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Channel: 薮下哲司の宝塚歌劇支局プラス
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星組新トップコンビ礼真琴×舞空瞳プレお披露目「ロックオペラモーツァルト」開幕

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星組新トップコンビ礼真琴×舞空瞳プレお披露目「ロックオペラモーツァルト」開幕

紅ゆずるが退団してまだ一か月余りというのに早くも次期トップコンビ、礼真琴、舞空瞳のプレお披露目公演、フレンチ・ミュージカル「ロックオペラモーツァルト」(石田昌也潤色、演出)が20日、大阪・梅田芸術劇場メインホールで開幕した。オリジナルクリエイターのドーヴ・アチア氏らフランスのスタッフも見守る中、礼は、歌にダンスに若さ弾ける大活躍で本領発揮、終演後のスタンディングオベーションでは客席から「おめでとう!」の声も飛ぶなど、新トップ誕生の祝福ムードにあふれた初日となった。

「ロックオペラ―」は、2009年にパリで初演、2013年には中川晃教、山本耕史の役替わりダブル主演によって日本でも上演されたロック・ミュージカルの宝塚版。ドーヴ・アチア氏による宝塚での作品としては「太陽王」「1789」「アーサー王伝説」に次いで4作目。「カサノヴァ」でも音楽を担当したことからすっかりおなじみとなった。

楽聖モーツァルトを題材にした舞台といえば「アマデウス」やミュージカル「モーツァルト!」が有名だが、これはその両方をミックスしたような内容。天才作曲家として認められながら、自由な創作活動を望んでザルツブルクを出奔したことからコロレド大司教の怒りを買い、思うように才能を発揮できず、マンハイムからパリ、ウィーンと転々とするなかで父レオポルド、宮廷作曲家サリエリ、そしてウェーバー姉妹との愛憎を絡めながら旧弊な時代のなかで自由奔放に生きたモーツァルトの半生を描いている。ロックコンサートのようなオリジナルを石田氏が宝塚風のミュージカルに仕立て直し、見ごたえそして聴きごたえのあるミュージカルに生まれ変わらせた。

一幕が、自由を求めて旅に出たモーツァルトの失恋、両親の死と若き日の挫折を描き、第二幕は「後宮からの逃走」「フィガロの結婚」「魔笛」と傑作を生みだす過程でコンスタンツェとの結婚、サリエリとの確執などの後半生を描いている。モーツァルト以外に男役の大きな役が父親とサリエリしかなく、それぞれが専科の悠真倫と凪七瑠海が演じていることから男役陣は役不足感が否めないが、その分娘役にはウェーバー4姉妹、モーツァルトの妹のナンネールなど大きな役がふんだんにあって星組娘役の人材豊富なところをみせつけた公演ともなった。

星組トップとしてプレお披露目となった礼は、歌、ダンスの実力をいかんなく発揮、若さのエネルギーをそのままぶつけられる格好の役柄ともあいまって、これ以上ない適役好演。ほぼ出ずっぱりで舞台狭しと暴れまくるさまは圧巻。うますぎて歌詞が曲に乗りすぎて、時々流れるのが難といえば難、もう少し丁寧に歌うとさらに聞きやすくなると思うが、ロックなのでないものねだりかも。

相手役の舞空瞳のコンスタンツェも、歌にダンスに本領発揮。二幕になってからが本格的な登場となるが、一幕ラストの幻想シーンのバレエも印象的。礼とのコンビはふたりとももぎたてのレモンのようにフレッシュだ。

もう一人のヒロインといっていいのがコンスタンツェの姉アロイジアに扮した小桜ほのか。モーツァルトが最初に恋する女性だ。本公演ではこれだけの大役は見たことがなかったように思うが起用に応えて好演。コンスタンツェに扮した舞空と姉妹でのビッグナンバーがあり、長年宝塚をみているが、娘役同士のデュエットというのはあまり見たことがなく、これがなかなか素敵なナンバーだった。二人のデュエットは二幕にもある。

厳格な父親レオポルドの悠真倫、モーツァルトの才能に嫉妬してことごとく活動を邪魔する宮廷音楽家サリエリの凪七瑠海という二人の専科生は、いずれも役どころを大きく膨らませて演じさすがの存在感を示した。凪七はプロローグに登場するものの、本格的登場は2幕から。しかし、その複雑な心理を的確に表現、ネタバレになるので詳しくは書けないがラストは思わずほろりとさせる絶妙の演技だった。

若手男役の極美慎はサリエリの弟子でモーツァルトの音楽に心酔するジュースマイヤ。この公演の後、宙組に組替えになる紫藤りゅうは日和見主義の国立劇場支配人のローゼンベルク伯爵。舞台の進行役的なところもある極美が立ち姿の美しさで際立ち、紫藤は二枚目を捨てたコミカルな演技で場をさらっていた。「出世をするということはわいろを渡す方からもらう方になること」というセリフはなにやら今の政界を現しているようだった。

あとモーツァルトの妹ナンネールに扮した桜庭舞の二幕で歌うソロが素晴らしく、歌姫役の夢妃杏瑠とともに聴かせた。また黒衣の訪問人など後見人役の桃堂純がこの舞台全体の不気味なムードを巧みにかもしだしていた。あと忘れてはいけないのがコロスとして各場面に登場する漣レイラらの卓抜したダンスがこの舞台の大きなパワーになっていたことも付け加えたい。

フィナーレは、モーツァルトの名曲をロックアレンジ。凪七のダンスシーンから礼にバトンタッチ、紫藤、極美の場面もありながら礼と男役ダンサー陣の迫力ある群舞、ついで舞空のデュエットダンスと続いた。カーテンコールは主題歌「道を開けろ僕が通る」の大合唱、最後までパワフルな礼だった。

初日は、客席総立ちのスタンディングオベーション、なかなか終わらない拍手に礼が「さゆみさん!やりました!」と先輩の紅に報告する一幕もあって、なんともさわやかな初日風景だった。

©宝塚歌劇支局プラス11月20日記 薮下哲司



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