森には妖精たちが戯れている。妖精たちの衣装は、身体にフィットしたタイツのような感じに花飾りがついている「PUCK」に登場する妖精たちのような装い。幻想的な妖精たちのダンスに誘われるかかのように物語が進展していく。これぞまさしく久々に見る荻田ワールドだ。

 

物語も、ミュージカル「キャメロット」で知られるアーサー王伝説とはちょっと異なっていて魔法使いマーリン(愛瀬光)や湖の妖精イグレイン(朝香櫻子)がカギを握る重要なキャラクターとして登場、全体的にファンタジー色が強いのが特色。なかでもアーサーの従妹で幼馴染の娘、モルガン・ル・フェイ(城月れい)の存在が異色。

 

アーサー王に扮した楊は、朝夏まなとに似た凛とした雰囲気の男役で、立ち姿が美しく、ダンスに切れ味があるのが魅力的。生まれながら王となる運命であるアーサーがたくましく成長していく姿をさわやかに演じている。

 

王妃グイネヴィアの舞美りらは大きな瞳と明るい笑顔が印象的な娘役。ヒロインとしての華やかさがあって今後の活躍がおおいに期待される存在。今回も本来の明るさが、暗くなりがちなこの舞台を救っていた。

 

アーサーの親友でグイネヴィアとの不倫を疑われる騎士ランスロットは若手ホープの翼和希。アイドル的資質が舞台映えして若き騎士ランスロットにはぴったりのキャスティング。ほかにモルガン・ル・フェイの城月の歌とダンスの実力の確かさが印象的だった。また、その息子役のモードレッド役の実花ももが、後半で大きな存在感を示した。

 

全員で13人という少人数の公演だが、それぞれがパワフルでその少なさを感じさせなかった。

 

 

 

一方、ミュージカル「レベッカ」は来年1月の東京・シアタークリエ公演に先駆けて年末の20日からシアター・ドラマシティで大阪公演が始まった。ダフネ・デュ・モーリア原作のサスペンスミステリーの舞台化で、「エリザベート」のクンツェ=リーバイコンビによるミュージカルで、8年ぶりの再演。

 

レベッカ役が大塚千弘、平野綾、桜井玲香のトリプルキャスト。マキシム役は山口祐一郎、ダンバース夫人が涼風真世と保坂知寿のダブルキャスト。初日は乃木坂46出身の桜井と涼風というバージョン。桜井の初々しい演技が印象的だった。

 

装置が一新された以外、演出は初演とほぼ同じだったが、森公美子、石川禅、吉野圭吾、今拓哉、そして出雲綾と東宝ミュージカル常連の実力派がわきを固めて、レベルの高い個人技が堪能できる本格的ミュージカルに仕上がった。なかでも涼風の圧倒的な存在感がここでも見ごたえ聴きごたえがあった。日本のミュージカル界になくてはならない存在になりつつあるようだ。

 

©宝塚歌劇支局プラス12月22日記 薮下哲司

 

 

轟悠と明日海りおら4組トップが大集合!「タカラヅカスペシャル2018」開催

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  タカラヅカスペシャル チラシより

 

轟悠と明日海りおら4組トップが大集合!「タカラヅカスペシャル2018」開催

 

年に一度のタカラジェンヌの祭典「タカラヅカスペシャル2018」~Say!Hey!Show Up‼~(石田昌也監修、中村一徳、藤井大介、稲葉太地構成、演出)が21、22の両日、梅田芸術劇場メインホール)で開かれた。

 

緞帳が上がり、今年の各組の舞台映像が紹介され、スクリーンが振り落とされると轟悠を中心に明日海りお、珠城りょう、望海風斗、紅ゆずるの各組トップスターはじめ出演者全員が板付きで勢ぞろい。「タカラヅカ・オーレ!」で華やかにオープニング。今回は専科3人、花組15人、月組11人、雪組12人、星組12人の各組選抜53人と月組のコーラスメンバー6人とあわせて総勢59人の出演。全員そろうとさすがに豪華絢爛で、どこを向いてもスターという感じ。

 

今年は、この催しが梅芸で開催されるようになってから10年、宙組の創立20周年、平成30年、そして宝塚バウホール開場40年と「10、20、30、40」がテーマで「タカラヅカ・オーレ!」に続いて明日海を中心に花組が「ジタン・デ・ジタン」「ファンシー・タッチ」珠城を中心にした月組が「ミリオン・ドリームズ」「プレスティージュ」望海風斗を中心とした雪組が「パラダイストロピカーナ」「サジタリウス」紅を中心とした星組が「ナルシス・ノアール」「ジュビレーション」轟と華形ひかる、凪七瑠海の専科メンバーが「レ・シェルバン」と平成元年から10年までの各組ショーからの主題歌をメドレーで披露。「シトラスの風」を不在の宙組に代わって全員が歌い継いだ。

 

平成11年から20年は、美弥るりかの「レッツジャズ」を皮切りに各組スターがメドレー、「アプローズタカラヅカ」を仙名彩世と真彩希帆、「NEVER SAY GOODBYE」から「ONE HEART」を明日海と望海がそれぞれデュエットするという豪華な組み合わせも。

 

同21年から30年は、彩風咲奈の「ミロワール」から始まって柚香光が「EXCITER!」と続け珠城と紅の「幕末太陽伝」「カルーセル輪舞曲」で締めくくった。

 

各組の2018年を振り返るコーナーは花組がトップバッター。続いて月組へとバトンタッチ。「ポーの一族」や「カンパニー」などを歌い継いだ。一部のラストは今年亡くなった宝塚の作曲家、中元清純氏を偲んで名曲メドレー。数々の名曲のなか「星の牧場」の「今もお前が」を瀬戸かずやと綺城ひか理の2人が歌ったのが懐かしかった。最後は極めつけ「タカラジェンヌに栄光あれ」を全員で合唱した。

 

休憩後の二部はバウホール40周年を記念してバウで上演されたミュージカルからトップコンビをスイッチしての主題歌メドレー。「回転木馬」を明日海と綺咲、「南太平洋」を紅と真彩、「オクラホマ」を珠城と仙名、「サウンド・オブ・ミュージック」を望海と美園というカップル。明日海と綺咲が思いのほかよく似合った。

 

続いて轟の「アナジ」からバウの名曲メドレー。柚香が「ディーン」から「いつか」を歌ったが、ジェームス・ディーンの伝記ミュージカルだが、これはちょっと見たいと思わせた。朝美絢が歌った「イーハトーヴ夢」もさぞ似合うだろう。轟の高音が全く出ていないのだけがちょっと心配だった。

 

雪組、星組の2018年の振り返りコーナーのあとはトップ四人のお笑いMCコーナー。台湾公演の思い出話などで盛り上がったあと、2020年のオリンピックの話まで飛び、4人がそれまで宝塚にいるかどうかという微妙なトークに客席もハラハラドキドキだった。

 

続いて、ファンが選んだ聴きたい曲をスターが歌うリクエストコーナー。望海風斗が「華麗なるギャツビー」から「朝日の昇る前に」紅が初舞台公演「LUCKY STAR!」珠城が「太王四神記2」から「蒼穹の彼方」明日海が大好きなショー「ル・ポアゾン愛の媚薬」を歌い轟が「Passion愛の旅」で締めくくり、フィナーレとなった。

 

昨年に引き続き、トップスターにいまのところ退団予定者がいないことで、さよならモードがなく、全体に安定感のある和気あいあいとした祭典になった。来年は105周年、話題作が目白押しで、超新人の初舞台も控えており、宝塚は今年以上にさらに注目を浴びそうな予感。「宝塚歌劇支局プラス」も引き続きご愛読を!

 

©宝塚歌劇支局プラス12月22日記 薮下哲司

 

 

2018宝塚グランプリが決定! 作品賞は「ポーの一族」主演男役賞、歌唱賞は望海風斗!

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  ©宝塚歌劇団

 

 

2018宝塚グランプリが決定!

作品賞は「ポーの一族」主演男役賞、歌唱賞は望海風斗!

 

毎日文化センター(大阪)の「宝塚歌劇講座」受講者のみなさんの投票で、1年間の宝塚歌劇のベストワンを選定する恒例の「宝塚グランプリ」が26日決まった。最優秀作品賞は花組公演「ポーの一族」。最優秀男役賞は「ファントム」などの雪組トップスター、望海風斗、娘役賞は「ポーの一族」「あかねさす紫の花」などの花組トップ娘役、仙名彩世に輝いた。今年最後のしめくくりとして今回はその結果を詳しくお伝えしよう。

 

2018宝塚グランプリ受賞作品および受賞者

 

最優秀作品賞

ミュージカル 花組公演 ミュージカル・ゴシック「ポーの一族」

(小池修一郎脚本、演出)

レビュー   花組公演 ショー・スぺクタキュラー「BEAUTIFUL GARDEN」

(野口幸作作、演出)

最優秀再演賞   雪組公演 ミュージカル「ファントム」(中村一徳脚本、演出)

最優秀演出賞   中村一徳(雪組公演「ファントム」の演出に対して)

 

最優秀主演男役賞 望海風斗(「ファントム」「誠の群像」の演技に対して)

最優秀主演娘役賞 仙名彩世(「ポーの一族」「あかねさす紫の花」の演技に対して)

最優秀助演男役賞 七海ひろき(「ANOTHER WORLD」「Thunderbolt Fantasy」の演技に対して)

風間柚乃(「エリザベート」「THE LAST PARTY」の演技に対して)

最優秀助演娘(女)役賞 和希そら(「WEST SIDE STORY」の演技に対して)

 

最優秀新人賞   聖乃あすか(「ポーの一族」「MESSIAH」新人公演の演技に対して)

 

最優秀歌唱賞   望海風斗(「ファントム」の歌唱に対して)

