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宝塚105周年幕開け!各トップコンビが初日挨拶 星組公演「霧深きエルべのほとり」開幕

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©宝塚歌劇団

 

ブログをお読みくださっている皆様、明けましておめでとうございます。

本年も宝塚歌劇支局プラスをどうぞご贔屓に!

新年のブログは、105周年で轟悠を始め各組トップコンビが挨拶をした星組大劇場公演からスタートです。

 

 

宝塚105周年幕開け!轟悠はじめ各組トップコンビが初日挨拶

星組公演「霧深きエルべのほとり」開幕

 

宝塚105周年アニバーサリーイヤーが元日、宝塚大劇場で華やかにスタートした。

11時半からは月組・美弥るりか、宙組・芹香斗亜、花組・柚香光の各組2番手スターが大劇場フロアの大階段で鏡開き、一人ひとり新年の抱負を語った。各組人気スターの登場とあって早朝からファンが長蛇の列を作り、入場制限をするほどの熱気。終了後には参加者全員にたる酒が振る舞われた。

 

 大劇場も立ち見も完売の熱気のなか午後1時、緞帳が上がると専科の轟悠を中心に花組・明日海りお、仙名彩世、月組・珠城りょう、美園さくら、宙組・真風涼帆、星風まどかの7人が紋付袴姿の正装で勢ぞろい。轟が「宝塚歌劇は今年105周年を迎えました。さらなる精進をしますのでみなさま今後とも宝塚の応援、よろしくお願いいたします」とあいさつ、明日海らも今年の抱負を語り、最後は「おお宝塚」を合唱しながら銀橋を渡り、満員の客席から大きな拍手が沸き起こった。

 

 いったん緞帳が下りたあと、紅ゆずるの開幕アナウンスがあってから年頭を飾るワンスアポン・ア・タイム・イン・タカラヅカ「霧深きエルベのほとり」(菊田一夫作、上田久美子潤色、演出)が開幕。客電が消えると客席は暗転、銀橋中央にスポットが当たって紅が登場、懐かしい「鴎の歌」を歌いあげる。これまでの「エルベ」は船の舳先に乗って歌うところから開幕したのでのっけから意外な展開。歌い終わると舞台に大階段が登場、ビール祭りの華やかな群舞がプロローグとなる。正月らしいオープニングに心が弾む。

 

 「霧深き―」は、「ジャワの踊り子」や「ダル・レークの恋」など数多くの作品を宝塚に提供している劇作家、菊田一夫氏が宝塚のために書き下ろした最後の作品。当時のトップスター、内重(うちのえ)のぼるの当たり役となり3度再演、その後も1973年に古城都、1983年に順みつきの主演で再演されている。主題歌(入江薫作曲)のよさと、男性的で一種、豪快な雰囲気が当時の宝塚にはない新鮮さだったことが受けた理由ではないかと思うが、私は、当時からあまり好きな演目ではなかった。船乗りと上流階級の娘の恋という身分違いの恋だが、作者がどちらに芯を置いて書いているのかがあいまいで、身分違いの恋はご法度という当時の価値観に沿った展開がなんとも古めかしく洋物新派悲劇に思えたからだ。21世紀の物語の紡ぎ手と定評のある上田久美子氏がこの作品のどこに魅力を感じてリニューアルしたのか楽しみに見た。

 

 オープニング以降はほぼ従来の「エルベ」と同じ。船乗りのカール(紅)がハンブルクの酒場で家出娘のマルギット(綺咲愛理)と出会って恋に落ち、結婚の約束をするが、マルギットの許嫁のフロリアン(礼真琴)や父親(一樹千尋)が連れ戻しにやってきて……という展開。

 

 カールの船乗り仲間トビアス(七海ひろき)が今回のためのオリジナルの役で、カールの妹ベティ(水乃ゆり)と絡む。船員仲間のリーダー役で七海の退団公演のために花を添えたといえようか。相手役の水乃も破格の抜擢で期待値がうかがえた。

 

 回り舞台やセリなどをフルに活用して、展開はかなりスピーディーではあるが、基本的なストーリーは同じ。昭和クラシックの古さはぬぐえない。やはりここは紅のカール役の出来栄えにすべてがかかる。

 

 その紅だが、いいかげんで不良っぽくふるまっていながら実は過去に深い心の傷があり、心優しい繊細さを持ち合わせているカールという青年役を、入江メロディーの主題歌の力にも助けられてこれ以上ない好演、近来のはまり役となった。ここはもう紅のカールを存分に楽しむしかないだろう。

 

 マルギットの綺咲は、何不自由なく育ち、愛してくれる男性もいながら、父親への不信感から自由を求めて家出する。家出の動機がやや納得がいかないものの、世間知らずの令嬢という雰囲気はよくでていて、彼女もこれまででは一番ではないか。

 

 礼のフロリアンは、マルギットと幼馴染で心底、彼女を愛している上流階級の青年。分別もあり、マルギットとカールの関係にも理解を示すことができるスマートさも持ち合わせている。なかなか難しい役どころだが、礼が裏表のないまっすぐな役作りで臨んでいて、好感が持てた。

 

 もう一人の大きな役は、マルギットの父親役ヨゼフの一樹千尋。ベテランの貫禄でドラマを引き締めた。ヴェロニカ役の英真なおきも、後半の見せ場で泣かせる。

 

 カールをひそかに愛しているマルギットの妹シュザンヌ(有沙瞳)やカールの昔の恋人アンゼリカ(音羽みのり)といった役がワンポイントで印象的。男役はカールの船員仲間ぐらいであまり印象に残らないなか少年ヨーニー役の天飛華音(あまと・かのん)が得な役で儲け役だった。初演以来、名バイプレイヤーが演じてきた湖畔ホテルの支配人は美稀千種が演じ、彼女ならではのいい味を見せた。

 

 後半のクライマックスでは客席のあちこちから涙をすする音が聞こえたが、終わってみれば若手男役陣の見せ場があまりないことの不満もあって賛否両論の感想がとびかった。ここは宝塚ならではの紅と綺咲の甘く悲しいラブストーリーに酔えるかどうかだろう。

 

 スーパー・レビュー「ESTRELLASエストレージャス〜星たち〜」(中村暁作、演出)は、スペイン語で星を意味するエストレーラの複数形であるエストレージャスをタイトルに星組のスターたちの輝きをテーマにしたショー。オープニングは舞台中央のセリのうえにゴールドの衣装に輝く紅が登場。スパニッシュ風ロックの躍動感あふれるダンスシーンから、JポップやKポップ、さらにはスタンダードナンバーとおなじみの曲をバックに、次々に大群舞が展開する華やかなレビュー。中詰めでは客席おりがあって2階客席でも歌い踊るサービスぶり。

 

紅と綺咲を中心に礼がサポートする星組のショーパターンが定着、この公演で退団する七海の銀橋ソロもふんだんにあって、七海ファンはレビューでやっと笑顔を取り戻した。

 

©宝塚歌劇支局プラス1月2日 薮下哲司記

 

 

 

 

 


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