星組の天華えまが歌にダンスに実力全開「Stella Voice」開幕
星組の人気スター、天華えまを筆頭に若手17人によるワークショップ「Stella Voice」(中村一徳構成、演出)が、1日、宝塚バウホールで開幕した。天華をメインに出演者全員がソロの歌を披露するというかつてのエンカレッジコンサートにダンスを加えたショー形式のコンサート。礼真琴を中心とした「ル・ルージュ・エ・ル・ノワール」専科から凪七瑠海を迎えての「バレンシアの熱い花」全国ツアーと三つに分かれた星組公演の一つだが、大舞台でソロを歌う機会が少ない若手メンバーにとっては貴重なステージになったとともに天華の実力を改めて再確認できた公演となった。
メインキャストの天華は、3度にわたって新人公演に主演、端正な容姿と三拍子そろった実力で次代の星組を担う存在だが、月組から星組に組替えになった暁千星と同期の98期生。まさに今が正念場の段階。そういう意味では星組に天華ありという存在感を発揮するには格好のステージとなった。
プロローグは天華をセンターに100期から107期までの16人が勢ぞろい、主題歌
「Stella Voice」を華やかに歌い継いでスタート。歌い終わって全員が一列にラインアップ、天華が、出演者全員思い入れのある曲をソロで歌うというコンサートの趣旨を説明、天華の呼びかけで一人一人が自己紹介。
最初のソロ歌コーナーは天華が「ME AND MY GIRL」から「街灯によりかかって」をセリフ入りでしっかり決めてスタート。詩花すず(107期)が「顎に受けなさい」で受け継ぎ、続いて世奈未蘭(107期)が「未来へ」(エクスカリバー)、碧羽陽(107期)がディズニーの「ポカ・ホンタス」から「カラー・オブ・ザ・ウインド」でしっとりと締めくくった。
舞台はこのあと98期の天華から107期まで初舞台公演のレビューの主題歌を各期の同期生がメドレーで披露という珍しい趣向や星組メドレーなどで進行。
ここで各自が選んだソロ歌の曲目を歌う順に紹介しておこう。
瞳きらり(105期)「蒼白色(アイス・ブルー)の瞳」(銀河英雄伝説)
彩紋(さいもん)ねお(同)「ロザリオの祈り」(落陽のパレルモ)
大希楓(同)「ひとかけらの勇気」(スカーレット・ピンパーネル)
羽玲(はれい)有華(103期)「僕は怖い」(ロミオとジュリエット)
星咲希(同)「心はいつも」(パパラギ)
稀惺かずと(105期)「オルフェンスの涙」(ミーシャ)
藍羽ひより(107期)「ダンスはやめられない」(モーツァルト!)
世晴(せはる)あさ(104期)「Compass of Your Heart」(ディズニー)
碧音斗和(104期)「バラ色の人生(ムケーシュの歌)」(オームシャンティオーム)
紘希柚葉(103期)「ひかりふる路」(同)
鳳真斗愛(102期)「僕の願い」(ノートルダムの鐘)
紅咲梨乃(102期)「過去への旅」(アナスタシア)
二條華(100期)「あなたを見つめると」(スカーレット・ピンパーネル)
それぞれの思い入れのある一曲ということで熱のこもった歌唱。甲乙つけがたいが碧羽の「カラー・オブ・ザ・ウインド」羽玲が歌った「僕は怖い」藍羽の「ダンスはやめられない」が特に耳に残った。それにしても選曲に宝塚の曲が少ないのが時代を感じさせる。稀惺のように男役として首をかしげる大胆な選曲もあった。
とはいえ、天華のつやのある滑らかな歌声はさすがに男役として完成の域に達していて、このメンバーでは格が違うといった感じ。第一声を聞いただけで安心して聴いていられた。タイプは全く異なるのだが在団時の一路真輝に通じる品格と安定感があった。
天華は「街灯-」のほかに場面としては娘役をしたがえての「レディ・ドリーマー」星組メドレーでの「今もお前が」(星の牧場)「愛するには短すぎる」(同)一幕フィナーレの「闇から光へ」(ラッキースター!)二幕の「エストレリータ」(同)そして峰さを理が歌って宝塚でも愛唱歌になったシャンソンの名曲「愛の旅立ち」さらにフィナーレでは「星を継ぐ者」と主題歌「Stella Voice」を加えて9曲を歌い、美声で魅了した。
天華は二幕冒頭にはコンテンポラリーダンス「Eros」(森優貴振付)でダイナミックなダンスも披露、ダンサーとしてのパワーも見せつけるなど、実力全開のステージ。今後の星組での活躍を大いに期待したい。一方、稀惺と藍羽を星組メドレーのトリ「ブーケ・ド・ダムール」でカップリングするなど新たなスターコンビの芽生えも予感させた。
©宝塚歌劇支局プラス4月2日記 薮下哲司