最優秀ダンス賞  水美舞斗(「セニョール クルゼイロ」のダンスに対して)

最優秀主題歌賞  「哀しみのバンパネラ」(花組公演「ポーの一族」から)

小池修一郎作詞、太田健作曲

最優秀振付賞   Oguri(花組公演「BEAUTIFUL GARDEN」花美男子の振付によって)

最優秀衣装デザイン賞 加藤真美(星組公演「Thunderbolt Fantasy」の衣装によって)

最優秀美術賞   稲生英介(雪組公演「ファントム」花組公演「蘭陵王」の装置によって)

 

特別賞      輝月ゆうま(月組公演「BADDY」「雨に唄えば」の個性的な演技に対して)

 

2018宝塚グランプリは以上のような結果になった。

 

作品賞ミュージカル部門は、小池修一郎氏が宝塚歌劇団入団前から熱狂的なファンでひそかに舞台化の機会を温めていたという萩尾望都原作のカルト的な少女漫画を舞台化した「ポーの一族」がぶっちぎりのトップ。永遠の命を持ってしまった少年の次代を超えた放浪の旅を幻想的に描いた。明日海りおという逸材がいてこそ実現したとも言え、原作発表後46年目の奇跡の舞台化となった。主題歌賞も「ポーの一族」から「哀しみのバンパネラ」が選ばれた。2位も花組の天草四郎時貞を主人公にした「MESSIAH」だったが大差をつけて文句なしのグランプリだった。

 

レビュー部門も同じ花組公演「BEAUTIFUL GARDEN」が栄冠を獲得した。花組らしい花をテーマにした華やかなレビューで、若きレビュー作家、野口幸作氏のセンスあふれる佳作だった。振付賞もこの作品からOguriによる「花美男子」の場面が選ばれた。2位は一票差で猫をテーマにした雪組公演「Gato Bonito!」(藤井大介作、演出)だった。

 

再演賞は月組公演「エリザベート」や宙組公演「WEST SIDE STORY」などを抑えて雪組公演「ファントム」に輝いた。装置を一新、映像を効果的に使った新演出が高く評価された結果となった。演出賞もその手腕が買われた中村一徳が初の受賞となった。装置の稲生英介も美術賞を受賞した。

 

主演男役賞は、その「ファントム」で圧倒的な歌唱を披露した望海風斗に輝いた。「ポーの一族」「あかねさす紫の花」「MESSIAH」と充実した一年だった明日海りおと最後まで競り合ったが2票差で望海に決まった。主演娘役賞は来年4月退団を発表している花組のトップ娘役、仙名彩世。「ポーの一族」「あかねさす紫の花」の控えめでしっとりとした演技が買われたようだ。雪組の真彩希帆、退団した愛希れいかがこれに続いた。

 

助演男役賞は、来年3月退団を発表した星組の七海ひろきと月組の若手ホープ、風間柚乃が同点でダブル受賞となった。七海は「ANOTHER WORLD」の喜六役の軽妙な演技と台湾公演の「Thunderbolt Fantasy」の実質主役のショウフカン役で、風間は「エリザベート」本公演のルドルフと新人公演のルキーニ、さらに「THE LAST PARTY」の学生役が高く評価された。風間は昨年新人賞を受賞、二年連続受賞となった。助演娘役(女役)賞は、月組の憧花ゆりのを一票差で抑えて、宙組の実力派の男役スター、和希そらが「WEST SIDE STORY」(東京公演)のアニータ役が高く評価されて受賞した。

 

新人公演で活躍した期待の若手を対象にした注目の新人賞は、「ポーの一族」「MESSIAH」新人公演で好演した花組の聖乃あすかが、雪組の縣千に一票差で競り勝った。ほかに宙組の娘役、夢白あやと雪組の娘役、潤花にも票が入った。今後の活躍を祈りたい。

 

衣装デザイン賞は台湾の布袋劇の衣装を見事なまでにそっくりに再現した星組公演「Thunderbolt Fantasy」の加藤真美が受賞した。

 

最後に特別賞は、ショー「BADDY」の宇宙人、「雨に唄えば」で悪声の女優リナ・ラモントを好演した月組の実力派男役スター、輝月ゆうまがそのユニークな役作りと個性的な演技で選ばれた。

 

2018年の宝塚は珍しくトップスターに退団者がなくずいぶん安定感のある1年だった。年頭の「ポーの一族」から始まってミュージカル「エリザベート」「ファントム」と宝塚大劇場が連日満員になる公演が相次ぎ、話題の新作とヒット作を交互に上演していくというシステムが定着してきたようだ。来年は105周年を迎え、マスコミの注目度も増して、さらなる宝塚旋風が巻き起こりそうな予感。楽しみな年になりそうだ。

 

©宝塚歌劇支局プラス12月27日記 薮下哲司

 

 

 

望海風斗、真彩希帆主演「20世紀号に乗って」鑑賞ツアーのお知らせ

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  ©宝塚歌劇団

 

望海風斗、真彩希帆主演 雪組東急シアターオーブ公演鑑賞ツアー決定!

ブロードウェイ・ミュージカル「20世紀号に乗って」鑑賞ツアーのお知らせ

 

毎日新聞旅行(大阪)では、望海風斗を中心に真彩希帆ら雪組選抜メンバーが出演、東京・渋谷の東急シアターオーブで上演されるブロードウェイ・ミュージカル「20世紀号に乗って」(原田諒脚本、演出)の3月28日(木)2時の回と翌29日(金)2時の回を贅沢に2回鑑賞する一泊二日のツアー(大阪発)を企画、新春1月4日午前10時から電話予約受け付けを開始します。

 

「20世紀号に乗って」は、1930年代のアメリカ、シカゴとニューヨークを結ぶ高級列車「特急20世紀号」にかつての恋人で人気女優リリー(真彩)が乗ることを突き止めたプロデューサーのオスカー(望海)が新作舞台の主演女優に彼女を担ぎ出そうとあの手この手さまざまのアプローチをするコメディータッチの楽しいミュージカル。1978年に初演され、日本でも1990年、宮本亜門演出、大地真央主演で上演され大評判となりました。サイ・コールマン作曲による軽快な音楽に乗ってスピーディーに展開する快作です。望海、真彩のほか彩風咲奈、彩凪翔、朝美絢ら雪組メンバー34人と専科の京三紗が出演します。

 

ツアーは、3月28日(木)朝8時半ごろ新大阪を新幹線のぞみで出発、正午ごろ渋谷駅前の東急REIホテルでランチと宝塚のマエストロ、薮下哲司の講演(作品解説など)を聞いていただいた後「20世紀号に乗って」午後2時の回を鑑賞。東急REIホテルに宿泊したあと翌29日の午後2時の回を鑑賞、午後7時ごろ東京発新幹線のぞみで帰阪(9時半ごろ)というスケジュールです。

 

ツアー料金は二人一室でおひとり79000円。一人一室の場合は83000円。ちょっぴり贅沢ですが日比谷の東京宝塚劇場ではなく、渋谷のヒカリエ内にある劇場ということで地理不案内の方もおひとりでも安心して参加していただくことができ、歌唱力に定評のあるトップコンビ望海風斗と真彩希帆の魅力を堪能できるブロードウェイ・ミュージカルを良席で心ゆくまで鑑賞できるツアーです。チケットの一般発売は2月3日ですが、東京以外での公演の予定がなく発売と同時に完売必至の人気公演。またとない機会です、ぜひお早めにお申し込みください。

 

お申込みは毎日新聞旅行☎06(6346)8800(平日午前10時〜午後6時、年末29日から1月3日まで休業)まで。締め切りは1月15日です。最少催行人数は15名。皆さまのお申込みをお待ちしております。


宝塚105周年幕開け!各トップコンビが初日挨拶 星組公演「霧深きエルべのほとり」開幕

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©宝塚歌劇団

 

ブログをお読みくださっている皆様、明けましておめでとうございます。

本年も宝塚歌劇支局プラスをどうぞご贔屓に!

新年のブログは、105周年で轟悠を始め各組トップコンビが挨拶をした星組大劇場公演からスタートです。

 

 

宝塚105周年幕開け!轟悠はじめ各組トップコンビが初日挨拶

星組公演「霧深きエルべのほとり」開幕

 

宝塚105周年アニバーサリーイヤーが元日、宝塚大劇場で華やかにスタートした。

11時半からは月組・美弥るりか、宙組・芹香斗亜、花組・柚香光の各組2番手スターが大劇場フロアの大階段で鏡開き、一人ひとり新年の抱負を語った。各組人気スターの登場とあって早朝からファンが長蛇の列を作り、入場制限をするほどの熱気。終了後には参加者全員にたる酒が振る舞われた。

 

 大劇場も立ち見も完売の熱気のなか午後1時、緞帳が上がると専科の轟悠を中心に花組・明日海りお、仙名彩世、月組・珠城りょう、美園さくら、宙組・真風涼帆、星風まどかの7人が紋付袴姿の正装で勢ぞろい。轟が「宝塚歌劇は今年105周年を迎えました。さらなる精進をしますのでみなさま今後とも宝塚の応援、よろしくお願いいたします」とあいさつ、明日海らも今年の抱負を語り、最後は「おお宝塚」を合唱しながら銀橋を渡り、満員の客席から大きな拍手が沸き起こった。

 

 いったん緞帳が下りたあと、紅ゆずるの開幕アナウンスがあってから年頭を飾るワンスアポン・ア・タイム・イン・タカラヅカ「霧深きエルベのほとり」(菊田一夫作、上田久美子潤色、演出)が開幕。客電が消えると客席は暗転、銀橋中央にスポットが当たって紅が登場、懐かしい「鴎の歌」を歌いあげる。これまでの「エルベ」は船の舳先に乗って歌うところから開幕したのでのっけから意外な展開。歌い終わると舞台に大階段が登場、ビール祭りの華やかな群舞がプロローグとなる。正月らしいオープニングに心が弾む。

