元宙組、優希しおんが「KI-NA」として退団後初舞台
元月組の名ダンサー、貴千碧が中心となって歌、ダンスなど一芸に秀でた実力派タカラジェンヌOG7人によるガラコンサート「Born anew」が20日、尼崎のあましんアルカイックホール・オクトで開かれ、元宙組で昨年12月末に退団した優希しおんが「KI-NA」と改名して退団後初舞台を踏んだ。
「Born anew」は、昨年、貴千の呼びかけでダンススタジオや講師など各分野で活躍しているタカラジェンヌOGとその生徒たちが出演して開催したガラコンサートが大変好評で、今回はそれにこたえてOGたちだけが出演、それぞれ歌いたい歌、踊りたいダンスを自ら構成して作り上げた手作りコンサート。
貴千が91期生ということで麗百惠(元月組)此花いの莉(元雪組)鳳真由(元花組)同期生3人と元宙組の星吹彩翔(93期)元月組の楓ゆき(95期)そして元宙組のKI-NA(優希しおん・100期)の計7人が集合した。
それぞれが在団中に組や期を超えて仲がよかったり、退団後に親しくなったり、入団前からの知り合いだったりときっかけはさまざまだが、全員、歌とダンスが大好きで、今も研さんを積んで、後進を指導したり自らも舞台に立っている実力派メンバーたちばかり。KI-NAは入団前から貴千と知り合いだったことから貴千が声がけして出演が決まったのだとか。退団公演がほぼ全公演中止になり、退団セレモニーもなく退団、今回が約10か月ぶりの舞台で、溌剌としたダンスを披露した。
装置も飾りもないシンプルなステージに貴千らダンサー6人が勢ぞろい、ジャズナンバーの定番「I Don’t Mean A Thing」からにぎやかにオープニング。ポーズを決めるとシンガー、此花が「ロミオの青い空」を歌いながら客席から登場。美声に酔いしれた後は鳳、麗、貴千、星吹、KI-NAでスタイリッシュな「リベルタンゴ」。続いてシンガー楓が「負けないで」を軽快に歌う。こんな感じでダンスシーンと歌を交互にはさみながら展開していく。トップスターがメーンのコンサートだとスター中心の選曲になり、アンサンブルメンバーはコーラスぐらいしか出番はないが、こういうガラコンサートだと実力派の歌とダンスがバランスよく配分され、聞きごたえ見ごたえ十分。
休憩後の二部のミュージカルメドレーが圧巻。「ロミオとジュリエット」の「エメ」をフランス語の原曲をバックミュージックに麗の愛、KI-NAの死でダンスナンバーとして再現、ダイナミックな貴千の振付にこたえた二人のダンスが素晴らしく、目を見張った。
続けて此花がキャピュレット夫人、星吹のモンタギュー夫人、ダンサー貴千の死というメンバーでの「憎しみ」そして楓の乳母による「あの子はあなたを愛している」をメドレー。「ファントム」も鳳ファントムと楓クリスティーヌの「HOME」鳳ファントム、星吹キャリエールによる「お前は私のもの」と、このメンバーならではの選曲でそれぞれの名場面が一気に浮かび上がった。
「スカーレット・ピンパーネル」から「あなたを見つめると」の此花、「ME AND MY GIRL」からの「顎で受けなさい」の楓と娘役ソロ定番のあとは「オーシャンズ11」から「JUMP!」で盛り上がり、ラストは「テンダーグリーン」の名曲「心の翼」でしっとりとフィナーレ。歌詞がこのメンバーたちへの応援歌にも聞こえ、なんとも感動的だった。
カーテンコールでは退団セレモニーがなかった「KI-NA」にほかのメンバー6人から白薔薇の退団花ならぬ出発花が送られ、感涙にむせぶひとコマもあって、客席からも大きな拍手が送られた。
メンバーの中心的存在、貴千は「在団中から志が似ていて、退団後もみんな頑張っているメンバーです。これからも応援よろしくお願いします」と挨拶。会場費や衣装代などクラウドファンディングで募集しながら公演を実現、100人を超えるサポートメンバーが集まったとか。シンプルだが内容充実、舞台、客席が一体化、誰もが主役の素敵なコンサートだった。