 

 「霧深き―」は、「ジャワの踊り子」や「ダル・レークの恋」など数多くの作品を宝塚に提供している劇作家、菊田一夫氏が宝塚のために書き下ろした最後の作品。当時のトップスター、内重(うちのえ)のぼるの当たり役となり3度再演、その後も1973年に古城都、1983年に順みつきの主演で再演されている。主題歌(入江薫作曲)のよさと、男性的で一種、豪快な雰囲気が当時の宝塚にはない新鮮さだったことが受けた理由ではないかと思うが、私は、当時からあまり好きな演目ではなかった。船乗りと上流階級の娘の恋という身分違いの恋だが、作者がどちらに芯を置いて書いているのかがあいまいで、身分違いの恋はご法度という当時の価値観に沿った展開がなんとも古めかしく洋物新派悲劇に思えたからだ。21世紀の物語の紡ぎ手と定評のある上田久美子氏がこの作品のどこに魅力を感じてリニューアルしたのか楽しみに見た。

 

 オープニング以降はほぼ従来の「エルベ」と同じ。船乗りのカール(紅)がハンブルクの酒場で家出娘のマルギット(綺咲愛理)と出会って恋に落ち、結婚の約束をするが、マルギットの許嫁のフロリアン(礼真琴)や父親(一樹千尋)が連れ戻しにやってきて……という展開。

 

 カールの船乗り仲間トビアス(七海ひろき)が今回のためのオリジナルの役で、カールの妹ベティ(水乃ゆり)と絡む。船員仲間のリーダー役で七海の退団公演のために花を添えたといえようか。相手役の水乃も破格の抜擢で期待値がうかがえた。

 

 回り舞台やセリなどをフルに活用して、展開はかなりスピーディーではあるが、基本的なストーリーは同じ。昭和クラシックの古さはぬぐえない。やはりここは紅のカール役の出来栄えにすべてがかかる。

 

 その紅だが、いいかげんで不良っぽくふるまっていながら実は過去に深い心の傷があり、心優しい繊細さを持ち合わせているカールという青年役を、入江メロディーの主題歌の力にも助けられてこれ以上ない好演、近来のはまり役となった。ここはもう紅のカールを存分に楽しむしかないだろう。

 

 マルギットの綺咲は、何不自由なく育ち、愛してくれる男性もいながら、父親への不信感から自由を求めて家出する。家出の動機がやや納得がいかないものの、世間知らずの令嬢という雰囲気はよくでていて、彼女もこれまででは一番ではないか。

 

 礼のフロリアンは、マルギットと幼馴染で心底、彼女を愛している上流階級の青年。分別もあり、マルギットとカールの関係にも理解を示すことができるスマートさも持ち合わせている。なかなか難しい役どころだが、礼が裏表のないまっすぐな役作りで臨んでいて、好感が持てた。

 

 もう一人の大きな役は、マルギットの父親役ヨゼフの一樹千尋。ベテランの貫禄でドラマを引き締めた。ヴェロニカ役の英真なおきも、後半の見せ場で泣かせる。

 

 カールをひそかに愛しているマルギットの妹シュザンヌ(有沙瞳)やカールの昔の恋人アンゼリカ(音羽みのり)といった役がワンポイントで印象的。男役はカールの船員仲間ぐらいであまり印象に残らないなか少年ヨーニー役の天飛華音(あまと・かのん)が得な役で儲け役だった。初演以来、名バイプレイヤーが演じてきた湖畔ホテルの支配人は美稀千種が演じ、彼女ならではのいい味を見せた。

 

 後半のクライマックスでは客席のあちこちから涙をすする音が聞こえたが、終わってみれば若手男役陣の見せ場があまりないことの不満もあって賛否両論の感想がとびかった。ここは宝塚ならではの紅と綺咲の甘く悲しいラブストーリーに酔えるかどうかだろう。

 

 スーパー・レビュー「ESTRELLASエストレージャス〜星たち〜」(中村暁作、演出)は、スペイン語で星を意味するエストレーラの複数形であるエストレージャスをタイトルに星組のスターたちの輝きをテーマにしたショー。オープニングは舞台中央のセリのうえにゴールドの衣装に輝く紅が登場。スパニッシュ風ロックの躍動感あふれるダンスシーンから、JポップやKポップ、さらにはスタンダードナンバーとおなじみの曲をバックに、次々に大群舞が展開する華やかなレビュー。中詰めでは客席おりがあって2階客席でも歌い踊るサービスぶり。

 

紅と綺咲を中心に礼がサポートする星組のショーパターンが定着、この公演で退団する七海の銀橋ソロもふんだんにあって、七海ファンはレビューでやっと笑顔を取り戻した。

 

©宝塚歌劇支局プラス1月2日 薮下哲司記

 

 

 

 

 

雪組東急シアターオーブ公演「20世紀号に乗って」鑑賞ツアー現地集合コース&日帰りコースを追加!

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©宝塚歌劇団

 

望海風斗主演 東急シアターオーブ公演鑑賞ツアー追加募集決定!

ブロードウェイ・ミュージカル「20世紀号に乗って」鑑賞ツアー現地集合コース&日帰りコースを追加!

 

毎日新聞旅行(大阪)では、「ファントム」の類まれな歌唱力でファンを魅了した望海風斗を中心に真彩希帆ら雪組選抜メンバーが出演、東京・渋谷の東急シアターオーブで上演されるブロードウェイ・ミュージカル「20世紀号に乗って」(原田諒脚本、演出)の3月28日(木)2時の回と翌29日(金)2時の回を贅沢に2回鑑賞する一泊二日のツアー(大阪発)を企画、新春1月4日午前10時から好評受付中ですが、大阪以外に在住されるファンの方のために現地集合プランを追加、さらに3月28日のみの日帰りコースを追加募集することになりました。

 

「20世紀号に乗って」は、1930年代のアメリカ、シカゴとニューヨークを結ぶ高級列車「特急20世紀号」にかつての恋人で人気女優リリー(真彩)が乗ることを突き止めたプロデューサーのオスカー(望海)が新作舞台の主演女優に彼女を担ぎ出そうとあの手この手さまざまのアプローチをするコメディータッチの楽しいミュージカル。1978年に初演され、日本でも1990年、宮本亜門演出、草刈正雄、大地真央主演で上演され大評判となりました。サイ・コールマン作曲による軽快な音楽に乗ってスピーディーに展開する快作です。「久々のコメディーなのでとても楽しみ」という望海、真彩のほか彩風咲奈、彩凪翔、朝美絢ら雪組メンバー34人と専科の京三紗が出演します。

 

★Aプラン 大阪発一泊二日コース 二人一室(一人)79000円、一人一室83000円

 

Aプランは、3月28日(木)朝8時半ごろ新大阪を新幹線のぞみで出発、正午ごろ渋谷駅前の東急REIホテルでランチと宝塚のマエストロ、薮下哲司の講演(作品解説など)を聞いていただいた後「20世紀号に乗って」午後2時の回を鑑賞。東京の夜を自由に満喫していただいて東急REIホテルに宿泊したあと翌29日(金)の午後2時の回を鑑賞、午後7時ごろ東京発新幹線のぞみで帰阪(9時半ごろ)というスケジュール。ツアー料金は二人一室でおひとり79000円。一人一室の場合は83000円。好評受付中です。

 

★Bプラン 現地集合一泊二日コース 二人一室(一人)59000円、一人一室63000円

 

今回はこれに大阪以外に在住される方のために、Bプランとして現地集合プランを追加募集することになりました。3月28日(木)正午に渋谷・東急REIホテルに現地集合。ランチと薮下哲司の講演を聞いていただいた後「29世紀号に乗って」午後2時の回を鑑賞。東京の夜を自由に満喫して頂いて東急REIホテルに宿泊したあと翌29日(金)の午後2時の回を鑑賞、その後は自由解散というコースです。ツアー料金は二人一室で59000円、一人一室の場合は63000円です。

 

★Cプラン 日帰りコース(大阪発)おひとり49000円

 

一方、忙しい方のためにCプランとして大阪発の日帰りコースも追加募集することになりました。3月28日(木)朝8時半ごろ新大阪を新幹線のぞみで出発、正午ごろ渋谷駅前の東急REIホテルでランチと宝塚のマエストロ、薮下哲司の講演(作品解説など)を聞いていただいた後「20世紀号に乗って」午後2時の回を鑑賞。午後7時ごろの新幹線のぞみで夜9時半ごろ帰阪というスケジュール。おひとり49000円というお手頃なコースです。

 

 

歌唱力に定評のあるトップコンビ、望海風斗と真彩希帆の魅力を堪能できるブロードウェイ・ミュージカルを良席で心ゆくまで鑑賞できるツアーです。チケットの一般発売は2月3日ですが、東京以外での公演の予定がなく発売と同時に完売必至の人気公演。またとない機会です。A、B、C三つのプランのなかからご自分のご都合に合わせて、ぜひお早めにお申し込みください。

 

お申込みは毎日新聞旅行☎06(6346)8800(平日午前10時〜午後6時)まで。B、Cプランは1月9日午前10時から受付を開始いたします。締め切りは1月15日です。皆さまのお申込みをお待ちしております。

 

美弥るりか、青年貴族を繊細に熱演!月組バウ公演「アンナ・カレーニナ」開幕

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 ©宝塚歌劇団

 

 美弥るりか、青年貴族を繊細に熱演!月組バウ公演「アンナ・カレーニナ」開幕

 

レフ・トルストイ原作による愛の名作「アンナ・カレーニナ」を舞台化した月組によるミュージカル「Anna Karenina」-アンナ・カレーニナ-(植田景子脚本、演出)が10日から宝塚バウホールで開幕した。

 

美貌の人妻アンナ・カレーニナが主人公の原作を男役がメーンの宝塚らしく不倫相手のヴィロンスキー伯爵を中心に脚色、2001年に雪組の朝海ひかる主演で初演。2008年にはバウホール30周年を記念したワークショップとして「ホフマン物語」「蒼いくちづけ」「凍てついた明日」「殉情」とともに星組の若手メンバーにより再演された。あまたあるバウ作品でも代表作のひとつ。今回、ヴィロンスキー伯爵に挑む美弥は、2008年版の星組公演で麻尋しゅんがヴィロンスキーを演じたバージョンでカレーニンを演じていて、念願の再挑戦となった。

 

この作品、何度も映画化、舞台化されていて、舞台版では一路真輝がアンナを演じたフランク・ワイルドホーン作曲のミュージカルが印象に強い、映画版も数々あるが昨年暮れから各地で上映中のロシア映画「アンナ・カレーニナ-ヴロンスキーの物語-」(カレン・シャフナザーロフ監督)がなんと宝塚と同じヴィロンスキー伯爵からの目線の作品で、アンナの死後、日露戦争に出征した伯爵が、東満州の戦地でアンナの息子セルゲイと運命的に巡り合うという展開で、原作の後日談という設定となっている。ファンの方はぜひこの映画もご覧になってほしい。回想に登場する舞踏会のシーンはさすが本物でその絢爛豪華さは目を見張るものがある。

 

さて今回の宝塚版だが、「ファントム」でパリ・オペラ座を見事に再現した稲生英介氏が今回も装置を一新、これまでの柱を自在に変化させていった装置も捨てがたいのだが、当時のロシア上流階級の屋敷を精密に再現、まずは劇場全体が非常に贅沢な雰囲気となった。ストーリーは原作をほぼ踏襲しているが、暗くなりがちな展開の中で、随所に洗練されたダンスシーン(大石裕香振付)を挿入して、舞台全体のクオリティーを高める効果をあげていた。後半、息子のセリョージャ(蘭世惠翔)と引き離されることがアンナの心に大きな影を落としていくことになるのだが、この舞台では、そのあたりはさらりと流していて、その分、悲劇性が盛り上がらない弱さはあったが、原作のエッセンスはよく伝えていたと思う。

 

男役として充実期にある美弥のヴィロンスキーは、もはや文句をつけられないくらいに素晴らしかった。若々しく、凛々しく、品格があふれ、アンナが一目で恋に落ちるという風情が身体全体からにじみ出た好演。ヘアスタイルを工夫するなど現代的な解釈もことのほか似合った。地位も名声も捨てて愛に走るヴィロンスキーの猛進ぶりが決して理不尽なものに見えない、見ている観客にも熱いものを感じさせたのは見事だった。

 

アンナ役の海乃美月も、姿勢のよさが由緒正しい貴族の女性の品格を立派に漂わせ、堂々たるヒロインぶりだった。「エリザベート」同様、タイトルロールなので、どう脚色しても、アンナが主人公に変わりなく、観客がアンナに感情移入することで成立する物語なので、アンナが成否の大きなカギをにぎる作品だが、セリフ回しにやや弱さを感じたものの、海乃の好演で納得のいくドラマになっていた。

 

カレーニン役は月城かなと。愛する妻のまさかの不倫で、激しく動揺するエリート高官という役どころ。原作ではアンナとはかなり年齢が離れていて、映画などでも年齢を重ねた俳優が演じることが多い。宝塚では、基本的に超二枚目が演じることが多く、これだけは原作とは大きく異なるところ。二枚目でありながら落ち着いた演技で男の凡庸さと苦悩、そしてカレーニンなりのアンナを思う心情を表現しなければいけない難役。うまく演じれば見るものの同情心を一気に鷲づかみできる役でもある。月城は、ひげを蓄えた外見から、そのすべてをクリア、後姿の哀愁さえも醸し出す立派な演技だった。

 

このドラマは、比較的役が多く、まずヴィロンスキーの婚約者でアンナの妹キティという大役がある。キティに起用されたのは研1のきよら羽龍(はりゅう)。今年の阪急電車の初詣ポスターに起用された期待の娘役だが、新人公演でもまだ役がついていない新星の大抜擢となった。楚々とした佇まい、可憐な雰囲気、芯のある台詞、どこをとってもこれが申し分のない素晴らしい出来栄えで、宝塚には無尽蔵に原石がつぎからつぎへと生まれ出てくるのだなあと感慨を深くした。音楽学校卒業時の成績は5番だったという。キティを慕う田舎貴族の青年コスチャは夢奈瑠音。一途にキティを思う純真な青年を持ち味通りにさわやかに演じ切り好ポイントをあげた。

 

ヴィロンスキーの同僚でライバルの武官セルブホスコイは英かおと。「THE LAST PARTY」の時もそうだったが、すらりとした上背に軍服がよく似合って適役好演。

 

ヴィロンスキーとアンナのカップルに微妙な影響を与えるアンナの兄スティーバとキティの姉ドリーの夫婦には光月るうと楓ゆき。専科からはヴィロンスキー伯爵夫人の五峰亜季とトヴェルスコイ公爵夫人の美穂圭子が出演。いずれもベテランらしい味わいでわきを締めた。なかでも美穂の好演が光った。

 

イタリアの場面に登場するピエロの道化はセリョージャに扮した蘭世が演じているが、こういう明るいシーンにセリョージャの幻影を登場させてアンナの不安定な心象風景を描写するミュージカル的処理も見事だった。蘭世は、セリョージャとしてセリフは少なかったが、イタリアの場面ではダンスソロもあり印象に残った。

 

 公演は24日まで。東京公演がないのが惜しまれる。

 

©宝塚歌劇支局プラス1月12日記  薮下哲司

 

◎雪組公演「20世紀号に乗って」ツアー、申込締め切りは15日!

 

新春4日から受付を開始している雪組公演「20世紀号に乗って」鑑賞ツアーの申し込み締め切り日が15日(月曜日)に迫っています。3月28、29日の一泊二日のAプラン。現地集合のBプラン、3月28日のみのCプランと3コースをご用意しています。詳細、お申し込みは☎06(6346)8800毎日新聞旅行までお問い合わせください。15日は午前10時から午後6時まで受け付けています。

 

 

朝夏まなと、一路真輝が母娘役で共演!「オン・ユア・フィート」大阪で千秋楽

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朝夏まなと、一路真輝が母娘役で共演!「オン・ユア・フィート」大阪で千秋楽

 

 元宙組トップ朝夏まなとと一路真輝が母娘役で共演、昨年暮れの東京公演を好評裏に終え、1月17日から始まった、ミュージカル「オン・ユア・フィート」大阪公演が、20日、シアタードラマシティで千秋楽を迎えた。

 

 「オン・ユア・フィート」は「コンガ」などのヒットで日本でも知られるキューバ出身の歌手グロリア・エステファンの波乱万丈の半生を描いたミュージカル。彼女の人生自体は決して明るいだけのものではないが、 音楽はテンポの速いリズミカルなラテンロックの世界なので、会場はノリノリ、連日ペンライトが揺れる熱気あふれるステージが展開された。

 

 「マイ・フェア・レディ」のイライザに次いで退団後二作目となった元宙組トップの朝夏は、黒のレザーのパンツルックで、髪を振り乱して歌い踊る姿は、元男役らしい大きな動きでなんともかっこよく、こう言ってはファンに叱られるかもしれないが男役時代よりずっと魅力的だ。このあとも「天使にラブソングを」など次々に仕事が決まるのもうなずける快調なスタートダッシュだ。

 

 一方、グロリアの歌手としての成功を決して良くは思わない母親役を演じた一路は、黒塗りでいきなりエプロン姿で登場、ずっとこのままだとどうしようと思ったが、回想シーンで鮮やかに変身、圧倒的な歌唱シーンで魅了。退団したての朝夏を盛りたてながら、自らの見せ場もきっちりと見せた。いまの一路しかできない素敵な役どころを熱演。舞台に厚みを持たせた。

 

 祖母役の久野綾希子の弾けた存在も大きかった。グロリアのパートナー、エミリオは渡辺大輔だったが、歌は迫力があったがセリフがやや硬い印象だった。

 

2日目の18日には劇場近くの新阪急ホテルで「一路真輝トークサロン」が開催され、一路とは雪組時代に寮が同室で仲が良かった元娘役トップ、神奈美帆と懐かしいトークを繰り広げた。「ベルサイユのばら」のアンドレ・メドレーで登場した一路は、神奈の絶妙の誘導で、下級生時代の懐かしい曲をアカペラで次々に披露、最後は、在団当時二人が同じ役で共演した「風と共に去りぬ」のスカーレット1、2の掛け合いを一路がスマホのピアノアプリの演奏で披露するという稀有なデュエットもあって、ファンは大喜びだった。

 

トークサロンの後には、なんと私がアフタートークを開催。本人のトークの後にトークなど聞いたことがないので、最初はお断りしたのだが、成り行きで決行することに。一路がいかに宝塚で偉大で特別なスターだったかということを音楽学校時代のエピソードなどをまじえて紹介、退団後の1998年、私も同行したニューヨークのカーネギーホールでのコンサートでの観客の反応のすばらしさなど、知られざる逸話もお話しして、今後の活躍にさらに期待するという締めくくった。ファンのみなさんにはおおいに喜んでいただけたようでホッとした次第。

 

この新阪急ホテルのトークサロン、大変好評だったので、今後も何人かのタカラジェンヌOGが出演して引き続き開催される模様。決定次第またお知らせしたい。私のアフタートークはもうないと思うのでご安心を。

 

©宝塚歌劇支局プラス1月19日 薮下哲司記

 

 

極美慎、難役を熱演!星組公演「霧深きエルベのほとり」新人公演

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  新人公演プログラムより

 

 

極美慎、難役を熱演!星組公演「霧深きエルベのほとり」新人公演

 

菊田一夫が宝塚歌劇のために書き下ろした56年前の旧作の再演、星組公演、Once upon a time in Takarazuka「霧深きエルベのほとり」(上田久美子潤色、演出)新人公演(谷貴矢担当)が、22日、宝塚大劇場で行われ、「ベルリン、わが愛」以来二度目の主演となった極美慎が主役のカール、昨年後半から急激に脚光を浴びている娘役ホープ、水乃ゆりのマルギットというフレッシュなコンビの熱演で、昭和の宝塚クラシックが鮮やかに現代に甦った。

 

ドイツの港町ハンブルクを舞台に、船乗りのカールが、自由を求めて家出した貴族の令嬢との出会いと別れをドラマチックに描いた切ないラブストーリーで、本公演は紅ゆずるが、一見、荒くれでちゃらんぽらんに見えながら、実はピュアな心根の持ち主という、彼女の個性にうってつけの役柄に巡り合って、まるで紅のために書かれたような好演を見せている。

 

新人公演のカールを演じた極美は、典型的な貴公子タイプの端正な二枚目なので、男くさいこの役はなかなかの難物。オープニングに銀橋で歌う「鴎の歌」からがちがちで、荒っぽいセリフも似合わないことおびただしく、セリフが身体に馴染んでいない感覚。この先どうなることかと不安になったが、後半、ようやく落ち着きを取り戻し、舞台姿にも余裕がみえ、セリフが自分のものになり、ラストの告白シーンでは、満員の客席を涙の洪水で満たした。前半は課題としても、この役をクリアできた経験は、極美にとっては何事も代えがたいものになったはずだ。次回の挑戦に期待しよう。

 

相手役の水乃ゆりは、本公演でもカールの妹ベティ役に抜擢されて好演しているが、このマルギットはなかなかの出来栄えだった。貴族の令嬢という宝塚の娘役の王道ともいうべき役どころを、凛とした佇まいと、優雅な動き、芯のある台詞で見事に表現。最近の娘役では夢咲ねねをほうふつとさせる大物スターの資質を感じさせた。何より舞台姿に品が感じられるのがいい。課題は歌だが、素質はあるのであとは精進あるのみ。いつの日か大輪の花を咲かせてほしい。

 

フロリアンは、今回、カールとほぼ同格といっていいくらいに書き込まれているが、これは藤里美保が演じた初演オリジナルに戻したのだという。本公演は礼真琴が丁寧に演じているが、新人公演の天華えまも素晴らしかった。すでに新人公演で3度主演経験があり、大劇場の舞台における自分の居場所が分かっているという強みもあって、役を完全に自分のものにしていた。マルギットへの熱い思い、カールへの気遣い、さらにはシュザンヌに対する切ない思い、こんな理解のある男性は実際にはいないだろうが、天華の誠実な演技が、それを体現できていた。

 

ほかに男役では船乗り仲間のリーダー的存在のトビアス(七海ひろき)に扮した天飛華音が、本公演の少年ヨーニー役とは180度変身した色っぽい男役を演じて、芝居心のあるところをうかがわせた。マルギットの父親役を演じたのは遥斗勇帆。実力派らしい貫録で見事に舞台を締めていた。

 

娘役ではカールの元恋人アンゼリカ(音波みのり)に扮した星蘭ひとみの美貌がひときわ輝いた。フロリアンを慕うマルギットの妹シュザンヌ(有沙瞳)の桜庭舞は、雰囲気はよくつかんでいたが台詞が弱い。有沙は、英真なおきが演じたベロニカに回ったが、さすが演技派の名に恥じぬ存在感で見せた。有沙は祭りの場面でカール似の男にも扮して笑いをとっていた。

 

役が少ないので、新人公演も数人しか見せ場がなく、若手には試練の公演ではあるが、その分アンサンブルが重要で、星組若手メンバーのまとまりを感じさせた公演でもあった。

 

©宝塚歌劇支局プラス1月23日記 薮下哲司

 

 

宙組公演「オーシャンズ11」特別鑑賞会、25日から受付開始!

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   ©宝塚歌劇団

 

宙組公演「オーシャンズ11」特別鑑賞会、25日から受付開始!

 

宙組トップスター、真風涼帆が、星組時代新人公演で主演した一本立ての大作にトップとして再び挑む話題のミュージカル「オーシャンズ11」(小池修一郎脚本、演出)は、4月19日から宝塚大劇場で上演されますが、毎日新聞大阪開発では「第8回薮下哲司さんと宝塚歌劇を楽しむ」という恒例の特別鑑賞会を企画、5月16日(木曜日)の3時の回で実施することになりました。

 

当日13時半に宝塚大劇場チケットカウンター前に集合、エスプリホールで特製松花堂弁当の昼食をとってもらったあと、私が「オーシャンズ11」のみどころを簡単に解説、3時の回をS席(一階)で観劇というコースです。参加費は消費税込みで一人13500円。お申し込みは先着順で100人限定となります。

 

「オーシャンズ11」は、ラスベガスのカジノホテルを舞台に、11人の男たちがホテル王を出し抜き金庫破りに挑む様子を描いたジョージ・クルーニーはじめオールスターキャストの同名アメリカ映画の世界初のミュージカル版。2011年に柚希礼音を中心とした星組で初演、2013年には蘭寿とむを中心とした花組で再演され、いずれも大好評を博した痛快かつロマンティックなエンターテインメント大作です。今回の一番の話題は2011年星組公演の新人公演で主人公のダニーを演じた真風涼帆と相棒ラスティーを演じた芹香斗亜が、本公演で同役に再挑戦することでしょう。ちなみに芹香は2013年の花組再演にも出演、新人公演でダニーを演じたという縁の深い演目でもあります。ヒロインのテスは星風まどか。ホテル王ベネディクトには桜木みなとが扮して新境地を見せてくれるのも楽しみです。

 

チケットの一般発売は3月16日ですが、松岡恵さんはじめ105期生初舞台お披露目公演でもあり、早くも前人気は上々、発売と同時に完売必至の公演です。この機会にお誘いあわせのうえお早めに申し込んで頂くことをおすすめします。

 

お問い合わせ、お申し込みは毎日新聞大阪開発☎06(6346)8784(平日10時から18時)まで。1月25日(金)午前10時から受付を開始します。

明日海りお、稀代のプレイボーイに!花組公演「CASANOVA」開幕

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  ©宝塚歌劇団

 

 

明日海りお、稀代のプレイボーイに!花組公演「CASANOVA」開幕

 

星組トップスター、紅ゆずるの10月退団が発表され、105周年トップの一角がついに崩れることになったが、花組トップスターの明日海りおは就任5年目にしてまだまだ充実一途、稀代のプレイボーイに挑戦、相手役の仙名彩世のサヨナラ公演となった豪華絢爛一本立て大作、祝祭喜歌劇「CASANOVA」(生田大和作、演出)が8日、宝塚大劇場で開幕した。

 

「CASANOVA」は、18世紀イタリア、年に一度のカーニバルに沸くヴェネツィアを舞台に、風紀紊乱の罪で投獄されながら、まんまと脱獄に成功した稀代のプレイボーイ、カサノバの新たな愛と冒険を描くスペクタクル・ミュージカル。「春の雪」で非凡な才能を発揮した生田氏が、明日海のために「シェークスピア」以来、久々にオリジナルを書き下ろし、音楽を「1789」や「太陽王」「アーサー王伝説」のドーヴ・アチア氏に依頼、全曲書き下ろしの新曲で挑んだ意欲作だ。

 

序幕は柚香光扮する審問官コンデュルメルと元愛人のゾルチ夫人(花野じゅりあ)がこれから始まるカサノバの異端審問に向かうところから。舞台が明るくなるとそこは水の都ヴェネツィア。多くの市民が見守るなか明日海扮するカサノバが登場。ブロンドのヘアにゴージャスなシルバーのコスチュームが明るい照明に映えて、まさに見惚れるほどの美しさ。ヴェネツィア中の女性が「カサノバ…」とため息をついて見守る中、異端審問が始まるというオープニング。

 

小池修一郎氏が紫苑ゆうのサヨナラ公演のために書き下ろした星組公演「カサノバ・夢のかたみ」(1994年)は、カサノバがこの異端審問でヴェネツィアを追放され、数年後に帰国して裁判で申し開きをするという展開だったため、今回の公演はその前日談ということになる。明日海カサノバは、有罪の判決を受け、鉛屋根の牢獄に幽閉されるが、同室となった神父のバルビ(水美舞斗)をそそのかしてまんまと脱獄に成功、折からのカーニバルの喧騒にまぎれて逃亡をはかるが、たまたま逃げ込んだ馬車で総督の娘ベアトリーチェ(仙名彩世)と運命の出会いをする。ベアトリーチェは修道院での勉学を終え、自由な世界を求めてヴェネツィアにやってきたのだが、現実はそうはいかず、やっとの思いで屋敷を抜け出したときだった。飛び込んできたカサノバにそうとは知らず、噂のカサノバについて痛烈な批判をする。そんなベアトリーチェにこれまでの女性とは違った思いを抱いたカサノバは…という展開。

 

一本立てのオリジナルなので、とにかく衣装や装置が豪華で立派。音楽のほかにも装置は二村周作、衣装は有村淳、映像は奥秀太郎、振付にはDAZZLEの長谷川達也を招へい、指揮が塩田明弘という、日本演劇界の第一人者が勢ぞろいしたことでも力に入れようがわかろうというもの。好調宝塚の総力を結集したといわんばかりの贅沢さに、ストーリーなどどうでもよくなるぐらいの幸福感にひたれる。

 

特にスモーキーレッドというのか渋い赤の使い方がおしゃれだった。ただ、いくら舞台面が豪華で素晴らしくても、内容が面白くなければ……。残念ながらこの作品、終わってみれば美しいものを見たという満足感はあっても感動が残らない、ちょっとそんな感じになってしまった。カサノバを題材にした作品にこれまで面白い作品がなかっただけに、今回も、カサノバを題材にした作品を上演すると聞いたとき、ちょっと不安になったのだが、案の定、予感が的中した感じ。

 

というのは、稀代のプレイボーイ、カサノバの半生を描くとき、その女たらしの人生を肯定するには本当は善人だったのだと理由を仕立て上げないといけなくなり、結局、理想の女性にめぐりあってめでたしめでたしという結末になるのがこれまでの常道。そうでない場合は因果応報で非業の死を遂げるという悲劇パターンとなる。今回は典型的な前者のパターン。まあ宝塚だからそうなるだろうなとは思うが、カサノバを貶めようとする審問官のコンデュルメルとその妻(鳳月杏)の冷え切った関係を対照的に登場させて、カサノバの純粋性を際立たせたり、モーツアルトを登場させて「ドン・ジョバンニ」のメイキングとだぶらせたりした苦心は買えるが、しょせんは飾りでしかない。

 

とはいえ明日海カサノバは本当に美しくて、なめらかな歌唱はさらに円熟味を増し、オープニングだけで一気に3曲のソロがあり、その存在だけで十分。いつまでも見ていたい聞いていたい感覚に陥る。1017人の女性を相手にしたというにはあまりにもワルっぽさがなくさわやかすぎてカサノバというにはちょっと物足りないところが弱点といえば弱点か。

 

ベアトリーチェを演じた仙名は、灰色の地味な衣装を脱ぎ捨てて真っ赤な衣装に変身する登場シーンの艶やかさに息をのみ、サヨナラ公演とあってソロもふんだんにあって、持ち前の透き通った歌声を存分に聴かせてくれた。なかでもカサノバと分かった時に唄う曲が「アナと雪の女王」の「ありのままで」にそっくりの曲想で聴かせた。役柄の比重も明日海とほぼ対等、名実ともに明日海の相手役として有終の美を飾ったといえよう。

 

コンデュルメルの柚香は、カサノバに対する敵役といった役どころで、人間的にも印象のよくない役だが、そのさっそうとしたマントさばきはじめ、その存在の華やかさはさらに磨きがかかった感じ。台詞がこもりがちで明晰さをかくところがあるのは改善の余地あり。

 

その妻役を演じたのは、月組に里帰りが決まった鳳月杏。妖艶なメイクにゴージャスなドレス。高音のソロも違和感なく艶やかな女役を楽しげに演じていた。ただ、このコンデュルメル夫妻のドラマは、書き込まれているわりには、ストーリーに有機的に絡んでこないのが

辛い。

 

 明日海カサノバとずっと行動を共にするバルビ神父の水美は、ひげぼうぼうの汚れ役から徐々に綺麗になっていくおいしい役。期待度がうかがえる起用にきっちりと応えた。瀬戸かずやはベアトリーチェの婚約者コンスタンティーノ。「ロミオとジュリエット」で言えばパリスのような振られ役だが、瀬戸らしい細かい役作りが印象的。

 

 若手男役陣は、ヴェネツィアのカジノに登場する。モーツアルトの綺城ひか理、錬金術師バルサモの飛龍つかさ、メディニの聖乃あすかといったところが中心人物。大きな役ではないが、きちんと見せ場もあって、コスチュームがそれぞれ凝っていてそれぞれが弾んでいた。このあたりの使い方のうまさはさすがだ。

 

娘役は、ベアトリーチェの付き人ダニエラに扮した桜咲彩花が印象的だったが、男装の麗人アンリエットに扮した城妃美伶も魅力的。次期娘役トップの華優希は、綺城が扮したモーツァルトの妻役だった。

 

一本立てなのでフィナーレに短いショーがつくが、これがストーリーと絡んでいて、ヴェネツィアのカーニバルということになっている。ここでも明日海の赤の衣装が目に焼き付く。一転、明日海、仙名のデュエットの衣装はカメオを思わせるブルーと白。全体的にカラーコーディネートが洗練されていて、衣装デザインも斬新。中世イタリアの雰囲気を濃厚にたたえた最新コレクションのファッションショーを見ているような感覚だった。

 

ドーヴ・アチア氏のオリジナル音楽は「1789」に似た曲想があったりもするがラップを使ったり、メロディアスな主題歌など既存の宝塚の音楽とはやはり一味違う、初日には本人も客席で観劇、終演後には笑顔で大きな拍手を送っていた。舞台の最先端をリードしているのだという宝塚の自信があふれでた豪華な舞台だった。

 

©宝塚歌劇支局プラス2月11日記 薮下哲司


芹香斗亜が自由を求めた貴族青年を熱演!ミュージカル「群盗」開幕

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  ©宝塚歌劇団

 

芹香斗亜が自由を求めた貴族青年を熱演!ミュージカル「群盗」開幕

 

宙組の人気スター、芹香斗亜主演によるミュージカル「群盗」(小柳奈穂子脚本、演出)が、9日、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで開幕した。18世紀ドイツの作家シラーによる処女戯曲の舞台化で、自由を求めて出奔、理想を追って群盗となり、悲劇的な運命をたどる青年をドラマチックに描いたミュージカル。ここのところコミカルな漫画や映画の舞台化が続いていた小柳氏にとっては久々のシリアスな作品への挑戦で、骨太で見ごたえのある作品に仕上げている。

 

舞台は、芹香を中心とした出演者全員が、これから始まる舞台の中身を予感させる歌とダンスで勢ぞろいするプロローグの後、鷹翔千空扮するライプチヒの元役人で現在はパリに住んでいるヴァールハイトの回想から始まる。

 

厳格な父(凛城きら)と病弱な母、そして従姉妹アマーリア(陽雪アリス)とともに穏やかな少年時代を送っていたカール(碧咲伊織)のもとに異母弟フランツ(真白悠希)がやってくる。3人は兄弟同様に仲良く育つが、やがて成長したカール(芹香)が父親の反対を押し切ってライプチヒの大学に進学を決意したころから、アマーリア(天彩峰里)やフランツ(瑠風輝)そして家族の間に微妙な亀裂が走り、それが取り返しのつかない方向に広がっていく。カールは、ライプチヒで自由を謳歌、新しい思想に心酔するあまり学生運動に参加して父親から勘当されてしまい、正義のための犯罪者、群盗として生きることを宣言する。

 

第一部は、カールが自由を求めて出奔、群盗のリーダーになるまで。第二部は、お尋ね者になった自分の行動が父を死に追いやったことを知ったカールが、実家に帰郷、叔父ヘルマン(希峰かなた)とフランツの陰謀を暴く……という展開。生きるうえでの自由とは何かという重いテーマとともに、断絶した親子の和解という普遍的な家族の問題もからめて後半は悲劇的に大きく盛り上がる。

 

芹香は、何不自由なく育った貴族の青年が、新しい世界で新しい思想に心酔していくというピュアだが直情的な役どころをストレートに演じていて魅力的。ドラマシティ公演は花組時代のヒーローものの「MY HERO」以来だが、悲劇的な役どころのこちらの方がずっと魅力的だった。

 

芹香を中心にした群盗メンバーは、秋奈るい、穂稀(ほまれ)せり、愛海(まなみ)ひかる、雪輝(せつき)れんや、なつ颯都(はやと)そして紅一点の華妃まいあの6人。なんともフレッシュなメンバーだが、いずれも地に足の着いた好演。

ヒロインのアマーリア役を演じた天彩は、その愛くるしい容貌に加えて、しっかりとした芝居心があり、芹香との絡みはそう多くないのだが、カールが帰郷してからの後半のラブシーンは緊張感がみなぎっていいシーンとなった。

 

このドラマの一番のカギになるのがフランツの瑠風。カールに対する嫉妬からさまざまな陰謀を企てるが、少年時代に両親を亡くしたことから家族の愛に恵まれなかったという伏線がある悲しい役どころ。難役を好演している。

 

進行役の鷹翔はそのクリアな口跡が暗くなりがちな舞台にさわやかな風を吹き込むことに力が貸した。ほかにコジンスキー役の風色日向や少年グリムを好演した娘役の湖々さくらなど若手にもワンポイントで印象的な役があり、宙組若手の層の厚さをうかがわせた。

 

18世紀後半、新旧の価値観が混とんとした時代を背景に、生きるうえでの自由とは何かを突き付けたシラーのテーマは2019年の今でも決して古びていなかった。

 

©宝塚歌劇支局プラス2月13日記 薮下哲司

 

安奈淳、奇跡の復活!「ベルサイユのばら45」大阪公演開幕

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安奈淳、奇跡の復活!「ベルサイユのばら45」大阪公演開幕

 

宝塚歌劇史上最大のヒット作、宝塚グランドロマン「ベルサイユのばら」(植田紳爾脚本、演出)が初演以来、今年で45周年を迎えるのを記念して歴代出演者が出演する「ベルサイユのばら45」~45年の軌跡、そして未来へ~(植田紳爾監修、谷正純構成、演出)が、1月27日、東京国際フォーラムホールCで開幕、続いて2月16日から梅田芸術劇場メインホールで大阪公演が始まった。18日には初風諄、榛名由梨、安奈淳の初演メンバーが勢ぞろい。初演からの熱心なオールドファンから100周年の再演で初めて知った若いファンまで幅広いファンが駆け付けて大いに盛り上がった。

 

「ベルサイユのばら」は1974年8月29日、月組で初演され、現在まで再演に再演を重ね通算2118回、観客515万人を動員する宝塚を代表するヒット作となっている。かくいう私も初演を三日目の8月31日に観劇、以来、ほぼすべての公演を見続けている。当時、鴨川清作演出の斬新でポップなショーに宝塚の新しい魅力を見出していたこちらにとって、「ベルばら」はあまりにも少女趣味で、初演当時は全く受け付けなかったが、15年後、「平成のベルばら」のころから仕事でかかわることになり、その魅力というか宝塚での価値が少しずつわかり始めてきたような気がしている。その後、大学で教鞭をとるようになり「ベルばら」を教材にするにあたって、時代が生んだという必然性も感じ取り、100周年の時、龍真咲と明日海りおのコンビで見た月組の「ベルばら」になんとも居心地の良さを感じたのも事実だった。

 

さて、今回の「ベルばら45」は、1974年の初演、1989年の再演そして2000年と2005年の再演メンバーが中心で、それぞれの時代の各組出演者がシャッフルして懐かしいコンビや珍しいコンビが次々に登場、何年も前に退団したはずのトップスターが、オスカルやアンドレの衣装をつけると、あっという間にタイムスリップ、現役時代そのままのかっこよさと美しさで舞台を再現、時間を超越した宝塚マジックが充満した。

 

18日の公演は「1974年初演A」というバージョンで、まず初代アントワネットの初風が変わらぬ美声で「青きドナウの岸辺に」を披露、続いて大病から奇跡的に回復した安奈が「愛の巡礼」そして初代オスカルの榛名が「白ばらのひと」を歌って始まった。歌い終わった3人が初演当時の思い出をトーク。全国ツアーでの笑い話やNHK「紅白歌合戦」の応援出演したときのエピソードでは白組の応援だったか紅組の応援だったかでもめるなど終始和やかなムード。安奈は「3回の危篤状態から戻ってきました。この際、ベルばら100まで出演したい」と笑顔で話して満場大拍手だった。

続いて杜けあきが「心のひとオスカル」紫苑ゆうが「結ばれぬ愛」日向薫が「ばらのスーベニール」とそれぞれ自分のオリジナル楽曲を艶やかに披露。本編の名場面ダイジェストに繋いだ。

 

ダイジェストは、朝海ひかるのオスカル、湖月わたるのアンドレ、緒月遠麻のアランという配役で、オスカルの衛兵隊閲兵シーンから。続いて現役代表の華形ひかるがベルナールに扮した「愛する者のために」があってオスカルが稔幸、アンドレも水夏希に代わって橋のシーンからバスティーユと続けて一幕を終わった。いまや女優として大活躍の朝海だが、そのりりしいオスカル姿は現役時代そのまま。湖月、水のアンドレも退団後10年とは思えないりりしさだった。

 

第二部は白羽ゆりのアントワネットによる「愛の怯え」から始まり、和央ようかのフェルゼンによる「駆けろペガサスの如く」から二人の牢獄シーンへ。メルシー伯爵は、初演から出演、最多出演回数を誇る専科の汝鳥伶が滋味豊かに演じた。

 

断頭台のあとは豪華なフィナーレ。緒月とアンサンブルによる「ばらベルサイユ」から始まって、和央が「宝塚心の故郷」を踊り、壮一帆が「愛に帰れ」を熱唱、朝海と水の雪組コンビで「小雨降る径」湖月を中心とした「薔薇のタンゴ」そして極めつけ稔と朝海で「ボレロ」で締めくくった。パレードのエトワールは初風という豪華版だった。

 

懐かしのトーク、歌、そして本編のダイジェストとバラエティーに富んだ構成で楽しめる2時間半だったが、なんといってOG出演者たちの見事ななりきりぶり。いますぐにでも大劇場で現役として通用する見事な男役演技はさすがで、年輪を経て当時より歌も芝居もうまくなっているから始末が悪い。「ベルばら」が、宝塚が、OGたちの体に染みこんでいる、そんな宝塚愛が横溢したステージだった。公演は24日まであり、ほかに汀夏子、麻実れい、一路真輝、麻路さき、彩輝なお、貴城けいらが出演する。

 

一方、杜けあき、姿月あさと、貴城けい、北翔海莉、白羽ゆりの5人の宝塚OGが出演する毎日希望奨学金チャリティーコンサート「忘れない~天国の大切なあの人へ~」が3月12日午後6時から東京・渋谷のbunkamuraオーチャードホルで開催される。

 

東日本大震災で保護者を亡くした震災遺児の学業継続を応援する「毎日希望奨学金」のチャリティーコンサートで、東日本大震災で亡くなられた方に手紙を送る「漂流ポスト」に寄せられた愛のメッセージを宝塚OGが歌と朗読で綴る感動のコンサートで、5人は「ベルサイユのばら」から「愛あればこそ」をはじめ「テンダー・グリーン」から「心の翼」そして「すみれの花咲くころ」などを歌い継ぐ。ほかにも貴城が「Joyfull!」や北翔が「Amourそれは」白羽が「カラマーゾフの兄弟」の主題歌などを披露する。入場料は8000円、チケットぴあなどで好評発売中。お問い合わせは毎日新聞社事業本部☎03(3212)0804(平日10時〜18時)まで。

 

©宝塚歌劇支局プラス2月18日  薮下哲司記

松岡恵さん、未来にはばたく!105期生文化祭開催

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  photo by スポニチ

 

松岡恵さん、未来にはばたく!105期生文化祭開催

 

宝塚音楽学校の第105期生文化祭が22日、宝塚バウホールで始まった。105期生は40人。音楽学校で学んだ二年間の成果を披露した。

 

文化祭は、三部構成で、一部が日舞、声楽(クラシック、ポピュラー)二部が演劇、三部がダンス(モダン、バレエ、タップなど)で休憩を含めて約2時間45分。それぞれ成績順にソロや役がつくという分かりやすい発表会だ。昨年までは2日間だったが今年から3日間の開催となった。

 

1042人が受験、倍率26・1倍という難関を突破して入学した105期生のなかで話題の人は創始者小林一三翁の玄孫にあたり、元プロテニスプレイヤーでスポーツキャスターの松岡修造氏の長女、松岡恵さん。入学時からマスコミに大きく取り上げられ、その舞台姿の初披露とあって、前日の舞台稽古から報道陣が殺到する騒ぎに。オールドファンにとっては男役として将来を嘱望されながら早くに退団した千波静の孫ということで否が応でも期待が高まっている。

 

かつてないほどの注目の文化祭となったわけだが、舞台自体はこれまでどおりに進行。日舞「清く正しく美しく」は黒の紋付に緑の袴という正装に扇子を持って格調の高い群舞が繰り広げられた。ソロは田坂芽久さん。透き通った美しい声を披露した。

 

予科生40人のコーラスのあと声楽は、クラシックボーカルが上川莉央さんの「ラ・ボエーム」とハーバート真唯さんの「ヴィリアの歌」。どちらも緊張気味で本来の歌声ではないような気がしたが、なかでは彫りの深い目鼻立ちが印象的な真唯さんに余裕が感じられた。

 

ポピュラーは宝塚のヒット曲メドレー。船戸万友香さんと数見百音さんによる「タカラジェンヌに栄光あれ」から。彩輝直を思わせる愛くるしい顔立ちの船戸さんに注目。土山はる奈さんら3人の娘役による「ムーンライトロマンス」倉田美優さんをメーンにした「小さな花がひらいた」と続き「エクスカリバー」からの「未来へ」で期待の松岡さんがソロで登場。

大きな手の動きとなめらかな余裕の歌声で全員をリード、早くもスターオーラが充満した男役としてはやや上背がないのが意外だった。あと「風と共に去りぬ」から「さよならは夕映えの中で」を貫録たっぷりに歌った山川愛未さんも要注目だった。

 

 第二部の演劇は「黒い風の物語」(正塚晴彦作、演出)で、ナポレオンに敗れフランスに支配されたスペインでそれに抵抗する人々の物語を劇中劇としてみせる凝った構成の舞台。

絵麻緒ゆうが主演した2000年の雪組公演「追憶のバルセロナ」をベースにした作品だ。B組を観劇したが、主演のフランシスコを演じた新井紀香さんは宙組の愛海ひかるの妹。すっきりとした二枚目で芝居心のある丁寧な演技が好ましかった。ほかに成瀬こうきが演じた親友のアントニオが葦澤牧さん。白羽ゆりが扮した婚約者のセシリアが村上香乃さん。紺野まひるが演じた相手役のロマの娘イサベルは土井山吹さんという配役。土井さんが雰囲気をよくにじませていた。

 

 イサベルの兄ロベルト(朝海ひかる)を演じた早崎実奈さんと未沙のえるが演じたイアーゴーの船戸さんがちょっと崩した男役演技が早くも身についていてどちらも魅力的だった。語り手のアドナシオンを演じた大澤サラさんの落ち着いた長セリフにも注目、舞台全体を立派に引き締めていた。

 

A組はフランシスコを松岡さん、イサベルを真唯さん、ロベルトを山川さんが演じた。A組についてはまた後日、記す。

 

第三部のダンスは尚すみれ振付による全員によるスタイリッシュなジャズダンスからオープニング。「メリーウィドウ」からのバレエ、ジャズダンス、タップダンス、バレエ「韃靼人の踊り」、ヒップホップ風のジャズダンス、全員によるフィナーレと続いた。タップソロの葦沢さんと「韃靼人-」のメーンを踊った岡本結衣さん、新井さんの優雅でダイナミックな動きが印象的だった。

 

松岡さん人気にわく105期生だが、全体的にレベルが高く、全員、歌も芝居もダンスもそつなくこなしている。発表会とあって全員が緊張気味、一生懸命なところが見ていて初々しくもありまだまだ未知数なところも多い。しかし磨けば光る原石がごろごろ。10年後にはこのなかからトップスターが何人か生まれていることだろう。

 

©宝塚歌劇支局プラス2月22日記 薮下哲司

 

美しすぎるプレイボーイ、帆純まひろが好演!祝祭喜歌劇「CASANOVA」新人公演

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美しすぎるプレイボーイ、帆純まひろが好演!祝祭喜歌劇「CASANOVA」新人公演

 

期待のホープ男役、帆純まひろの初主演となった花組公演、祝祭喜歌劇「CASANOVA」(生田大和作、演出)新人公演(指田珠子担当)が2月26日、宝塚大劇場で行われた。

 

18世紀のヴェネチア、風紀紊乱の罪で収監されていた稀代のプレイボーイ、ジャコモ・カサノヴァが、カーニバルの喧騒のなか脱獄、偶然出会った総督の娘ベアトリーチェと運命的な恋に落ちたことから街中を巻き込む大騒動になるという恋あり陰謀ありの一大エンターテインメント。トップとして円熟期にある明日海りおならではのカリスマ性を十二分に発揮したカサノヴァが魅力的なステージだ。

 

新人公演は一本立て大作の常として大幅なカットバージョンでの上演となるが、今回も例にもれずオープニングがばっさりカットされカサノヴァが鉛の塔の牢獄に収監されるところからスタート。二部冒頭の仮面舞踏会も縮小され、フィナーレなしで約1時間50分。

カサノヴァ流の自由をベアトリーチェが自分のものにしていく過程がうまく浮き上がっていてテーマが鮮明になった分、本編より見ごたえがあった。ただ「仮面のロマネスク」を思わせるコンデュルメル夫妻のくだりやベアトリーチェの婚約者コンスタンティーノとゾルチ夫人など脇の部分がメインを邪魔しているようにみえてもう一工夫ほしい気がした。

 

 また細かいことだが、カーニバルでベアトリーチェの馬車にカサノヴァが偶然乗り合わせたことから二人が出会うのだが、ヴェネチア中心部は陸地から離れた水の都で馬車では郊外には出られないはず。かつては陸続きだったのだろうか、出会いの場だけにちょっと疑問に思った。

 

 さてカサノヴァを演じた帆純だが、いきなり監獄の場面から始まるので登場シーンが地味なのが残念だったが、すっきりとした美貌が、明るいブロンドのかつらとシルバーのコスチュームにはえて納得のカサノヴァ像。初主演とは思えない落ち着いた立ち居振る舞いでプレイボーイらしい色っぽさも十分。水夏希を思わせる身のこなしと鼻にかかった甘い歌声は瀬奈じゅんを連想させた。「蘭陵王」で瀬戸かずや扮する高偉の寵愛を受ける美少年役が印象的だったが、新人公演では二番手の役を演じることが多く、綺麗だが線の細い印象があったのだが、センターに立つと見違えるばかりに変身した。歌や演技はまだまだ改善の余地はあるものの今後の活躍に期待したい。

 

 ベアトリーチェは仙名彩世退団後のトップ娘役に決まっている華優希が演じた。上り調子の勢いが身体全体から匂いたつような華やかさがあって、自由を求めるベアトリーチェそのものという感じ。いまの彼女にぴったりの役柄と、豪華なコスチュームが演技をさらに引き立てていた。歌唱の充実ぶりも頼もしかった。

 

 「ポーの一族」「MESSIAH」で新人公演主演した聖乃あすかは、柚香光が演じたカサノヴァの宿敵、審問官のコンデュルメルに回ったが、これまた舞台に立っているだけでオーラが匂いたつ素晴らしい存在感。凝った衣装に美貌が映えた。権力への屈折した野望がわかりにくいので、ただの悪役になってしまっているのは残念だったが、何を演じてもこの美しさは強力な武器だ。

 

夏美ようが演じた謎の伯爵、ミケーレはバウ公演などで存在をアピールしている一之瀬航季が演じた。若い青年役が似合う一之瀬だが、こういう貫録たっぷりの伯爵役も華やかににこなし、特に台詞まわしの確かさはなかなかで、実力の一端を見せつけた感じ。今後のさらなる活躍が楽しみだ。

 

水美舞斗が演じたバルビ神父は愛乃一真(まの・かずま)。カサノヴァに心酔して旅を共にする役で、カサノヴァとのあうんの呼吸が大事な難しい役、一回だけの新人公演ではその辺はさすがにけいこ不足が目立った。雰囲気はよく出しているので次回に期待したい。

 

鳳月杏が妖しく好演しているコンデュルメル夫人は、まさかの舞空瞳が演じた。さすがに本役の鳳月ほどの妖しさはないものの思いのほか大人っぽく、少女っぽさだけではない振り幅の広さをみせつけた。この公演のあと星組への組替えが決まっており、新天地での活躍が楽しみだ。

 

下級生ではカジノの場面でモーツァルト(綺城ひか理)を演じた希波(きなみ)らいとのはちきれんばかりのはつらつとした演技が光っていた。「花より男子」でも大役に抜擢されていて今後に要注目だ。

 

ほかにもフォスカリーニ役の高峰淳、コンスタンティーノ役の泉まいら、ダニエラ役の音くり寿とそれぞれ自分の役どころをきっちりと演じ切り、全体的に破綻のないレベルの高い新人公演だった。ドーヴ・アチアの主題歌も何度も聴いているうちに耳に馴染み、忘れられない曲になりそうだ。

 

©宝塚歌劇支局プラス2月27日 薮下哲司記

 

 

雪組特別公演「20世紀号に乗って」鑑賞ツアー残席情報

 

雪組の望海風斗、真彩希帆主演によるコメディミュージカル、東急シアターオーブ特別公演「20世紀号に乗って」(原田諒脚本、演出)を3月28、29日の一泊二日で2回観劇する大阪発のツアーは現在3席のみ残席があります。一般前売りチケットはすでに完売しています。鑑賞を希望されながらチケットを入手できなかった方はぜひツアーにご参加ください。現地集合プランでの参加も受け付けます。料金などお問い合わせは毎日新聞旅行(大阪)☎06(6346)8800(受付時間平日10時から18時)まで。

 

 

井上芳雄が「君住む街角」を献歌。「小藤田千栄子さんを偲ぶ会」開催

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井上芳雄が「君住む街角」を献歌。「小藤田千栄子さんを偲ぶ会」開催

 

 

ミュージカル評論の草分け的存在の演劇評論家、小藤田千栄子さんが昨年9月になくなって約半年、ゆかりの人々による偲ぶ会が10日、東京都内のホテルでしめやかに営まれた。東宝株式会社取締役演劇担当、池田篤郎氏はじめ錚々たるメンバーが発起人に名を連ね、世話人は演出家の小池修一郎氏と演劇評論家の萩尾瞳さん。映画、演劇界の重鎮たち約130人が集結、小藤田さんの人徳がうかがえるゴージャスな偲ぶ会だった。

 

会場中央に設えられた献花台には凛とした表情の小藤田さんの写真、日本のミュージカル草創期の全作品を網羅した労作「ミュージカル・コレクション」と1998年、ニューヨークで日本のミュージカルブームについての現況をレポートされた時に「CHICAGO」や「キャバレー」「蜘蛛女のキス」の作詞作曲チームであるフレッド・エブとジョン・カンダー、名女優チタ・リベラ、そしていまや伝説のタカラジェンヌ、大浦みずきとともに写った貴重な写真が飾られ、小藤田さんのお別れ会にふさわしいお膳立て。

 

発起人に名を連ねた池田氏、岩波ホール支配人の岩波律子氏、宝塚歌劇団、小川友次理事長、元キネマ旬報編集長の白井佳男氏、そして劇団四季の吉田智誉樹社長が次々に献辞を述べ、宝塚歌劇団の演出家、植田紳爾氏が献杯のあいさつというこれ以上ない豪華メンバーが勢ぞろい。

 

白井氏の「彼女と私が出会うきっかけを作ってくれたのはジジ・ジャンメール(フォーリー・ベルジュールの大スターで映画女優)の脚でした」と小藤田さんがキネマ旬報に入社した際の知られざるエピソードを披露。「小藤田さんの分もまだまだ私が頑張っていきたい」と元気なところを披露するなど和気あいあいの雰囲気でスタート。

 

井上芳雄が、日本のミュージカルの夜明けとなり、小藤田さんがその初演の興奮を語り伝えた「マイ・フェア・レディ」から「君住む街角」を「小藤田さんをイライザと思って歌います」と心を込めて披露。あまりの素晴らしさに、小藤田さんがお聴きになったらどんなに喜ばれるかと思うと思わず感涙にむせんでしまうほどだった。続いて、初風諄、安寿ミラ、湖月わたるのタカラジェンヌOG、そして市村正親がそれぞれの思い出を披露。安寿が「どんな公演もすべてご覧になって頂き、終わりには必ず楽屋まで来てくださって、いつも「よかったよ」と力強い握手をしてくださいました。その声を聴くために今まで頑張って気がします、もう聴けないと思うと何を励みにしていいのかわからない」とあいさつ、新たな涙を誘っていた。

 

小池氏は「学生時代にミュージカルの面白さを教えて頂き、宝塚に入ってからもずっと後を押してくださった大恩人」と小藤田さんの存在があったからこそ、今の自分があると挨拶。小藤田さんが、日本のミュージカル界の母的存在であったことが改めて浮き彫りになった。

 

私的には、昨年一月「ポーの一族」が宝塚大劇場で上演された時「いつご覧になりますか」とメールを送ったら「大劇場の予定はありません。小池さん、ご活躍ですね」という返信を頂いたのが最後になってしまった、まさかそんなことになるとは思わなかったその無念さを改めて思い出した偲ぶ会だった。

 

©宝塚歌劇支局プラス3月11日 薮下哲司記

 

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